武田邦彦

Profile

1943年6月3日、東京都生まれ。1966年、東京大学教養学部基礎科学科卒業後、旭化成工業(株)に入社、1986年、同社ウラン濃縮研究所長、1993年、芝浦工業大学工学部教授を経て、2002年より名古屋大学大学院教授、2007年より現職(専門分野:資源材料工学)。多摩美術大学非常勤講師。文部科学省中央教育審議会、科学技術審議会、内閣府原子力安全委員会の専門委員。環境に関する著作が高等学校現代国語の教科書に収録されている。最近では、「ホンマでっか!?TV」をはじめ、テレビ番組にも出演。これまでの「環境問題の常識」に警鐘を鳴らす。

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――本を読むのも1冊10分くらいで読まれるんですか。


武田邦彦氏: こういう風に言うべきでしょうね。私の頭脳は10の13乗ビットらしいんですけれど、それが「10の16乗ビットくらいまでは本を読みました」とかそう言い方だったら現代的な言い方になるのかな、と思います。情報量のことをおっしゃっているのだとすれば。

ある図書館の情報量というのは10の16乗ビットあるらしいんだけど、そのうちのどのくらいの割合を自分が読んだという風に自分で認識しているかという問題ですよね。
そういう意味じゃ、3桁くらいかな。図書館にある5分の1から6分の1くらいは読んだかなという感じですかね。

その本を読むのに10分というのは、何でそうなるかというと、結局本っていうのは何の目的で読むかということですよ。本というものが存在するのは、そこで書いた著者の何を読むかということですね。例えばノウハウ本だったら字しか読まない、すごく高級な本だと行間だけを読むとか、概念を読むとかありますね。

だから本を読むということは何のために読んでいるかというと、傾向として、自分で事実を組み立てていかない人は、本を読むというということが大切なんです。もしくは、人の思想を自分の概念を作る上での構築の材料としない、つまり「まるまる受け取る」という人は本は大切ですけれども、本というのは自分で概念を作るための1つの方法であるから、断片的な情報は大切で、総合的な情報はもちろんあってもいいんだけれど、それほど重要じゃないわけですよね。

本の問題点というのは、みんなが考えなければ考えないほど売れるんですよ、一般的に。僕の本もそうですよ、考え方から全部書いてあるわけですよ。考えというのもは本当は読者が作ればいいんだけれど、できないもんだから懇切丁寧に一から十まで書いてあります。

もちろん貴重な本というのはあるんですよ。僕だって切り刻みたくない本はあることはあるんですけれど、それが何冊あるのかということになると、生涯で10冊とか20冊くらいあるかもしれないけど、他は情報や概念の提供物ですからね。

テレビを見ていたら、テレビは流れて消えていっちゃうじゃないですか。ならば、テレビは見る意味がないのかというと、テレビで放送されたことが自分の頭の中に入って、ある自分の考えとか構築するからテレビを観る。でも、そうすると、保存するというのは意味がないことですよ。したい人はしてもいいですけれどね。

ゼロックス(コピー)だと捨てていいけれど、本だと取っておかないといけないとかね。
僕は大学で全て本は資料代として経費で買うわけですよ。資料代で買うと大学は文句を言うわけですよ。「先生、本は資料じゃない」と。買うとすぐ裁断してバラバラになっちゃうんですが、「綴じてあるのと綴じていないのとどういう差があるんですか」と聞くわけですよ。そうすると、そういうことはもちろん頭に入っていないから、「そう言われると、切っちゃうと資料になる気もしますが、本は昔から書籍として購入することになっております」「そうですか、今から50年も前くらいだと多分パソコンのない時代だからそうかもしれませんが、ずいぶん古い規則を使っていますね」と言い返してしまいます。

――読書に関しても、自分の必要な情報を取った時点で読んでいるということになりますか。


武田邦彦氏: そうですね。読んでいて、断片的に情報を取っているうちに、「この人の概念は今まで自分が会った概念ではないな」と思ったときには通して読みますね。それは全部読むことになるでしょうね。

1つの会話、例えば非常に尊敬する人と会って話をするとき、全部録音しておかないとならないかというとそうではない。じゃあなんで自分の尊敬する人と会うのか? それは自分の頭の中に自分の必要な知識なり概念なりを作るために、情報の取得の手段とするんです。
例えば自分の尊敬する偉い人から話を30分聞いたと、それが自分の人生で最もいい情報だったとしますね。それを録音しておかないでその他の本を取っておいたってしょうがないですよね。そういうことですよね。

本もそういうことですからね。その手段としては比較的まとまっているとか、それから傾向がありますよね。本当かどうかわからないけれど、インターネットのブログと本とは毎回必ず本の方が情報ベースが深いかどうかも微妙ですよ。それはその人の捉え方によりますよね。

――武田さんは書籍を裁断、スキャンとされていらっしゃいますか。


武田邦彦氏: そうそう、自分でやりますね。簡単ですから。バッと切ってピッと入れれば、2分もたったら全部ハードディスクに入っているわけですからね。あとは読むだけです。

――難しくないですか。


武田邦彦氏: 簡単ですよ(笑)。そんなのは十何年もやっていますからね。実際、僕の実働時間は1分かからないですよね。あとは機械が動いている時間はあるけど、それは関係ないですから。
僕の教授室には、昔は山みたいに本がありましたけれど、撮影する時に後ろに本を置いてくれと言われたので、しょうがないから撮影用として本があるだけ。テレビのスタジオと一緒ですよ、背景としてあるだけなんです(笑)。背景ぐらいには役立ちますけれどね。
著作権を守るため、社会的悪にならないためには、そのスキャンしたファイルを他の人に見せず、ファイルあげなければいいだけです。自分だけで楽しんで利用するには何の問題もないですからね。

――実際に読む場合、パソコンで読まれるんですか。

著書一覧『 武田邦彦

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