中谷彰宏

Profile

1959年大阪府生まれ。1984年早稲田大学文学部演劇科卒。大学在学中は映画史を専攻し、1ヶ月に100本の映画を観るという目標を掲げ、4年間で約4000本の映画を観る。博報堂でCMプランナーを務めたのち、独立。1991年(株)中谷彰宏事務所を設立。現在、執筆・講演など、幅広い分野で活躍している。ビジネス、マナー、小説、恋愛エッセイなど多ジャンルにわたり書籍を執筆。著書は900冊を超える。CDも『月刊中谷彰宏』など多数。ベストセラー『面接の達人』は、現在も毎年、改訂され、就職活動中の学生のバイブルとなっている。
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電子書籍の市場は『世界』に向かって開かれている


――読書形態はどのように変化するでしょうか?


中谷彰宏氏: 例えば、先日僕の読者で、ケニアのロゴマ君という人が中谷塾に来ました。彼に「何から僕を知ったの?」と聞いたら、「最初、中谷さんの本を読んだ」と言ったんです。最初に、僕の本を読んだ時は、ピンとこなかったそうで、次に僕のDVDをTSUTAYAで借りたら凄い面白かったらしいんです。それでもう1回本を読み直してみたら、DVDと同じで面白かったと言うんです。これは本から始まってDVDへ行って、また本へ帰ってくるという面白いケースですよね。興味深いのは、普通DVDへ行ったら行ったきり帰ってこない。DVDがあればいいとなるのに、なぜロゴマ君は本に帰ってきたのか疑問だった。聞いてみたら、そのロゴマ君が読んでいるのは電子書籍なんです。彼は全部本をiPadに入れて読んでいるそうです。

――ケニアの方も中谷さんの書籍を読まれるんですね!


中谷彰宏氏: ロゴマ君の例からもわかるように、電子書籍になると、海外の本が自由に読めるようになるんですね。これは非常に大きいことです。僕が20代の頃には、アメリカにロケで行った時に、Barnes&Noble(バーンズ&ノーブル/アメリカ最大級の書店チェーン)などの書店に行って、海外にしかない本を買ったものです。日本に洋書で入ってくるものには限りがあるので、向こうで面白い1コマ漫画というのを、買って帰っていた。それがこれから電子書籍になれば、海外の本が自由に手に入るようになりますよね。

――日本の出版社も世界へ向けて発信できますか?


中谷彰宏氏: 日本の出版社にとっても、世界のマーケットに参入できるということは大きいですね。日本語だから日本の本を読める人が少ないだろうというのは思いこみで、現にケニアのロゴマ君が、僕の本を読んでいたりするわけですから。

――電子書籍は、今後どのように変わっていくと思われますか?


中谷彰宏氏: ハリーポッターの映画で、ハリーが読んでいる『日刊予言者新聞』って、写真が動きますよね。あのムービーのようなものが電子書籍の中で動くようになるのではと考えています。今グラフやイラストで説明しているものが、動く素材として読めるようになる。そうすると、映像と本が全く分離した形ではなくなる。今、本にDVDが付いているものがありますよね。エクササイズ系では本の中に映像が入ってくるタイプのものが多いから、今DVD in Bookが、過渡期として存在する。でも電子書籍が普及したらDVDはいらない。クリックしたらその画像は動くようになる。

電子書籍のデバイスは、未来はどう変化してゆくのか


――電子書籍が、例えば今タブレットなどで閲覧できるようになっていますが、未来は形態としては紙に近づくでしょうか?


中谷彰宏氏: それはハードウエアの問題ですよね。紙でどうしても読みたいという人は、この紙一枚があればいいと思います。紙の形態感を味わいたいという人は、これをめくると、白紙だった所に文字が写るような形の技術が出てくれば済む。こういう事は、例えばフワフワなオムライスが出てきたからといって、昔の薄焼きの卵を焼いたオムライスがなくなるわけではない、好みの問題ですね。

――紙の書籍は紙の書籍という形態の中で進化する可能性もありますね。中谷さんが電子書籍に一番求めるものはなんですか?


中谷彰宏氏: 電子書籍になると現実問題として、新幹線の移動の時間持ち込んでいた大量の書籍とか、僕が美容院に行くとき持ち込んでいる13冊くらいの書籍、全てが電子化されれば、その荷物がなくなるということです。僕は新幹線の東京―大阪移動の間に、ポータブルのブルーレイプレイヤーで映画やテレビの録画を見ているんです。この時に何が面倒くさいかというと、ブルーレイのディスクの持ち歩きが通常10枚くらいで、かさばるので減らしたい。この10枚が、ハードウエアの中に入っていればいいなと思うんです。結局新幹線の中で寝ちゃって、持って行った10枚を見ないまま帰ってきたら、「ああ、これもっと少ない枚数にしておけばよかった」と思う。少ない枚数で足りなくなっちゃったら、「もっと持ってくればよかった」と思う。いつも感じるこのストレスをなくしたい。ハードウエアを小さくして欲しいという事と同時に、今度ソフトウエアであっても、究極はハードウエアがなくなるという状態というのがベストだなと。

――ハードウエアも持ち運ぶ必要なく閲覧できて、ソフトウエアも充実しているというのが理想でしょうか?


中谷彰宏氏: 要するに何も持たない状態で閲覧できるのがいい。今でもそうだけれど、今の時代はお金持ちの方がより物を持っていない。物を沢山抱え込んでいるのは豊かでない。豊かな暮らしというのは、物を持たないことが豊かな暮らし、という風に変化してきている。一昔前までは、物を持つことが豊かだという概念があって、これはもう既に通り過ぎているんです。例えば蔵書を沢山持っているとか、車を沢山持っているとか、洋服や宝石を沢山持っているということが、豊かだというのは20世紀で終わりました。これからの時代は、本であればクラウド、映画に関しても全てサーバーへアクセスできるし、資産があれば、旅行へ行っても必要なものを現地調達できる。今の時代、アメリカ軍の迷彩服だって、場所の背景に合わせて柄が変わる時代ですよ。みんなが頭の中でまだ20世紀に生きてしまっているから、ついていけないかもしれないけれど。

著書一覧『 中谷彰宏

この著者のタグ: 『クリエイター』 『漫画』 『海外』 『生き方』 『可能性』 『紙』 『ビジネス』 『テレビ』 『新聞』 『本棚』 『お金』 『絶版』 『エッセイ』 『日本語』 『クラウド』 『メリット』

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