書店は時代の変遷で変化するが、『目利き』の存在は必要不可欠
――三上さんの作中の古書店も含め、書店にどんな本があって欲しいと思いますか?
三上延氏: 時代の変遷で変わっていくのは仕方ないと思っているんですが、僕は小さい頃から町の書店に通ってきたので、できれば残ってほしいなという気持ちはあります。今後の事を考えると、書店と言う場所は、目利きの人の本のチョイスを見るという意味合いが強くなってくると思うんです。僕もネット書店はよく利用しています。特に忙しくなってしまうと家からも出る回数も減るので、何か必要なものがあるとAmazonなりネットの書店は便利なんです。
――ちなみに電子書籍のご利用はされていますか?
三上延氏: あんまりしていないですね。それっぽいものだと、凄く便利なので「青空文庫」を結構利用しています。古典を読む事が多いので。やっぱり持ち運びが非常に楽ですよね。そこらへんは電子書籍の大きな利点のひとつだろうなと思います。読むのはiPhoneが多いです。
――逆に電子書籍の反対で、紙の本の良さはどんな所にあると思いますか?
三上延氏: 落としても壊れないこと、電源要らずでメディアとしての耐久性が高いことは大きいと思います。データの場合だと、やっぱりメモリの耐久性っていうのは限度があると思うので、何年かごとに移し替えないといけない。でも紙の場合だと保存さえ間違えなければ50年とか100年は普通に保つので、そういう風な利点はあるなと思いますね。
――そう考えると紙の本は結構長持ちするという事でしょうか?
三上延氏: そうですね。電子書籍の場合だとメンテナンスが必要になってくるので、それに比べると紙のほうが利点があるかなと思います。僕は紙の本が無くなるという風には考えていない。ただ電子書籍でも非常に大きなメリットがあるので、今まで紙が担ってきた部分を電子書籍がかなり担っていくんだろうなと感じています。
ノベルゲームやページ数を気にしない小説。電子書籍の可能性は無限
――電子書籍の可能性というか、今後期待するものはありますか?
三上延氏: そうですね。個人的な意見ですが、紙と同じフォーマットにする必要は無いと思っているんです。電子書籍の場合だといろんなものが同時に詰め込めるわけで。絵にしろ、音にしろ。文章だけのメディアである必要は無いんじゃないかなと。だから紙のフォーマットとはまた別の発展の仕方があると面白いなと思うんです。自分が紙の本をずっと書いていて感じていたんですけども、なんか、紙の本だと残りのページ数が分かってしまう。だから何かこの先展開があるとか、もう1回どんでん返しがあるというのが読める。一時期ノベルゲームをやっていた時期があったんですが、紙と決定的に違うのが、残りの容量が分からないことなんですよね。だからどんでん返しがいつ来るのか分からないまま楽しめるというのが紙と電子では違うなと思っていて。電子書籍は独自の発展もありうるし、おそらくあるんじゃないかなと。意外と今後の電子書籍は、ノベルゲームの形に近づくんじゃないかなという印象もありますね。
――紙の本を電子書籍化する為、スキャニングするにあたって、どうしても技術的に裁断しないといけないのですが、それに対してどんな印象をお持ちですか?
三上延氏: 僕個人は、それは致し方が無いというか、そうせざるを得ないんじゃないかなという気がします。僕自身もスペースの関係上、これ以上本が増えれば自分で自炊するっていう事も考えなければいけない所まで来ているので、それは凄い気持ちとして分かります。ただ、著作権持っている人間としての懸念があるとすれば、実際にスキャニングした後の、裁断した本をどういう形にするのかっていう事ですね。それを売買するっていう事になると、著作権法上まずいと思います。逆に言うと、2次利用の部分がクリアになれば僕は特に問題が無いのではないかと。色々難しい所だと思うんですけども、最初から電子書籍を出してしまえばいいという事になりますね。僕は出版社の方から紙の本を出しているので、実際の書店さんの方ともお付き合いがあります。だから電子書籍については一概にこうとは言いにくい所があるんですけども、原則論としては紙の本と、いい形で共存ができるのが理想だと思っています。
ラブストーリーや時代小説、ホラーも書いてみたい
――最後にこれから取り組みたいテーマなどはありますか?
三上延氏: まずは続刊を出さないといけないんです(笑)。色々とやってみたい事はあります。ラブストーリーも書いてみたいですし、もう1回ライトノベルを書きたいっていう気持ちもあります。今すぐではないんですけども、どこかで時代小説も書いてみたいですね。明治維新以前を舞台にした話をどこかで書ければいいなと。また、僕がデビューしたのが電撃文庫のホラー小説なのですが、元々そっちのジャンルをずっと書いてきたので、ホラー小説も機会があればまた書いてみたいです。
――最後に読者にメッセージをお願いいたします。
三上延氏: とにかく面白いと言ってもらえるものを書こうと頑張っておりますので、良かったら手に取っていただけるとうれしいです。
(聞き手:沖中幸太郎)
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