三好康之

Profile

1965年生まれ。関西学院大学 経済学部卒業。IT企業でSEおよび営業職を経験し、21世紀の始まりともに独立して株式会社エムズネットを設立。情報処理技術者試験において全区分制覇(累計25回合格、うち高度系20回合格)していることで有名。現在はコンサルタントとして活躍する一方、数々のIT資格対策書を執筆し人気を博している。著書に『情報処理教科書プロジェクトマネージャ』(翔泳社)などがある。2013年には、敬愛すべき乃木坂46にちなんで、企業の枠を超えたITのプロ集団「ITのプロ46」(itpro46.com)を立ち上げて主宰を務めている。

Book Information

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新時代の「ゼネラリスト」として働き方を追求していく



株式会社エムズネットの代表取締役である三好康之さんは、企業のIT導入のためのコンサルティングや、システム開発に関する研修事業のほか、高いシェアを誇る情報処理技術者試験の教材や、システムエンジニアの働き方を提言する本を執筆しています。三好さんに起業のきっかけ、教材の制作秘話、提唱する「マルチタスク」な働き方などについて伺いました。

会社に所属しながら「副業」で起業した


――エムズネットの事業を含め、三好さんのお仕事の内容をお聞かせください。


三好康之氏: 僕は、今やっている仕事をきれいに3分の1ずつ分けています。1つ目が執筆、2つ目が一般企業向けにコンピューターをどうやって導入するかというITコンサルタント、3つ目がIT企業への研修事業です。リスク分散させることが最大の狙いなのですが、これにより、IT企業の最新情報や、お客様(コンピュータを利用する企業)のニーズを把握できる…、つまり、情報の鮮度を保つことができるという効果も狙っているんですね。。

――もともとはIT企業でシステムエンジニアをされていたそうですが、起業のきっかけはどのようなことだったのでしょうか?


三好康之氏: 僕の経歴はちょっとややこしいんですけど、前の会社にいる時に創業しているんです。平成元年にIT企業にプログラマーとして入って、SEになって、その後、営業に志願していかせてもらったり、今話題になっているセキュリティーの部署を立ち上げたりしたのですが、営業をやっている時に、コンサルティングの仕事が増えてきたんです。それで「コンサルタントとして独立したいから会社を辞めたい」といったら、当時の上司から「ちょっと待ってほしい。会社に残る条件はあるか」と聞かれたので、「給料を倍にするか、副業を認めるか」という条件を出したんです。資格を取ったり、仕事もそこそこできていたので、わがままに育っていたんですね(笑)。それで、いろいろ社内で話し合ってもらって、最終的に「副業を認める」ということになったんです。

――社員としての仕事と、個人としての仕事の両立はできましたか?


三好康之氏: 土日にコンサルタントとして営業し出すと、お客さんが結構ついてくれました。ただ、月曜日から金曜日までの会社のお客さんに対して、土日コンサルティングに行ったりもしていたんですね。もちろん合法の範囲内ですよ。競業避止義務など、法律についてもきちんと調べて問題ない範囲でやっていましたし、上司にも逐一報告していたので。ただ、そういう事実を知らない営業の先輩から「どうなっているんだ」という話が出てきたこともあって、2、3年で回らなくなってきて、「さすがに潮時かな」と思うようになりました。それが、2001年です。ちょうどイチローが大リーグに行くというような話があって、そのニュースを聞いて、「僕も辞めよう」と思ったのを覚えています。

――先ほど3分の1ずつ業務内容を分散してお仕事をされているとおっしゃいましたが、それぞれどのようなスタイルで行っていますか?


三好康之氏: 執筆は家で、コンサルは大阪でしますね。研修は東京が主です。時間的な割合で言うと、平均的には、週7日のうち、自宅で作業が4日、大阪で外出1日、東京出張が2日でしょうか。東京は好きなのでもっと行きたいのですが、ホテルで泊まるのが嫌いなんです。お化けが怖いから(笑)。でも週に1-2回が良いですよね東京は。この頻度だったら、買い出しみたいな気分で東京に来れますし(笑)。あと、結構、自宅にいる時間が多いのですが、実は、未だに嫁さんと娘は、僕が何の仕事をやっているのか知らないんですよ。嫁さんはうすうす感づいているかもしれませんが、家では仕事の話は一切しないですからね。向こうも仕事の話はわからないし、面白くないからしません。収入は定期的に家に入れているので、それが滞らない限り一切干渉はないんです。僕に興味がないのかも(笑)。



ただね、興味深いのは、娘たちがほんといい子に育っているんですよ。今、中学2年生と小学5年生の姉妹がいるんですが、長女が小学校6年ぐらいからかな。ある日突然、「私もがんばる」って言い出して、お金を使わなくなったんですね。どうやら、僕が常に家にいるから、友達に「お父さん仕事してないんじゃないかな」っていわれたみたいで(笑)。さらに「お父さんに聞いたらあかんで、かわいそうだから」って口止めまでされていたそうです(笑)。それからは、欲しいものとか、わがままもいわなくなりましたよ。僕も調子に乗って、「お父さん何をしているの?」って聞かれると「どっかにええ仕事ないかな?」とか冗談をいっていたら、素直に育ちましたね(笑)。確かに不安になりますよね。学校行く時僕が見送って、帰ってきたら僕がいつも玄関まで「おかえり~」って迎えに行くんですから。

――今回のインタビューを娘さんが読んだらびっくりしますね。


三好康之氏: 最近ちょっとインターネットを使うようになって、僕の名前を検索したみたいで、「パパって社長やんね?」って聞かれるようになりました(笑)。不安を払いたいんでしょうね。まぁ、あまり安心させてもあれなんで、「まあまあ一応形だけはな」とかお茶を濁しています。他には「パパ、本を出しているの?」とかも聞いてきたりするようになりましたけど、「まあまあ、あれはどうにでもなるからな」っていって、そっちもごまかしています(笑)。

試験の教材は受からなければ意味がない


――そのような自由な働き方を含めて、三好さんの発想はどのように培われたのでしょうか。学生のころはどのような感じでしたか?


三好康之氏: 学生のころは、ちゃらんぽらんでしたね。今楽しければそれでいいっていう、よくある子供の考えです。ただペーパーテストとか勉強だけはできたんですよ。記憶力とか、要領が良かったんだと思います。高校の時も授業はほとんど聞いていません。授業を聞いてたら時間がもったいないって思っていたので。授業さぼって遊んでいるか、授業中に遊んでいるか、寝ていましたね。点数を取るだけだったら、試験前に、先生がどういうところを教えたらいいかということが書いてある「教科書ガイド」を読めば、試験に出すところがわかるので、それを数回読んだら点数は取れていました。その方が、自分の時間が有効に使えるんです。でも、それが今テキストを書く時のノウハウにもなっているんですから人生わからないもんですね。

――情報処理技術者の教材ですね。受験される方のシェアも高いと伺いましたが、どのくらいなのでしょうか?


三好康之氏: テキストはだいたい受験する人の7割ぐらいが使ってくれているようですね。評判がクチコミで広がっています。きちんと勉強した人には、内容が明らかに違うとわかってもらえるようです。嬉しいですね。

――教材を作る際に心がけていることはどういうことでしょうか?


三好康之氏: 試験の教材に何が求められているかというと、勉強のしやすさ、どうすれば受かるかというところだけなんです。受からなかったら何を書いていようが意味がないんですね。普通、本を出す際は、言葉とか表現に主眼が置かれていると思うんですが、受験参考書っていうのは、そこはちょっと違うんですね。具体的には、とにもかくにも、試験の分析に力を入れていますね。というのも、受験参考書のページ数は少ない方がいいんですよ。勉強時間は少ない方がいいのでね。しかし、その一方で網羅性も必要になる。だから、掲載する項目の取捨選択をするための分析が必要なんですね。…たとえばそうですね、情報処理技術者試験を作っているIPAという独立行政法人の財務諸表なんかにも目を通していますよ。そして、「今年は予算的に新規問題が作れないな」とかまで考えたりしています。要するに、効率よく勉強してほしいという願いを1冊に詰め込んでいるんです。

編集者と戦うことで読者を守る


――表現力に主眼を置かないということですが、見やすさ、わかりやすさも評価されている理由なのではないでしょうか。


三好康之氏: 表現もすごくこだわっています。小説や読み物と違って、うまく言おうとかきれいな表現をしようとかは考えていません。必要ありませんから。それよりも、できるだけ効率よく記憶に残すための表現を考えています。ですから文字のフォントの大きさとかレイアウトには、すごくうるさいんです。編集者とはいつもそれでもめるんですが。

――編集者とは、かなり激しくやりあうのですか?


三好康之氏: そうですね。読者の利益を守るのが著者の仕事の一つだと思っていますから。読者代表として。出版不況っていうのもあって、どうしても出版社は、出版社の利益を大きくすることだけを考えがちですからね。言われるままにしておいたら、読者にとってのメリットが損なわれるんで。そのあたりは、漫画や小説と実務本の違いだと思いますよ。例えば、「シリーズものの統一」なんかがそうかな。編集者としてはレイアウトなんかをシリーズで統一したいっていう思いがある。でも、僕は、試験対策では国内No.1っていう自負がありますからね。「どうして他の著者に合わせないといけなんだ!」って。だから、編集者の方には、内容は当然のこと、構成やレイアウトに至るまで全てこちらの指示通りにするように伝えています。細かい部分では、表現の修正も独断ではやらないようにいっていますね。編集者の方には、中身ではなく、広告宣伝やキャッチなど「売るための努力」を期待しています。

試験勉強が笑いながらできるのが理想


――資格は時間をかけず効率よく勉強すべきというメッセージは、ブログ等でも繰り返し出されていますが、試験勉強についての考え方をあらためてお聞かせください。


三好康之氏: 学生のころは、点数さえ取れば自由に遊んでて良いんだと思ってやっていました。ペーパーテストには強いので、大学入試も高校入試も僕にとってはなんてことなかったし、「ああ、こういう世界は楽だな」と思っていました。ただ、その一方で、そんなものに魅力は感じなかったし、何の価値も感じませんでした。世の中には勉強なんかよりももっと難しいものがいっぱいあるって思ってましたから。だからなんでしょうね、僕が今も遊んでいる友達は、中卒であったり、高校を辞めちゃったりという人が多いんです。勉強するという人生を選ばなかった人たちです。ほんと、彼らの方がずっと人間的に魅力があるんですよね。僕はそういう人たちのほうが好きなんです、勉強しかできない人なんかよりも。だから、ペーパーテストなんかに時間をかけて、勉強のために何かを犠牲にするというのを止められるようなものを作りたいと思っているんです。ITエンジニアはいわゆる3Kで、鬱病の発症率が、ほかの業種に比べて5倍というデータが出ていて、実際僕もそういう世界を見てきています。そんな世界でも楽しく働いている人がいる。その人たちに共通しているのは、資格制度なんかを上手に利用して勉強し続けている人たちです。勉強をやめた段階で知識が劣化するので怖い時代ではあるんですけど、勉強し続けている人っていうのは、結構自由に、幸せに暮らしているので、そういうような人たちを増やしたいですね。

――今後、教材に改良を加えたい点があればお聞かせください。


三好康之氏: もっと本を薄くしたいです。勉強にかける時間を、極限まで削減したいんです。あとは笑いながら勉強できるツールを出したいんですよ。一度吉本興業に、会計士とか弁護士の勉強を笑いながらできるツールって作れないかなって話を持っていったのですが、向こうの取締役に、「できるかっ、それは無理やろ」って突っ込まれました(笑)。笑いながらというと語弊があるんですけど、楽に、やりがいを持ちながらできるというか。そうですね、例えば、自分の好きなアイドルが「試験がんばってね」って応援してくれるようなことでもいいんです。一言いってくれたら、やる気も出るんですよ。そういうのを考えていきたいんですよね。

恋愛と比べれば勉強や仕事はずっと簡単


――勉強は難しい、というイメージが変わるといいですね。


三好康之氏: 実は、勉強は努力に正比例して伸びていくので、すごく簡単なんです。仕事も、やればやるだけ伸びていきます。やっぱり、一番難しいのは恋愛じゃないでしょうか。恋愛はいくらお金を突っ込んでも、時間を突っ込んでも成果からどんどん離れていくこともある。こっぴどく振られたり、金を貢がされたりもします。仕事面では絶対に鬱にならない自信のある僕も、高校の時に、3年間つき合って結婚しようとしていた人に振られて、1年ぐらいは鬱状態になりました。恋愛面で思い通りいかないと、そうなってしまう自信はあります。それに、恋愛にはやっぱりお金がかかる。今の嫁さんにも、口説いているときに400、500万は突っ込んだかな(笑)。

――それは興味深いです(笑)。よろしければ奥さまとのエピソードをお聞かせください。




三好康之氏: そうですね。口説いているときは、毎日バラの花束を抱えて、車で送り迎えしていたんですよ。同じ会社だったんで、朝迎えにいって会社の前で降ろして。帰る時も迎えに行って。そんなことをしていても、半年間で5、6回ぐらい振られましたね。うちの嫁もおもろいやつなんですけど、花束をずっと渡していたら1週間ぐらいで「もうやめて」と。やっぱり(愛情が)重たかったのかなと思ったら、そうじゃなく「現金がいい」って(笑)。そのうち、食事も「こんな高いところ行かんでいいから」って言い出すんですよ。なぜかなって思ったら、「もっと安いところに行って、浮いた分を現金で」って。最終的には「プレゼントもいらん。お金をくれたら自分で買いに行くから。あなたの趣味は合わないから」とかまで言われました。ただ、そういったネタが面白かったので、親とか友達におもしろおかしくしゃべっていたら「それはアカン、だまされてるだけや」って本気で心配されちゃいました。最終的には付き合えたのでよかったですが、その付き合ったきかっけも最後は喧嘩腰でしたからね。変わっていたんでしょう、お互いに。知り合って半年後ぐらいに、一緒に淡路島に旅行に行った時ですね。些細なことでケンカになって、「どうすんねん。うちの親も心配してる、友達にもだまされてるんちゃうかって思われてんで」って僕が詰め寄ったら、「そんなんいったってあんたが勝手にお金使ってるだけやん」と言い返されて、最後は、僕が「もうつき合わなあかんやろ!」って怒鳴ったら、「わかった、それやったらつき合ったるわ」って捨てぜりふを吐かれました(笑)。そこから結婚するんですから、人生わからないもんですね。昔から、こんな経験ばかりしているから、恋愛が一番難しいと思っています。いくら努力しても答えが出ないし、努力しすぎたらストーカーになったりもします。だから、努力してはいけないという努力をしないといけなくなる。そう考えると、仕事って簡単ですよね。努力に正比例するんですから。

月に200冊増えていく資料を「自炊」で持ち歩く


――ITは新しい技術が次々に出てくるので、書籍などの資料にも多く当たらなければいけないと思いますが、大変ではないですか?


三好康之氏: 資料を読み込むのは苦痛じゃないですね。仕事が休みになったら、どんな資料を読もうかと考えています。もともと僕自身がIT関係の仕事をしていて、コンピューター関係で出る本出る本を買っていかなきゃいけないので、月に本棚1個分、200冊ぐらい増えていってた頃もあります。出版社からもいろいろな新作の本が送られて来るので、買わなくてもどんどん増えてくる。だからPDFで電子化する「自炊」を、かなり昔からやっていました。自炊を始めた当時は裁断機もなかったので、カッターでバラしてA3までスキャンできるスキャナーを使って、1日1冊ぐらいコツコツやっていましたね。

――電子化された書籍はどのように利用していますか?


三好康之氏: 前はパソコンの中に入れて持ち歩いていましたが、今はiPadとiPhoneに入れています。ただ、研修やコンサルティングをしていて、外出先で急に資料を見たくなったり、出張時にどの資料が必要になるかがわからないので、そのように大量の本を持ち歩ける電子書籍は本当にありがたいです。紙は重い。

――三好さんにとって読書とはどのようなものでしょうか?


三好康之氏: 本は資料みたいな感じでとらえているので、正直小説とか、文庫本なんかの“文字だけの本”って読んだことないんですよ。読書感想文でフランダースの犬を読んだぐらいで、それさえも苦痛でしたから。今の僕を形成しているのは漫画本のおかげですね。人の生き方とか、仕事の仕方とか、人間関係というのは、全部漫画から得ました。僕は漫画だけで育ったんです。

――どのような漫画が好きなのですか?


三好康之氏: 漫画との本格的な出会いは、小学校6年の時かな。『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(JUMP COMICS)の1巻がちょうど出たころです。その頃から嵌っています。今もジャンプとマガジンはずっと読み続けていて、娘がいるので少女漫画も読むし、テレビのアニメもほとんど見ています。あと、漫画家だと藤子不二雄さんが好きですね。『ドラえもん』(小学館)から入ったんですが、今ではほとんどの本を持っていますね。

――娘さんにとっては趣味を理解してくれる最高の父親ですね。


三好康之氏: そうなんですかね。それはわかんないけど(笑)。ただ、この間、中学生になる長女と二人っきりで名古屋に乃木坂46のコンサートに行ったんですけど、何の違和感もなかったですね。娘は出張とかにも一緒についていきたいっていつもいいますし。東京が好きなんでしょうけど、僕と一緒にいてもあんまり苦じゃないことは確かです。家でも、車の中でもずっとしゃべっていますから。最近だと、学校の友達との人間関係について話し合いました。「みんなはアニメで盛り上がっているけど、乃木坂の話題が学校で出せないから、パパしか聞いてくれない」といって、二人で盛り上がっています。

――娘から避けられているとか、何をしゃべったらよいかわからないという父親も多いと思いますが、良好な関係を築く秘訣はなんなのでしょうか?


三好康之氏: 間違いなく時間だと思いますね。普通の人は外で仕事していて、平日は会話をしないでしょう。うちは常にお父さんがいますからね。ただ、娘の友達が家に来る時は、「パパ、ちょっとどっかにいっといて」っていわれます。「お父さんがうちにおるのおかしいから」って(笑)。

ソフトの時代は「恋愛経験」がものをいう


――ご家族とのエピソードをお聞きしても、新しい働き方を身を持って示されていると思います。特に自分の仕事に迷っている若者にメッセージをお願いします。




三好康之氏: これからの時代は、マルチタスクで動けるようにならないと時間が足りないと思います。勉強でも仕事でも、昔は集中する能力が求められていましたが、変化の速い今はそれだと時間が足りなくなる。そうじゃなく、集中せずに同じ時間に複数のことをこなす「マルチタスク的」な行動が必要だと思いますね。それができれば、時間が2倍、3倍に使えるわけですから、生き方も楽になると思います。例えば、子どもと一緒にテレビを見て、遊んだりしながら、横で仕事をしたりするとか、勉強しながら仕事をするとか。デートしながら仕事の段取りを考えるとか。僕はそうしています。僕が会社を辞めた理由の1つも、テレビを見ながら仕事ができないことだったんですから。テレビって垂れ流しができるから、情報収集しながら他のことをこなせる。便利なんですね。今では、仕事しながら、テレビを2画面つけています。1個ニュースで、もう1個ドラマなんかを流していますね。

それ以外にも、川西から東京に移動する6、7時間の間でも、2つ3つの構想とか企画を頭の中で組み立てたり、勉強も何かのついでに合わせてしているんです。集中するんじゃなく。勉強なんかだと、自分自身に意識だけ植え付けておいたら、勝手に頭が考えてしまいますからね。特に参考書等のツールを使わなくても、覚えた内容を思い出すという勉強法なら、頭だけでどこででもできますから。そんな風に、マルチタスクで時間を2倍3倍に使うことっていうのを考えていけば、案外、生きやすい世の中だと思いますよ。今世の中に物はあふれているし、情報もたくさんあって、それをマイナスにとらえちゃうと重たいけど、全部楽しんだらいいなというような発想にも通じますし。特に、考える仕事が増えると、仕事をしながら勉強したり、あるいは遊びながらでも仕事ができたりするようになりますしね。

――考える仕事とおっしゃいましたが、日本の産業は今後、知的労働の重要性が増していくとお考えでしょうか?


三好康之氏: クールジャパン(日本独自の文化が海外で評価を受けている現象など)が話題になっていますが、今日本に残された道はソフトしかないと思いますよ。供給過多で、物が売れる時代でもなくなってきたので製造業には厳しいでしょうね。(漫才師の)中川家の漫才で、冷蔵庫の製造ラインのバイト時代のネタがあるんですがご存知ですか?中川家の二人が冷蔵庫の生産工場で働いていた時、毎日、来る日も来る日も、生産途中の冷蔵庫が目の前に流れてくるんですね。1日500個ぐらいかな、ベルトコンベアでバーっと流れてくる。そんな単純作業に、剛のほうが切れたんです。「こんなに誰が買うねん!」て(笑)。結局、そうなんですよね。冷蔵庫にしても車にしても、そんな大量に誰が買うのかっていうこと。しかも、最近だったら品質がいいので長持ちするからいらないですもんね。もう“形あるもの”はそんなにいらないと思いますよ。それよりも、これからはクールジャパン、ソフトしかない。

――そんなことを企業に提案したりしているんですか?


三好康之氏: そうですね。それに限らずですが、研修であったり、コンサルテーションであったり、指導していますね。相手は、自分より年上の人であったり、経験が豊富であったり、スキルが高いってことも多いですよ。

――難しくないですか?


三好康之氏: その点は大丈夫です。その自信はどこにあるかというと、一番はやっぱり恋愛経験なんですよ。僕のほうが絶対いい恋愛経験していますから。よく振られていますが(笑)。もう1つは、勉強や仕事以外の世界をよく知っていること。漫画とかアニメとかアイドルという、そういう彼らの知らない世界を知っている。相手が優秀であればあるほど、(勉強や仕事しかしてこなかったから)弱い世界ですからね。これは勝手に思っているだけなんですけど、絶対に僕の強みだと思いますね。

電子出版、ネット放送。自由な活動を模索していく


――会社経営者はそのような時代にどう立ち向かっていけばよいでしょうか?


三好康之氏: 終身雇用、安定雇用ができなくなってくると思うので、プロジェクトごとに人を集めるという体制を組むことが必要でしょうね。今の時代、旧来の“会社”という組織形態のまま運営していくのは厳しいでしょうね。リスクがありすぎる。かといってそんなに魅力もない。僕は完全に保守主義なので、今の社会状況とか経済状況を考えると、絶対に“会社”という組織を大きくしようとは思いません。会社としては、1人でのんびりと、フラフラとしています(笑)。ただ、一人よりも二人、二人よりも十人というメリットは欲しいですね。人数が多ければ、大きな仕事ができるから。発言力も強くなるし。だから、会社の枠を超えて、案件単位に複数企業でコラボレーションするプロジェクト制がベストだと思います。個人としては、ゼネラリストを目指すべきだと思います。そもそも経営者はゼネラリストでないと務まりませんから。ただし、スペシャリストの雇用をきちんと守ってあげてほしいです。スペシャリストはこけたら全て終わるのでリスクが大きいですからね。今のゼネラリストというのは、スペシャリストを倒そうとしているんですが、それでは絶対に進化しません。専門分野の1個1個に関しては負けを認めないと、絶対にダメです。スペシャリストといい関係を築いていかないと、最後は自分に跳ね返ってきます。

――最後に、今後の事業の展望をお聞かせください。


三好康之氏: 2013年から、既存の組織の枠を超えた執筆や研修のグループを立ち上げています。名称は、大好きな乃木坂46にちなんで、ITのプロ46というのにしました。今現在、50人弱のメンバがいます。そして、そのグループで後継者を育て、今の自分の仕事を引き継いでいきます。具体的には、今書いている本を、すこしずつ共著にして、自分の仕事を引き継いでいく予定です。本を出していると固定ファンがついてうれしいんですけど、離れられないんですよね。僕は縛られたくないので、自由に、違うところに行きたいと考え出したのがきっかけです。

僕の受講生で、ノウハウを引き継いでくれる人が見つかってきたのも理由の一つです。課題は、法律上規制のある組織になっていないところを、どう組織化していくかということを考えていくところでしょうか。活動そのものは、ネットとSNSを中心に、我々の最も強い分野であるITを最大限に活用しています。そういう意味では、良い時代になりました。2013年の夏には、電子出版の出版社を立ち上げる予定です。出版社と編集者に依存しなくてもいい時代が、もう来ているんでね。自分の出していない試験区分に対して、電子書籍で全部ラインナップして、僕のサイトで販売していく予定です。電子書籍の携帯性にはニーズがありますからね。電子書籍で出して、価格設定も本よりも上にしようと思っています。それと、ネットで放送局も立ち上げてオンサイトで講義をしていきます。業界に限っていけば僕のサイトは集客力がありますからね。出版社とどのように共存共栄していくかはこれから話し合いますが、話し合う土俵に武器がないといけないので、先にモノを作ろうと思っているんです。

最後になりますが、今の時代は個人のゲリラ戦が有効な時代だと思います。ネットを使えば出版や放送なんかも個人でできる時代なんですから。ITを駆使して個人で戦っていける時代の先駆者になりたい。そんな風に考えています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 三好康之

この著者のタグ: 『漫画』 『コンサルタント』 『子ども』 『営業』 『起業』 『勉強』 『IT』 『教材』 『クールジャパン』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
著者インタビュー一覧へ戻る 著者インタビューのリクエストはこちらから
Prev Next
利用する(会員登録) すべての本・検索
ページトップに戻る