牧田幸裕

Profile

1970年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科修了。ハーバード大学経営大学院エグゼクティブ・プログラム(GCPCL)修了。アクセンチュア戦略グループなどを経て2003年日本IBMへ移籍。インダストリアル事業本部クライアント・パートナー。主にエレクトロニクス業界、消費財業界を担当。IBMでは4期連続最優秀インストラクター。2006年信州大学大学院 経済・社会政策科学研究科 助教授。07年より現職。2012年青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科 非常勤講師。最新刊は『得点力を鍛える』(東洋経済新報社)。

Book Information

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本人はもっと『競争力』をつけるべき



経営学者の牧田幸裕さんは1970年に京都に生まれ、京都大学経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科修了後、アクセンチュアなど外資系コンサルティング会社にて日本企業の経営企画部門・営業部門に対する変革に携わった後、2006年信州大学経営大学院 准教授に就任。日本企業の成長戦略や競争力の強化について研究されています。またラーメン好きとしても知られ、著書として『ラーメン二郎にまなぶ経営学』(東洋経済新報社)などユニークな経営書もお書きになっています。そんな牧田さんに、本について、電子書籍の未来について伺いました。

大学生になるまで「鬼勉」といえるくらい愚直な勉強家だった


――早速なんですけれども、経営戦略やマーケティングを専門に研究されている経営学者として、最新のご本の紹介も兼ねて近況をご紹介いただけますでしょうか。


牧田幸裕氏: 著書でいうと、『得点力を鍛える』(東洋経済新報社)という本を出したんですよ。この本は勉強法の本で、最終ゴールとしては、「成果を出すために最短距離で投資対効果を最大化して努力していきましょう」という考え方を解説しています。勉強法といっても「受験の勉強」もあるし、「ビジネスの勉強」もある。それを僕自身の体験談も含めて書いています。

僕は、大学入試はうまくいったんですけれども、その後大学1年のとき、周りの友達が「勉強しない」といっていたのを真に受けて勉強せず、遊んでいたんですけれども、そうしたら8単位しか取れなかったんです。でも友達は、同じように遊んでいたのに40単位とかを取っていた。それで「えっ?」と思って、「なぜだろう」と彼らから話を聞いたんです。「要領よく勉強する」って学生時代はあんまり好ましい表現として使われていなかったんですね。「もっと愚直に努力をしなさい」みたいにいわれがちなんですけれど、ビジネスの世界ではそれは素晴らしいことなんですね。なぜならどんなに愚直にやっていても、結果を出さなければビジネスの世界では評価されないからです。結果が全てですから。



僕の大学時代の友達というのは、そのことを高校生や受験生のころから気づいていて、「投資対効果」を最大化する努力をしてきていた。僕なんかはむしろ大学に入るまでは愚直に努力をするタイプだったんです。起きているあいだはひたすら勉強して、電車の中でも画板を机にして勉強していましたね。

日本のホワイトカラーの生産性は先進7か国最下位



牧田幸裕氏: 高校生のときには「鬼勉」だったんですよね。僕は「投資対効果」を高める努力の方法を知らなかったから、鬼のような努力でしか結果を出せなかった。でも、今の日本人は同じような状況だと思っています。日本のホワイトカラーの生産性は先進7か国中の最下位をつっぱしっている。日本には「生産性を高める」という視点がないので、サービス残業の嵐で成果を出しているフリをしているだけなんです。それが今の日本企業の現実なんですよ。それはなぜかというと、学生時代からずっと日本では愚直な努力は評価されるけれど、「生産性を高める、要領よくやる」というのが、印象がよくない。だから、要領よく勉強する方法を知らない。最新刊では、愚直な努力をしなくてもちゃんと結果を出せるやり方をご紹介しようと思って本を書きました。

――ご自身の経験も赤裸々に書かれていますね。


牧田幸裕氏: 大公開ですよ。外資系コンサルタントの時代に、朝9時から朝の6時まで働いていた話を、ばっちり出しているので。鬼のように働いて金曜日の深夜に帰って、へとへとになって寝て、起きたら窓の外がたそがれになっていて、「ああ土曜日を無駄にしちゃったな」と思ってテレビをつけると「サザエさん」(日曜日の夜放映)をやっていたりする(笑)。だから、気が付くと週末を全部ワープしているんです。

新人戦略コンサルタント時代「何が大切なのか」がわかっていなかった



牧田幸裕氏: 戦略コンサルタントの1年生や2年生はそういう非尋常的な暮らしをしている。そこから何とか脱却したいと思っているんですね。この本ではそこを乗り越えるためにみんなで悩んだエピソードを赤裸々に語っています。コンサルタントで上に抜ける人たちというのは「何が大切なのか」ということをわかっている。それを理解できないとポジションが上にあげられないんですね。今Yahoo!にいる元マッキンゼーの安宅和人さんという人は、「イシューからはじめよ」といって説明してくれたんです。

「イシュー」というのは、一番重要なところ、解かなければならないところです。世の中には色々な問題があるし、ビジネスでも目の前に見えてくる問題がありますけれども、解かなければならない問題というのは限られていて、問題を全部解かなくてもいい。重要な問題だけを解けば、ほとんどの問題点を解決できる。だから問題の重みづけをしていって、重要な問題だけを解決していこうというのが安宅さんの『イシューからはじめよ』(英治出版)で説明されている考え方なんですね。元BCG、ボストン・コンサルティング・グループの日本代表で、早稲田大学の内田和成教授という方は、同じことを「論点思考」といっているんです。マッキンゼーでは「イシュー」と呼んでいて、ボストン・コンサルティングでは同じことを「論点」と呼んでいる。

要はいっていることは一緒で、なんでもかんでも解決しようと思って努力するのではなくて、大切なところだけを頑張りましょうということ、それを僕は「得点力」と呼んでいるんですけれども、やらないことを決めて努力を最適化する技術というのは、要は全部を解決しようとするのではなくて、やらないところを決めること。やらないところを決めるということはフォーカスするところを決めるということであって、「なんでもかんでも努力するのをやめましょう」ということをこの本では提唱しているんです。だから、いっていることは結構『イシューからはじめよ』や『論点思考』と似ていますよ。

――何が大事かを自分の中でちゃんと判断するのですね。


牧田幸裕氏: そうです、経営資源というのは限られているし、僕たちの資源も限られている。だからなんでもかんでも手を出すのではなくて、結果を出すために必要なところだけを手を出していきましょうという考え方ですね。

本を執筆するときは「腹に落ちるように」書く


――書くときのこだわりは何かございますか?


牧田幸裕氏: 僕が特にこだわっているのは、こういう経営学の本を書くときに、腹に落とさせるために、日本の事例の中の新しい事例をどのように皆さんにご紹介していくかということなんです。僕が書いた『ポーターの「競争の戦略」を使いこなすための23問』(東洋経済新報社)という本なんですが、もともとハーバードにマイケル・ポーターというすごく偉い先生がいて、『競争の戦略』(ダイヤモンド社)という本を書いてすごくメジャーになったんですが、その本に出てくる事例はほとんどがアメリカの事例なんです。しかも1970年代から80年代のケースが多くて、なんとなくピンとこない。「1970年代のキャタピラー」とかいわれても、頭の中でリアルに想像できないですよね。

――読者はできないですよね。


牧田幸裕氏: なので、僕の本では差別化が成功した事例として、亀田製菓の「ハッピーターン」というお菓子をあげたりしています。「『ハピ粉』という粉があって、ハッピーターンの周りに粉がついている。セブンイレブンであの粉を200%とか250%にしたらすごく売れたんですよね」という感じで。ハッピーターンなら、読者が頭の中にその粉の味や形を想起できるじゃないですか。

――はい、できます。しかも例が新しいですよね。


牧田幸裕氏: まず理論を説明して、その理論が現実のビジネスでどのように適応されていくのかという説明をしていくわけなんですが、現実の事例のところで、彼らが頭の中で想起できるような新しく具体的な事例を使うようにしています。基本的にこの本で書いていることは、大学院の授業で話した内容を活字にしているので、ライブ感があると思いますね。

著書一覧『 牧田幸裕

この著者のタグ: 『大学教授』 『コンサルタント』 『映画』 『可能性』 『投資』 『子ども』 『子育て』 『コンテンツ』 『価値』 『理解』 『愚直』 『イシュー』 『クオリティ』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
著者インタビュー一覧へ戻る 著者インタビューのリクエストはこちらから
Prev Next
利用する(会員登録) すべての本・検索
ページトップに戻る