ふと手に取った本は、縁があるのでなるべく購入する
――石野さんはMBAの時も、コンサルタントとして絶えず勉強されてきたと思いますが、本はかなりの量をお読みになるのではないですか?
石野雄一氏: 本は好きですね。ジャンルは問わず、色んな本を読んできました。ビジネス系、自己啓発系も読みました。『7つの習慣』(キングベア-出版)とか、ナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』(きこ書房)とか。引っ越しで、本棚を整理した時は、ブックオフに450冊を持って行きました。残したものもありますけど、ブックオフでいいやっていうのが450冊もあったんです。結構高価な本もあったから、購入した価格でいうと5、60万円分位あって、売った時には2万円位になりました。
――書店で本を選ぶ時の基準はありますか?
石野雄一氏: Amazonがなかった時代は、本屋でぱっと手に取った本は極力買うようにしていましたね。ご縁みたいな出会いには意味があると思っているからです。人との出会いと同じように、その本を取ったっていうのは何かしら惹かれるものがあったからですから、それを結構大切にしています。だから本代は平気で月10万はオーバーしますね。最低でも、2、3万は絶対本に使っていました。だから何回も同じものを買っている時もありますし、ブックオフに売った本を数年たってから、もう1回買うこともありますが、それもご縁だからいいと思っています。最近は、むしろ昔買った本をもう一度手に取ることが多くて、あんまり新しい本を読まなくなっているかもしれません。読んだことがある本を、知り合いが良いよといっているのを聞いて、もう1回買って別の視点で読んでみようとかですね。
――電子書籍は利用されていますか?
石野雄一氏: 私Kindleでは新聞しか読んでないんです。やっぱり紙が好きなんですよ、新聞は毎日、毎日バーっと読むものですし、コストの問題もあります。例えば、私は「フィナンシャルタイムズ」と「インターナショナルヘラルトトリビューン」を購読しているんですけど、紙だと数万円もするので。雑誌とかも別に紙である必要はないので、電子でも良いのかなと思うんですけどね。
OSを変える資本主義と東洋思想との融合
――最後に、今後の活動、執筆されたい本のテーマなどをお聞かせください。
石野雄一氏: もうタイトルも決まっているんですが、『優雅な経営』っていう本を構想しています。現実問題としては直近でも違う本があるのですが、これは10年、20年後を見据えたものです。サブタイトルが「日出ずる国に学ぶマネジメント」です。今のいわゆる資本主義の世界は閉塞感というか、頭打ちの状況にあるような気がしているんですね。そのような時代に、今のアメリカ、ヨーロッパから発信された世界観と、東洋的な思想の融合が重要だと思っているんです。
「和を持って尊しとなす」というわれわれ日本人の調和の世界ですよね。私たちがMBAの勉強をしていた時もそうだったんですけど、ファイナンスとかマーケティング、オペレーション、人事とか、MBAの学ぶものっていうのは、結局やり方の世界で、アプリケーションソフトだったわけですよ。そうじゃなくて、重要なのはOSです。若い時は私も同じようにアプリケーションソフトのバージョンアップをとにかくやろうとしていたわけなんですけど、もうそれだけじゃだめなんですよね。先ほどお話しした、社長のコンサルティングでも、ルールを変えても絶対会社は変わらなくて、経営者のあり方だとか、会社のあり方、あるべき姿だとかのOSがあって初めて、世界のための企業になると思っているんです。でもOSって見えないんです。東洋思想では、
例えば中国では木が目の前にあって、見えないところに根っこがあるわけですね。大切な、「根本」っていわれている。この根本が大切で、見えるところっていうのは、「枝葉末節」で、われわれは枝葉末節ばっかり見ているわけです。これは全てに言えることで、人材採用で「私は英検何級です」とか、「私は何々ができます」なんていうのは全部アプリケーション。「あなたは、仕事に対して何を大切にしますか」っていうところを、社長なり人事担当者は説いていかなきゃいけないわけですよ。うつが多くなっているのもOSとアプリケーションで起こっていることがちぐはぐになっているからです。私がコンサルして、社長さんが実践している会社を事例として、世界に伝え込んで、日本発の世界貢献ができるんじゃないかと思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 石野雄一 』