おちまさと

Profile

1965年12月23日東京都生まれ。数多くの人気テレビ番組やウェブサイトの企画、ファッション、企業ブランディングまで手掛けるオールラウンドプロデューサーとして活躍中。「対談の名手」として雑誌や書籍のインタビュアーを務めることが多く、またブログやツイッターが高いアクセス数を誇り情報キュレーターとしても信頼度が高い。著書も多数出版し、書籍を題材とした企業・学校などでの講演も多い。厚生労働省イクメンプロジェクトメンバー、経済産業省「クール・ジャパン戦略推進事業・企業マッチンググランプリ」総合プロデュースも務める。
ブログ http://ameblo.jp/ochimasato
ツイッター https://twitter.com/ochimasato

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本を購入するのは本屋、「偶然」の出会いから、ヒットの勘をみがく


――本を購入する際の基準はありますか。


おちまさと氏: 自分の勘を頼りに選んでいます。ベストセラーなど、「売れているから」という理由では選びません。例えば、湊かなえさんの『告白』(双葉社)。教室の机と、あの椅子がポンと置いてあるカバーを見て、「ああ、これ何かいいな」と自分の勘、アンテナに引っかかりました。その後、実際に映画化されたりと世間から注目されるのですが、そういう勘を養っていたいんですよね。

――湊かなえさんの作品は、読んでみてどんなところに魅かれましたか?


おちまさと氏: 多面的に物をとらえる作風に惹かれましたね。自分のプロデュースの仕事に共通する部分が多いと感じました。問題を解決するような仕事の依頼があった時、「じゃあこっちから見てみよう」と色々な角度から見ることによって、何か提案した時に必要なことが浮き彫りになってくる。人でも、物でも、現象でも、一方向で物事を捉えてしまう傾向がありますが、湊かなえさんの作品のように多面的に見るところが大事だと思います。



湊かなえさんの本に出会えたのも、ふらっと本屋に行った時に出会った、「偶然」です。その「偶然」に出会う時間を大切にしています。漫画も好きなのですが、事前情報を持たず本棚の背表紙をずらっと眺めて「何だこの表紙は」と思って買います。

たとえば『テルマエ・ロマエ』のルシウスという風呂技師は何かに似ているなと思ったら、クール・ジャパンというプロジェクトに似ている。クール・ジャパンは、日本の文化を海外に輸出して、外貨獲得ですが、『テルマエ・ロマエ』は、逆に日本の文化をローマに持ち帰ってビジネスとして成功させている。発想は一緒です。さらにこの取り組みは、現代と伝統のミクスチャーでもあります。伝統を前面に押し出して「日本の工芸品はいいから買ってよ」ではなくて、現代のセンスも取り入れている。ルシウスもTOTOのウォッシュレットを見たり、片田舎の温泉のサウナを見たり、古いタイプのお風呂を見て、それらを混ぜてローマにあった形にした。発想が似ているんですよね。

本は読むだけじゃもったいない!



おちまさと氏: やはり本は読むだけではなく、自分なりの解釈と、吸収できるもの、自分との類似性を意識させながら、読む事をお勧めします。「ああ面白かった」もいいですが、それだけだともったいない。作家の方が、丁寧に想いを込めて書かれたものを、我々も磨いたアンテナで受け取る。行間を読んだり、感受性を鍛えるといいですよね。同じ本でもとらえ方で違ってくるので、色々な角度で読むのも大切ですね。映画も一緒で、「なぜ、あの場面であのセリフを使うんだろう」とか、「なぜああいった表現をするの」とか、自分に問いかける読書をして、思考力を鍛えることが大事だと思います。

時代は変わっても、本質は変えない


――書き手として、表現者として、どういったこだわりがありますか。


おちまさと氏: 常にフラットでありたいと思っています。そして、本質を変えない。それはブログでも、本でも一緒です。25年前も今も、25年後も。時代の変化に左右されないということ。背骨は変わらなくて肉付きは変えていきたいんです。

――迎合ではなくて、少し先に走って適応させていくといった感じでしょうか。


おちまさと氏: そうですね。僕は東京とハワイで暮らしていますが、数年後スタンダードになるかもしれない。スタンダード前に、チャレンジすることは、みんな怖いですよね。でも私は、それをやりたいんです。以前はマラソンもマイナーだったのが、今はマラソンブームです。今回ホノルルマラソンは、過去最高3万人、日本人はそのうち1万6千人。スタンダードになったと言えると思います。だからいかに人よりも先に走って、ぶれずにいられるかということが大事になる。フラットであり続けるって、意外と難しいんですよ。いかに一貫性があってフラットでいるか、その気持ちを大切にしたいですね。

3.11、ブログに込めた勇気


――3.11のブログの時も、そのフラットさの表れではないでしょうか。


おちまさと氏: 3.11の時「不謹慎」について扱ったブログが、ニュースで取り上げられました。当時、事あるごとに「不謹慎だ」という風潮が蔓延しました。私はフラットであり続けるために、「不謹慎とは何か」という事について、考えその結果をブログに載せました。当然、周りの空気もありましたから勇気もいりました。けれども、早く働ける人は働かないと国が弱くなる一方です。あの時は、不謹慎の基準もあいまいで、「髪の毛を切ると不謹慎」、「焼き肉を食うと不謹慎」。でも、美容師や、焼肉屋はそれが仕事。それを不謹慎で片付けられたら、彼らの仕事はなくなってしまうわけです。

しかしながら、思考停止の空気だったため、震災後の3月14日に入っていた打ち合わせは、すべてリスケでした。「なぜ?今こそ(仕事を)やらないと!」と思いました。空気を読んで「そうだそうだ、不謹慎だから今は休もう」って言ったほうが楽なのかもしれません。しかしフラットでいたかったからこそ、「休む」という考えにはなれなかった。「不謹慎とか言うな!」ではなく「不謹慎とは何かについて考えよう」という問いかけだったんです。

著書一覧『 おちまさと

この著者のタグ: 『考え方』 『働き方』 『価値観』 『仕事』 『SNS』 『きっかけ』 『プロデューサー』 『プライベート』 『多面的』 『楽しさ』

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