保坂展人

Profile

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(‘03~05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)、『いじめの光景』(集英社文庫)、『続・いじめの光景』(集英社文庫)、『ちょっと待って!早期教育』(学陽書房)、『学校を救え!』(ジャパンタイムズ)、『学校だけが人生じゃない』(結書房)他著書多数。

Book Information

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一瞬にして情報が広がるネットに驚き


――保坂さんは、ブログやSNS、Twitterなどネット媒体を活用した情報発信にも力を入れていますね。


保坂展人氏: 今、朝日デジタルという朝日新聞のサイトで、初めてウェブ連載らしきものをやっています。面白いのが、ある電力問題について書いたとき、昼の2時くらいにアップされて、5時くらいにはFacebookのおすすめが1000を超えていました。「なんか勢いがあるね」と思っていたのですが、夜に見たら3000、次の朝見たら5000になっていて、またその夜には10000になっちゃった。そのサイトでは大体おすすめは1桁台が大半で、2桁でになると多い方らしいのです。だから、世の中的に欲しい情報は、必ずしも新聞に出ている情報ではないということを思いました。

――電子媒体の可能性はどういったところにあるでしょうか?


保坂展人氏: 即効性と、広がりの速さでしょうね。やはり1分間で30人がリツイートしているのを見ると、関心がある人がフォローしているのだな、と感じます。例えば、子どもの声がうるさいという理由で、「園庭で遊べない」という話を聞きました。これは本当におかしいなと思って、Twitterで書いたことがあるんですが、リツイートがすぐ、千数百になって、全国から同じような事例がどんどん来たのです。子どもに対して不寛容な社会になっているということが、だんだんわかってきたんですね。

――今まで顕在化していなかった声が、Twitterによって現れてきたんですね。


保坂展人氏: 私は、長いこと講演会とかシンポジウムで色々なことを話してきましたが、1、2時間で何かを伝えるというのはなかなか難しいことです。「良い話でした」と言って帰られるのですが、やっぱり私としては聴衆に一部分しか伝えられていないと思いますね。本質の話に至るまで、どうしても時間が必要なのです。だから通常の時間では、足りないと感じてしまいます。ところがTwitterで議論をした時に面白かったのは、議論のゴングが鳴ると、もう次々と意見が出てきて、それがきちっとレールの上に乗って、いきなり本質論に入れるのです。つまり、その問題について普段考えている人が集まっているので、非常に濃い話ができました。以前は、最初に2時間とか3時間、色々データを見せたりしながらやらなければいけなかったことも、元々そういうことを話したいと思っていて、宿題を何回もやってきてくれた人が集まってディスカッションできる、そういう効用がTwitterにはありました。



ただ、落とし穴もあって、例えば、インターネットが普及した95、6年以前の情報が極端に少ないということがあります。それ以前の記事は検索しても出てこない。でも、存在していないわけではないんです。若い人は全てがネットにあると思っている部分があるのかもしれません。そこはちょっと割り引いて考えてもらった方がいいと思います。ネットは、全てのことを網羅していません。いわゆるSNSだって全てのことを網羅しているわけではない。私はSNSやTwitterでは、区民に対する情報や、時代や社会に関する発言をする場として割り切っていまして、今何をしているとか、ラーメン食べたとか、そういうことも書かない様にしています(笑)。ネットとリアルの組み合わせが非常に大事だと思っていて、ネット上のやり取りを生の声でぶつけ合って、お互い耳を傾け合う空間を作るということもやっています。

区民との協働。世田谷区発、全国へ


――最後に、今後の展望をお聞かせください。


保坂展人氏: ここのところ、区政の「基本構想」を作る作業をしています。先日審議会の答申があったのですが、その策定の過程では、朝10時から17時までという結構長い時間、ワールドカフェ方式で世田谷区の未来像を語るテーブルが設けられました。無作為にご招待をした1200人の中から応募された約90人、20テーブル皆さん熱心なんです。そこで話題になっていたのは、障がいがある人がどうすれば過ごしやすくなるかとか、高齢者が1人暮らしで大丈夫なのか等、非常に身近な関心事です。自然エネルギーのことも話題に上りました。90人近く、それぞれの20グループが、20年後の世田谷区、これからのビジョンをイメージにしてくれました。とても質の高い議論の場になったと思います。今の日本社会の閉塞状況、特に若者が元気が出せない状態になっていたり、子どもを育てることに、非常にプレッシャーがある社会だったりすることを、嘆いていたり恨んでみても仕方がないので、お互いが少しずつ立ち位置を変えて、組み替えをすることによって流れを良くしていかなければと思っています。

例えば行政に対する住民の苦情に対して、行政が身構えるという関係を、協働の関係、「一緒に考え、つくる」という関係に置き換える。そうすると、お互いの力が活きるわけですね。構えるという姿勢では両方1歩も動かないわけです。社会を変えるというのは、現実、具体的に変えるということなのです。今、区民の中から少しずつ出てきた、空き家活用への流れ、公園の設計に参加したいという声、子育ての支援策に関する声を、少しずつでも実現していきたいと思っています。社会全体を一気に変えることはすごく難しいけれども、ちょっとしたきっかけであっても、世田谷区がそういうことができる地域にまずなることによって、日本全体にも連鎖作用を及ぼしていけるのではないかと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 保坂展人

この著者のタグ: 『ジャーナリスト』 『可能性』 『ソーシャルメディア』 『政治』 『行政』 『教育』 『コンシェルジュ』 『世田谷区』

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