中村航

Profile

1969年、岐阜県生まれ。芝浦工業大学工学部工業経営学科卒業。2002年に『リレキショ』(河出書房新社)で第39回文藝賞を受賞しデビュー。『夏休み』『ぐるぐるまわるすべり台』(文藝春秋)は芥川賞候補にもなり、後者では第26回野間文芸新人賞を受賞した。2005年発表の『100回泣くこと』はロングセラーとなり、映画化もされた。近著に『あなたがここにいて欲しい』『あのとき始まったことのすべて』(角川文庫)、『星に願いを、月に祈りを』(小学舘文庫)など。

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テクノロジーが進む過程で、良いものはなくならないでほしい


――古本屋さんに本が出回って、著者や出版社に対して1円も還元されない状況で回っていくという悪循環というのも実際にあります。どのようにすれば今の状況を打破できると思いますか?


中村航氏: んー。人間の欲というのは、便利さを追い求めたりすることも全部含めてですが、流れができたものについては不可逆で進んで、みんながよかれと思って見ていた方向に進んだ結果、「あれ、草木一本生えてない」みたいなことにならないといいなと思います。
面白さは無料で得るものだと、無邪気にそう思っている人もいるし、それはそれでいいことだと思うんです。でも職業作家として専業でやっている人のすごみというのは絶対にあって、そういうものを僕は読みたい、聞きたいと思うし、面白いと思ったものにはお金を払いたい。人類はそうやって多様性とか専門性をわけあってきたわけですよね。面白いものに触れたいということを、多分みんな思っていて、だけどそれとは矛盾した行動を全体としてはとる。完全にコントロールはできないかもしれないけれど、クリエーターにも、それからオーディエンス、受け取り手も、一番ちょうどいいラインがあるんじゃないかなと思います。それを探さなきゃならないですね。
ただ僕自身の問題としては、どんな状況になっても生き残ろうというだけです。僕の本があった方がない世の中よりいいんじゃないかと、今のところはそう思っているし、そう思われるようにありたい。

出版社、編集者に求めるものは「読者へ届ける」こと


――状況が目まぐるしく変わっていきそうな中での編集者、出版社の役割、理想像について伺いたいと思います。


中村航氏: 編集の仕事はすごく幅広いと思うのですが、ちゃんと仕事をして作品に貢献してくれたらうれしいです(笑)。彼らには読者に届けるという役割もあるので、僕の中から何を引き出して、それをどうアピールしてくれるのか、全ては編集者や出版社にかかっている(笑)。今はエディットよりも、できた作品をどういう風に売るのかなど、そちらの方が重要な役割になってきているのかなと思います。

今後はストックではなく、今から経験することをテーマに


―― 今後はどのような展望を描かれていますか?


中村航氏: 自分の体験から引き出せることは大体書き終わったと言うか、幾つか書いた中で1周した感じはあるので、今度は今自分が体験していることが、テーマになるかもしれないです。そのためにもボーッとしていてはダメで、もっと自分でもいろんなことに好奇心を持って生き生きした毎日を送ろうと思います(笑)。今後は今やっている小説を仕上げていきますが、2、3年先くらいは今書いているものをどう仕上げていくかというだけでワクワクしています。

(聞き手:沖中幸太郎)

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この著者のタグ: 『装丁』 『書き方』 『小説』 『作品』 『感覚』 『ブックデザイン』

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