営業マンとして生命保険の「正しい売り方」を模索
――今のようなコンサルタントとしてのお仕事を始められたきっかけは、どんなところにあったのですか?
萩原京二氏: 大学はもともと早稲田の法学部で、卒業してから10年ほど東芝というエレクトロニクスの会社におりまして、海外営業の仕事をしておりました。具体的な仕事内容は、コンピューターの記憶装置の営業です。ハードディスクのほかに、当時はフロッピーディスクもありましたので、フロッピーディスクの起動装置やハードディスクとかCD-ROMなどの部品をパソコンメーカーに供給するのが仕事でした。特に、当時はパソコンの最後の組み立てにあたる生産基地のほとんどが、台湾をはじめとするアジア地域にありました。私の仕事は、台湾や韓国、シンガポールあたりのお客さんに対しての部品販売でした。
――大手企業に10年間もいらっしゃると、会社での責任やポジションなどに変化はありましたか?
萩原京二氏: 9年目に主任になって、海外留学もさせていただきました。辞める直前にはアメリカの駐在員としての辞令もいただいた。
――海外留学はどちらへ行かれたのですか?
萩原京二氏: アメリカのフロリダに3ヵ月ほどおりまして、ホームステイしながら語学学校で英語を勉強しました。ちょうど年末年始をはさんだ時期にあたっていたので、楽しい時間を過ごすことができました。
――順調なお仕事があったにもかかわらず、次の新しいステージに移られたことになりますが、何かきっかけがあったのですか?
萩原京二氏: 仕事自体には非常に満足していましたし、会社にも評価していただけました。ですから辞める必要はまったくありませんでした。でもプライベートでちょっとした事件に遭遇してしまって、当時のサラリーマンの給料以上にお金が必要なことがあって、「ここはひとつ一獲千金」というわけではありませんが、ソニー生命という完全歩合の生命保険の営業に転向しました。
――大企業の安定したポジションを捨てることに不安はありませんでしたか?
萩原京二氏: 東芝時代にすごく尊敬している先輩がいらして、実は私がソニー生命に行く2年前に、その方がすでにそちらに転職をされて、ご活躍されていた。そこでは稼げるとも聞いていたので、ある意味ではその方を頼って入れていただいた押しかけ入社のような面はありました。
――その後、どんな経緯で独立して事務所を開設することになったのですか?
萩原京二氏: お客さまに生命保険を売るにあたっては、なるべく正しい形で売りたいという気持ちがありました。「正しい」というのは、例えば、普通のサラリーマンの方が病気をすると、社会保険から給付が受けられる。健康保険から傷病手当金が出ますし、もし死んでしまった場合にも、厚生年金から遺族に対して遺族年金が給付されます。社会保険労務士というのは、そういった社会保険を扱う資格です。生命保険は、社会保険で不足する部分を民間の保険でどう補償すればよいかといことを考えて加入するものなので、そのふたつの保険の特性をきちんと踏まえて売るのが正しい売り方ではないかと考えました。それから社会保険労務士の勉強をすることになりました。
専門家からベストセラー作家へ
――社会保険労務士は難関ですから、資格を取るには、かなり長時間の勉強が必要でしたか?
萩原京二氏: 一般的に800時間から1000時間の勉強が必要と言われています。ただ、それだけの時間数を勉強に充てると、必然的にお客さんと会う時間が少なくなって、要は売り上げが上がらないので収入が減ってしまうのが難点で、結局会社を辞めることになりました。もっともその資格取得の経験が『マインドマップ資格試験勉強法』という本につながりました。実際に、あの本を読んで書いてある通りに実行したら合格したという方がけっこういらっしゃったのはうれしかったです。
――なぜ本を書くようになったのですか?
萩原京二氏: 一番はじめは、社会保険労務士の資格を取って1999年に開業してすぐ、ある方からお話をいただいて、翌年くらいに総務や人事についての本を書きました。その後もう1冊、ある方と共著で実務書を出しました。でも、本を出すなら売れる本を書きたいという希望があって、3冊目にPHP研究所から『退職金、黙っていてはもらえない!』を出しました。これが私にとっては初めてのビジネス書です。
――Amazonの1位にもなりました。そこからビジネス書の路線へと広がっていったのですか?
萩原京二氏: 4冊目の本をディスカヴァー・トゥエンティワンから出しました。その前に、土井英司さんという出版プロデューサーが主催されている「ベストセラー作家養成コース」の第1期生に応募して、そこで著者としての心がまえからプロフィールの作り方から、いろいろと教えていただきました。ディスカヴァーさんから『職場の法律知識を学ぶ』を出したあとに『マインドマップ資格試験』につながって、それが売れたことで、またほかの出版社から声をかけていただくようになりました。
著書一覧『 萩原京二 』