萩原京二

Profile

1963年生まれ。早稲田大学法学部卒業。(株)東芝、ソニー生命(株)などを経て、1998年、社会保険労務士として独立。平均年商500万といわれる社労士業界で、顧問先を持たず、職員を雇わずに、たった一人で年商1億を稼ぎ出すカリスマ社労士。常に時代を先読みする予測力と、緻密なビジネスプロセス設計による独自の経営自動化ノウハウを持つ。また、社労士業界における次世代リーダー育成のために、受験から独立開業までの指導・アドバイスも積極的に行い、全国に350人超の社労士ネットワークを持っている。著書に5万部超の『マインドマップ資格試験勉強法』をはじめ、『考えがまとまる!マインドマップ実戦勉強法』などがある。

Book Information

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ビジネスの波を読み、経営者の夢を支援する



大手電機メーカーで営業経験を積んだあと、生命保険の営業マンに転身。その後、社会保険労務士の資格取得後に独立開業し、一般的な社会保険労務士の年商の20倍をひとりで売り上げるカリスマとして知られる萩原京二さん。常に疑問を自分で確かめながら解明していく姿勢は真摯でありどこか軽やか。人生のいくつかの決断をしなやかに選択する萩原さんに、仕事と本について伺いました。

経営ニーズに社労士の技が生きる


――萩原さんは、社会保険労務士の資格をお持ちですが、普通の社労士とは少しちがったお仕事をなさっていると伺います。どんなお仕事の内容か、教えていただけますか?


萩原京二氏: 私の仕事をひとことで言うと、人事関係のコンサルタントとでも言えばよいでしょうか。資格としては社会保険労務士なのですが、一般的に知られている社会保険労務士というよりはむしろ、お客さまに対して経営コンサルタントのようなかかわり方をしています。コンサルタントであり、その専門が賃金や人事の領域だという感じです。主に中小企業の経営支援が仕事で、具体的には、会社の成長や経営者のビジョンの実現をお手伝いしています。そこに役に立つことに、私の資格や知識を生かす意味があると思っています。

――具体的には、どのような部分での支援をなさるのですか?


萩原京二氏: 例えば、会社は法定福利といって、社会保険料を納付する義務を負っています。これは、給与に応じて労使折半で負担するのですが、会社の規模が大きくなって雇用する社員の数が増えて、社員の給与が上がるほど、会社にとっては大きな負担となります。最近は景気もよくないので、この問題に悩んでいる経営者の方はたくさんいらっしゃる。私は、この社会保険料を安くする方法をご提案しています。それも、社員の方の年収や給与を変えずに、給与の支払い方法を変えるだけで、社会保険料は驚くほど安くできる。でも、ほとんどの方は、その方法をご存じありません。

――社会保険料が減ると、会社にとってはどんなメリットがありますか?


萩原京二氏: 社会保険料は、会社にとっては経費であり、それも固定費です。固定費の一部が安くなるということは、経費削減で利益が出ることになるので、会社の財務体質が改善されます。利益が出ると、銀行とか取引先、株主などに対して会社の対外的な信用が高まり、それが社員の安心して働ける環境を整えることにつながっていきます。会社にも働く人にもメリットがあるのです。

――萩原さんというと、セミナーを頻繁に開催されていることで有名です。これまでの動員企業数は、どれくらいですか?


萩原京二氏: おそらく700 社は超えていると思いますが、昨年から行っている社会保険料適正化セミナーには、本当にたくさんの方にお越しいただいております。経営者向けに行う場合も多いのですが、全国各地で開催するたびにおかげさまで20社とか30社の枠が毎回満席となって、皆さんの経費節減のお役に立つことができています。

営業マンとして生命保険の「正しい売り方」を模索


――今のようなコンサルタントとしてのお仕事を始められたきっかけは、どんなところにあったのですか?


萩原京二氏: 大学はもともと早稲田の法学部で、卒業してから10年ほど東芝というエレクトロニクスの会社におりまして、海外営業の仕事をしておりました。具体的な仕事内容は、コンピューターの記憶装置の営業です。ハードディスクのほかに、当時はフロッピーディスクもありましたので、フロッピーディスクの起動装置やハードディスクとかCD-ROMなどの部品をパソコンメーカーに供給するのが仕事でした。特に、当時はパソコンの最後の組み立てにあたる生産基地のほとんどが、台湾をはじめとするアジア地域にありました。私の仕事は、台湾や韓国、シンガポールあたりのお客さんに対しての部品販売でした。

――大手企業に10年間もいらっしゃると、会社での責任やポジションなどに変化はありましたか?


萩原京二氏: 9年目に主任になって、海外留学もさせていただきました。辞める直前にはアメリカの駐在員としての辞令もいただいた。

――海外留学はどちらへ行かれたのですか?


萩原京二氏: アメリカのフロリダに3ヵ月ほどおりまして、ホームステイしながら語学学校で英語を勉強しました。ちょうど年末年始をはさんだ時期にあたっていたので、楽しい時間を過ごすことができました。

――順調なお仕事があったにもかかわらず、次の新しいステージに移られたことになりますが、何かきっかけがあったのですか?


萩原京二氏: 仕事自体には非常に満足していましたし、会社にも評価していただけました。ですから辞める必要はまったくありませんでした。でもプライベートでちょっとした事件に遭遇してしまって、当時のサラリーマンの給料以上にお金が必要なことがあって、「ここはひとつ一獲千金」というわけではありませんが、ソニー生命という完全歩合の生命保険の営業に転向しました。

――大企業の安定したポジションを捨てることに不安はありませんでしたか?


萩原京二氏: 東芝時代にすごく尊敬している先輩がいらして、実は私がソニー生命に行く2年前に、その方がすでにそちらに転職をされて、ご活躍されていた。そこでは稼げるとも聞いていたので、ある意味ではその方を頼って入れていただいた押しかけ入社のような面はありました。

――その後、どんな経緯で独立して事務所を開設することになったのですか?


萩原京二氏: お客さまに生命保険を売るにあたっては、なるべく正しい形で売りたいという気持ちがありました。「正しい」というのは、例えば、普通のサラリーマンの方が病気をすると、社会保険から給付が受けられる。健康保険から傷病手当金が出ますし、もし死んでしまった場合にも、厚生年金から遺族に対して遺族年金が給付されます。社会保険労務士というのは、そういった社会保険を扱う資格です。生命保険は、社会保険で不足する部分を民間の保険でどう補償すればよいかといことを考えて加入するものなので、そのふたつの保険の特性をきちんと踏まえて売るのが正しい売り方ではないかと考えました。それから社会保険労務士の勉強をすることになりました。

専門家からベストセラー作家へ


――社会保険労務士は難関ですから、資格を取るには、かなり長時間の勉強が必要でしたか?


萩原京二氏: 一般的に800時間から1000時間の勉強が必要と言われています。ただ、それだけの時間数を勉強に充てると、必然的にお客さんと会う時間が少なくなって、要は売り上げが上がらないので収入が減ってしまうのが難点で、結局会社を辞めることになりました。もっともその資格取得の経験が『マインドマップ資格試験勉強法』という本につながりました。実際に、あの本を読んで書いてある通りに実行したら合格したという方がけっこういらっしゃったのはうれしかったです。

――なぜ本を書くようになったのですか?


萩原京二氏: 一番はじめは、社会保険労務士の資格を取って1999年に開業してすぐ、ある方からお話をいただいて、翌年くらいに総務や人事についての本を書きました。その後もう1冊、ある方と共著で実務書を出しました。でも、本を出すなら売れる本を書きたいという希望があって、3冊目にPHP研究所から『退職金、黙っていてはもらえない!』を出しました。これが私にとっては初めてのビジネス書です。

――Amazonの1位にもなりました。そこからビジネス書の路線へと広がっていったのですか?


萩原京二氏: 4冊目の本をディスカヴァー・トゥエンティワンから出しました。その前に、土井英司さんという出版プロデューサーが主催されている「ベストセラー作家養成コース」の第1期生に応募して、そこで著者としての心がまえからプロフィールの作り方から、いろいろと教えていただきました。ディスカヴァーさんから『職場の法律知識を学ぶ』を出したあとに『マインドマップ資格試験』につながって、それが売れたことで、またほかの出版社から声をかけていただくようになりました。

本は身銭を切る価値のある投資


――萩原さんご自身がお読みになる本や、印象に残っている本はどんなものですか?


萩原京二氏: 読書に関しては、小説よりは実務書やビジネス書などがどうしても多くなります。最初に衝撃を受けたのは『7つの習慣』あたりですかね。それまでそういう本をそれほど読んでいなかったんですが、読んでみて、社会人としての考え方の基本を学びました。いろんな面でのバランスを取らなきゃいけないということに気づきました。仕事だけやっていてもだめだし、家庭のことも健康のことも、バランスよく考えるという視点を教えてもらった本です。
その後は、実務に直結する本が多くなって、特に経営戦略系やマーケティングに関するものを読んでいました。営業マンをやっていた頃は営業の本も読んでいました。最近はまた営業に力を入れているので、フランク・ベドガーさんの『私はどうして販売外交に成功したか』という本を読んでいます。そういう意味では、本は、ノウハウを学ぶと同時に、自分をやる気にしてくれ、目標達成や願望実現の手助けになってくれています。

――ご執筆の参考として本を位置づけている場合も多いですか?


萩原京二氏: 自分で本を書くために、当然参考資料として当然類書をたくさん読んで、ほかの本でまだ語られてないことは何かを調べます。また、何かを語るにあたっては、自分の経験に基づいて自分のフィルターを通して話をした方が説得力が出ると思いますので、1冊の本を書くにしてもそれなりに労力をかけるようにしています。そういう意味では、例えば1冊250ページ程度の本で、中身の濃いものが1500円ぐらいで買えるのは、安い投資ではないでしょうか。セミナーで教えてもらうとしたら、費用として30万円から50万円も払わなければいけないことになります。それがわずか1500円で、うまくいった人のノウハウを手に入れられるとしたらこんなに安い投資はありません。身銭を切る価値がありますし、著者に印税が還元されるためには、読者には、いわゆる古書でなくぜひ正価で買っていただきたいですね。

――2007年に出された『職場の法律知識を学ぶ』というご本では、原稿をダウンロードできる特典がついていました。やはり電子書籍を意識していらっしゃったのですか?


萩原京二氏: だいたい本を出す時には、プロモーションを考えていろいろな試みをしますが、当時はそれほど電子書籍がうんぬんされる時代ではなくて、いわゆるキャンペーンとしてダウンロードサービスを行って、マーケティングの参考にしていました。私だけではなくて皆さんやっていらっしゃいましたし、そういう意味ではいわゆるPDFファイルのようなものを気軽に読める電子書籍は便利だと思います。

――今、iPadやKindleなどの端末で電子書籍をお読みになることはありますか?


萩原京二氏: Kindleは使っていませんが、iPadは使っています。主に、仕事関係のメールのやり取りなどが多くて、iPadで電子書籍は読みません。今の若い方は当然電子書籍が主流になっていくと思いますから、出版社も著者もそこを意識して情報発信していかないといけないとは思います。私にも高校3年生の子どもがいますので、そういう世代は好き嫌いや慣れの問題として、電子媒体に親しみがあるようです。

――ご自身はまだ紙媒体派ですか?


萩原京二氏: どちらかというと、実際にページをめくって読むのが好きな方です。一時期、神田昌典さんのフォトリーディングという速読の講座を受講していて、ページを写真のようにイメージとして取り込むのですが、五感を使って感じる部分を大切にする。ですから本を手に持ってページをめくるというのがいい。
電子書籍の最大の利点は、iPadなどに大量の本を詰め込んで持ち歩ける点です。仕事に必要なノウハウ本などがそれこそ何百冊も、いつも持ち歩けて好きな時に読めるのは魅力的だと思います。

ビジネスも波を読む


――お仕事をなさる上で、どういう時に喜びを感じますか?


萩原京二氏: 先ほどお話したように、経営者をターゲットとしていますと、目標達成とか願望実現の支援にも仕事が広がっていく。もともと、自分でも目標を達成したり、願望を実現することにはかなりの執着があるものですから、例えば資格試験に合格するのもひとつの目標達成でしょうし、経営者の方が経営ビジョンを実現するのもひとつの目標達成です。そういう意味から自分のミッションをひとことで表すと、目標達成を支援することだと思います。

――大変難しいお仕事だと思いますが、特に苦労される点や、仕事をする上で大切にしたい点はどういったことですか?


萩原京二氏: 今は自分のしたいことをして、土日も楽しく仕事をしています。大切にしているのは「楽しむこと」です。
ちょっと話がずれますが、私はずっとサーフィンをやっていて、大学時代はサーフィン部の部長もしていました。サーフィンというと、皆さんはきっと、大きい波から滑っていくのが爽快だと思われるかもしれませんが、私のサーフィンはちょっとちがう。というより、日本ではそんなに大きな波は立たなくて、小さい波で波乗りをすることもあって、そこにいろんなラインを描きつつ、その波をどう攻めるかとか、波の崩れ方によっていろんな技がある。波も動いているので、波がどういうふうに動くのかを予測して、そこに技を仕掛けていくと、波のタイミングとぴたっと合った時、すごい技がバチッと決まる。その時が私にとっては一番快感を感じる瞬間です。それが楽しくてサーフィンをやっていたようなものです。



今は、実際のサーフィンにはあまり行きませんが、ビジネスの世界で波乗りをしていると思っています。これから世の中がこのように動くから、こういうふうに仕掛けたらきっとうまくいくのじゃないかと考えている時が一番楽しい。予測して仕掛けて、それがぴったり読み通りになる時に一番満足感が高い。ですから、将来的には、本物のサーファーが教えるビジネスサーフィンみたいな本も書けるかもしれません。

その人に本を書く資格があるかどうかが重要



萩原京二氏: 世の中にはいろんな本があって、ベストセラー以外に、それほど売れてなくてもよい本がたくさんあると思います。私自身は、このところ2年ぐらいは、あまり書きたい内容がないというか、自分にまだ書く資格があるテーマが見つからない。たぶん、本というのは何を書くかではなくて、誰が書くかだと思います。誤解を恐れずに言うと、中身よりもそれが大事になる。なぜその人がその本を書く資格があるのかを問われる部分も多いと思います。

――具体的にはどういったことですか?


萩原京二氏: 例えば、サッカー日本代表チームのキャプテンの長谷部誠さんが、『心を整える』という本を書かれましたが、あれは長谷部さんが書くからいいのであって、そんなにびっくりするほどすごいことが書かれているわけでもない。もしかしたら、私でも同じようなことは書けるのかもしれない。ただ、「確かに長谷部さんだったら、『心を整える』ということについて書ける人だよね」っていうふうに皆さんに思ってもらえるような本でなければ、たぶん出す意味はないし、出しても売れないだろうと思います。何でも出せばいいということではなくて、「なぜ自分がこのテーマで書かなければいけないのか」とか、「今なぜ世の中にこのことを伝えていかなければいけないのか」という必然性がなければ、本を出しても仕方がないのではないでしょうか。今の私は、思い入れを持って書けるテーマが少しずつ見え始めてきたところなので、1、2年のうちにまた頑張って本を書きたいと思っています。

――ご執筆を含め、今後のお仕事のビジョンをお聞かせください。


萩原京二氏: 私が何を伝えられるかということと、それが皆さんにどのように役立つかということをしっかり考えなければいけないと思っています。自分自身のキャリアを考えても、大学を卒業して大手の上場会社に約10年いて、どういうわけか完全歩合の生命保険の営業マンになり、個人事業主となって社会保険労務士の資格を取得して独立をして、今は経営者として会社を作っています。これから社員も少しずつ増やしていこうと思っていますが、今後経営者として会社を運営していくにあたって、これまでいろいろなキャリアを経験したことが自分の強みになってくると思いますので、そのことを、例えば、これから就活をして社会に出ていく学生さんに伝えていくこともしたいと思います。最初の就職が決してゴールではなくて、いろんなキャリアの作り方があるということです。いい大学を出ていい会社に入るのがゴールだと思われている方も多いと思いますが、そうではなくて、その場その場でいろいろ考えて先を見据えながら頑張っていけば満足できるキャリアを手にすることもできる。そういう働き方があるのだということを伝えていきたい。もちろん、自分にそれを語る資格ができるまでもう少し熟成させたいと思います。

――そのお言葉も萩原さんが、有名な大学や上場企業に実際に身を置かれたご経験があるから言える部分もあるのではないでしょうか?


萩原京二氏: いきなり自分で事業を起こして起業しようということではなく、大きな組織で働くことにも非常に重要な意味があります。ただ、これからは個人の時代になっていきますので、特に組織の中では、私と同世代の45歳以降の方はけっこう厳しい時代になると思います。だから、サラリーマンを辞めて次の選択をしなければならないことも、人生においては出てくるかもしれません。その時にいろんな考え方が必要になってきます。大企業とはちがう働き方、例えば独立するとか、中小企業で働くよう路線変更する場合、考え方そのものを変えなければならないことになる。そのあたりもまたお伝えしていきたいと、漠然と考えています。

――今の若い人は、例えば就職できたとしても、長続きせず、3年以内で会社を辞める人たちも多いですが、そういった人に何かメッセージはありますか?


萩原京二氏: やはりその人なりの人生のゴールやビジョンなど、自分の行きたい場所がある。その一方で、現実があって、両者には当然ギャップがある。では、その目標の場所に行くためにはどうすればいいか。今あるギャップがどうすれば埋まるのかをよく見据えて、そのために必要なことが何なのか全部洗い出して、1つ1つ確実にスケジュールを立てて取り組んでいく。つまり足りないものをちゃんと1つ1つ身につけていってゴールに向かうことが大切です。
資格試験の勉強についての本でも書きましたけど、まずゴールに向かってやるべきことを明確にしてそれをスケジューリングしたらあとは淡々とそれをやるだけです。もっとも、計画を実行することも、それはそれで大変で、モチベーションを維持するためにどうするかなどの問題もいろいろあるにはありますが、目標実現のためには、ごまかしはききません。行きたいところがあるのなら、必ずそこに向けてやるべきことがたくさんあって、それを全部1つ1つつぶしていかないとそこに行けないというのが基本的な私の考え方です。楽してお金がもうかることもあまりないので、そういう意味でもたくさん本を読んで、勉強したりしていただくとよいと思います。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 萩原京二

この著者のタグ: 『コンサルタント』 『人事』 『ノウハウ』 『留学』 『転職』 『社労士』 『経費』 『サーフィン』 『勉強』

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