川西諭

Profile

1971年、北海道生まれ。 横浜国立大学経済学部卒業後、東京大学にて経済学博士を取得、 現在、上智大学経済学部教授。主な研究分野は、応用経済分析・金融論。 行動経済学会理事も務めている。 2009年の「ゲーム理論の思考法」(中経出版)をはじめ、「経済学で使う微分入門」(新世社)、 「図解よくわかる行動経済学」(秀和システム)、翻訳書に「行動ファイナンスの実践投資家心理が動かす金融市場を読む」(共訳、ダイヤモンド社)ほか、精力的に執筆している。

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読書家の父が勧めた『キャプテン』


――小さな頃から、教えることはお好きでしたか?


川西諭氏: 小学生ぐらいから近所の小さい子などに、自分が教えてもらったことを教えたりしていて、その頃から教えるのは好きだったようです。僕自身は高校1、2年の頃は、教育学部に進みたいと思っていましたから、大学教員にならなかったら小中学校、高校の先生になっていたかもしれません。でも父は、教員になることには反対していました。

――なぜ反対をされていたのでしょうか?


川西諭氏: 父は富山県のリッチェルというプラスチック用品、園芸用品の会社で営業マンをしていまして、その会社は日本でガーデニングブームが起こった時に、日本の園芸用品の業界の中でもそれなりの地位を築いたそうで、父は僕を営業マンにしたいと思っていたようです。

――小さな頃はどのような本を読んでいましたか?


川西諭氏: 実は本を読むのが苦手で、夏休みの読書感想文に関しては、「はじめに」と「おわりに」しか読まないような子でした。どちらかというとマンガの方が好きで、ちばあきおさんの『キャプテン』には影響を受けました。中学の野球部で、キャプテンが代替わりしていって、1つの中学校の野球部がどういう風に強くなっていくかを追いかけていくマンガです。一番最初のキャプテンの谷口少年の高校時代を追ったのが『プレイボール』で、スポーツの問題でありながら1人の少年の生き方のようなものが映し出されているマンガでした。

――印象に残っているストーリーはありますか?


川西諭氏: 主人公の谷口少年はあまり野球が上手ではなくて、すごく強い中学校の2軍の補欠だった。その少年が普通の公立の中学校に転校して野球部に入るんですが、誰もが知っている有名中学のユニフォームを着ているから、実際は下手くそなのにその中学校の部員たちは期待するわけです。そういう中で期待に応えるために、練習が終わってから家で猛特訓をして、少しずつ上手くなっていって、最終的にはもともといた中学校と戦って勝ってしまうのです。このマンガは、実は父から「面白いぞ」と勧められたんです。父はすごい読書家で、本棚には営業関係の本がたくさんあって、マンガは『キャプテン』くらいしかなかった。僕は営業関係の本は結局ほとんど読まなかったけれど、読書家の父をすごく尊敬していましたので、父のもっていた『キャプテン』に影響されたのかもしれません。経営に関しても、高校生、大学生になってから父が話をしてくれて、それが僕が経済に興味をもつきっかけになりました。

「フューチャーセンター」に可能性を見出す


――最近読んだ本ではどのようなものが印象に残っていますか?


川西諭氏: 最近読んだ中で一番影響を受けた本が『フューチャーセンターをつくろう』です。僕はそれまでフューチャーセンターは知らなかったのですが、ワークショップ型の対話で問題解決をする方法です。僕もそういったことは研究で重視していて、教育の方でもワークショップ型授業という活動に興味があったので、ドンピシャといった感じでした。今年の2月から、上智大学にフューチャーセンターを作るプロジェクトを始めています。もともと私と2人の職員の方の3人で始めて、メンバーを集めるために説明会をしたり、ファシリテーションに興味のある人に講習会をしたりして、少しずつメンバーを増やしていって、今は定期的に関わってくれるメンバーが20人くらいになりました。

――フューチャーセンターでは、どのような活動をされているのでしょうか?


川西諭氏: フューチャーセッションというものを今年2回開催しています。参加者が35人ぐらいの小さなセッションですが、未来志向で議論することと、多様な人をセッションに招き入れることに特徴があると思います。大学の中の問題と大学の周囲、大学外の問題も議論できるようなセンターを作ろうと思っているので、その問題に関わるであろう人を、なるべくたくさん招き入れて、ワークショップを行おうとしています。大学の問題であれば教員と職員、学生抜きには語れませんし、卒業生の人たちもすごく重要です。それから、上智大学は千代田区にありますが、線路の向こうは新宿区といったように、ちょうど区の境で、グラウンドは新宿区だったりするんです。そういう地域の方とのつながりに大学がどのような役割を担っていくかと考えた時に、ただ単に研究教育だけをやるのではなくて、地域に開かれていて、地域の課題も解決する大学というのが求められているという結論にたどり着きまして、その受け皿になるためのプロジェクトも進めています。

――中心的なメンバーはどういった方でしょうか?


川西諭氏: 最初は予想していませんでしたが、一番頼りになっているのが卒業生なのです。フューチャーセンターを作るということを上智大学のFacebookで流したところ、面白そうだということで卒業生がセッションに来てくれて、中心的に動いてくれています。僕もワークショップの運営の仕方など、ファシリテーションなどを勉強しながらやっていますが、ワークショップ型の組織で課題解決をしていこうという活動は日本中で行われていて、卒業生の中にも運営しているという人たちが数名いらっしゃって、そういう人たちが応援してくれて、本当にありがたいです。

著書一覧『 川西諭

この著者のタグ: 『大学教授』 『デザイン』 『経済』 『教育』 『経済学』 『金融』 『ワークショップ』 『価値』

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