川西諭

Profile

1971年、北海道生まれ。 横浜国立大学経済学部卒業後、東京大学にて経済学博士を取得、 現在、上智大学経済学部教授。主な研究分野は、応用経済分析・金融論。 行動経済学会理事も務めている。 2009年の「ゲーム理論の思考法」(中経出版)をはじめ、「経済学で使う微分入門」(新世社)、 「図解よくわかる行動経済学」(秀和システム)、翻訳書に「行動ファイナンスの実践投資家心理が動かす金融市場を読む」(共訳、ダイヤモンド社)ほか、精力的に執筆している。

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専門研究が、編集者によって本になる


――川西さんは電子書籍をお使いになっていますか?


川西諭氏: 本は冊子で読みたいというのがあるので、電子書籍も読みましたが、まだ増えていかないです。ただ、研究に関わる本は研究費で買えるという点で僕らはすごく恵まれていて、普通の方と比べると本が買いやすいから、本をつい買ってしまいますが、スペースの問題はあります。電子書籍で読める本は電子書籍にしていくといったように、これからは使い分けしていくようになるとは思います。

――研究論文などは電子で読まれていますか?


川西諭氏: アカデミックな世界では結構スタンダードで、論文はほとんど電子化されています。パソコンやiPadなどで、画面上で読むという人ももちろんいますが、私の知る範囲だと、出力して、どんどん書き込んで理解していくという人が多いと思います。

――川西さんご自身のご著書についても伺っていきます。アカデミズムの世界からゲーム理論などに関する一般向け書籍を出されるようになったきっかけを教えてください。


川西諭氏: ゲーム理論の本については、銀行員の方たちを対象に短いレクチャーを頼まれたことがあって、そこで話したことを、もっと色々な人に知ってほしいという思いから、出版することになりました。ゲーム理論の本を出したいと思っていた編集の方が、それを書ける人を探していた時に、今も一緒に本を書いている日本大学の山崎福寿先生が僕を紹介してくださって、お話をいただきました。どういう本にしようかというところを編集の方とよく話をさせていただいたので、僕としても書きたい内容が大体盛り込めたと思います。

――本作りにおいて、編集者の役割はどういったところにあると思われますか?


川西諭氏: 企画の価値を最初に発掘して、それを本にするという仕事をしてくれるのが編集の方ですから、編集者がいないと本は生まれません。書き手の中には、本のイメージまで自分で作り上げて自分で自分の本を印刷するから、編集者はいらないという人もいるかもしれません。でも、アイディアを形にして、いい本を作っていくには、やはり編集者が必要だと僕は思います。本のクオリティーは編集者の力量によるところがあると思います。特に最近の本はレイアウトにもかなり自由度もあり、図などがたくさん入っていますし、ただ文字だけを載せているというわけではありませんから、読みやすい本を作るということに関しては、編集の方の経験やセンスが重要になってくると思います。

経済学は役に立つ学問だと伝えたい


――執筆への想いはどういったことでしょうか?


川西諭氏: 行動経済学や経済数学の本も書いていますが「経済学はすごく役に立つ学問だということを伝えたい」という思いは共通しています。それがあまり広く知られていないと感じていますし、同僚の経済学者たちの中にも「経済学なんか勉強していても役に立たない」と言う人もいます。でも僕はそれは違うと思っていて、学生たちにも役に立つことだとずっと教えています。ただ、どういう風に役に立たせるか、どうやって使うのか、どうやって応用したらいいのか、というところが分からないと使いようがないわけです。数学も同じで、計算問題はできても応用問題が解けないと、なんの役にも立たないんです。それは我々にとっては死活問題で、我々がやっていることの意義や価値を一般の人や学生たちが見出してくれなければ、我々の存在価値も低くなり、仕事がなくなってしまうといった危機感があります。

――「教える」ということに、並々ならぬこだわりがあるのですね。


川西諭氏: 教えている人間が、自分たちの教えていることに価値を見出せないようでは駄目ですので、そこを変えたいという思いがずっとあります。もちろん素晴らしい論文をどんどん書いて、ノーベル賞を取るといった方向でも「経済学はすごい」となるとは思うのですが、すでに分かっていることの中にも、素晴らしい知見がたくさんあることを僕は伝えたいのです。経済学に限らず、あらゆる学問は、先人たちの大いなる遺産であって、それを知らないで過ごしてしまうのはもったいない。それを皆さんに分かりやすくお伝えすることが大事なのだという思いで、ゲーム理論の本も行動経済学の本も、数学の本も書いています。学生たちも、素晴らしい知恵を、1つでも2つでも自分のものにして、それを生かして、昔の人たちにはできなかったようなことをしてほしいです。



――最後に、今後の展望をお聞かせください。


川西諭氏: 今書いているものの1つは金融の本で、おそらく年度内に出ると思います。僕の大きい研究の柱としてやってきた金融のことで、一般の人にもっと知っていただきたいことがたくさんありますので、それを今、書かせていただいています。
 ゲーム理論や行動経済学についても、社会の様々な問題に対して使えると僕は考えているのですが、今までの本だけでは十分にそれが伝わっていないというご意見もいただいているので、そういう事例などを紹介する形の本を考えています。経済学を使うとこういう解決策が出てくるよ、ということを皆さんにアピールして、「経済学なんて使えない」と思っていた人たちの見方が少し変わってくればいいかなと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

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この著者のタグ: 『大学教授』 『デザイン』 『経済』 『教育』 『経済学』 『金融』 『ワークショップ』 『価値』

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