本の特性を考えた、ビジュアルとレイアウト
――本を書く上で、何か大切にしてらっしゃること、もしくは心がけていることはありますか?
内田治氏: 当たり前なんですが、出来るだけ分かりやすく書く事ですね。それと、講義しやすい本と、講義しにくい本って、あるんですよ。例えば「20ページを見なさい。つぎ、ちょっと17ページに戻りなさい」というのはとても講義しにくい訳です。ちょうど良い感じで第1章が終わっても第2章が変な所になるのも駄目です。そこはあえて余計なこと書いてでも埋めて、第2章が先頭へ来るようにするとか、そういう部分には気を遣います。「20ページの5行目まで終わりました。休憩にしましょう」っていうのと、「今ちょうど20ページで終わりました。休憩後21ページから行きましょう」とでは違うんですよ。20ページかっちり終わるとやっぱり休憩に入れるんですよ。
――講義のしやすさを考慮した、先生ならではの工夫ですね。
内田治氏: 実は他人の本の方が講義はしやすいんですよ。自分の本というのは、自分の中では精一杯の表現をしていますから、それ以上は何も言うことがないんですよ。だから、極論を言えば、「後は読んどいて」で終わってしまうんです。本には自分なりに知っていることは全てを書いているので。他人の本ですと、「ここがちょっと分かりにくいから、黒板で説明します」と、もっていけるんです。
たっぷり時間をかけて、本を作りたい
――理想とする編集者はどういった人でしょうか?
内田治氏: 私は編集者のかたには恵まれています。幸い、どこの出版社の方も色々と助けて下さっています。理想というよりも、要望という意味で申し上げます。それは、私が良いと思う、書きたいと思う本と、実際に売れるかどうかは別なんですよね。「そんなの売れるのか」なんていう思いで作ったものが意外と売れて、「この本を書いてみたいんだよ」って自分から売り込んで書かせてもらった本が売れなくてっていうのを味わってきていますので。やっぱり書き手側が書きたいっていうものを、売れる形にどう持っていくか、というのを遠慮せずに言ってくれる人が理想ですね。
――今後の展望お聞かせ下さい。
内田治氏: 4年くらい、たっぷりと時間をかけて1冊作ってみたいなと思っています。その本は、売れる、売れないは別として。ただ、出版社は売れないものには飛びついて来ないので、ある程度折り合いを考えて作りたいなと思っています。
――どんな本を書きたいと考えてらっしゃいますか?
内田治氏: それはやっぱり統計の本です。しかも類書のないもの。もうすぐ60冊目になるのですが、何冊書いたかなんてどうでもいいと思っていましたが、節目が良くなると数字が気になったりするので、早く60冊目を書き、そのあとはじっくり腰を据えた本を1冊書きたいなと思っています。もう1つは洋書を1冊くらいは書きたいなと思っています。海外の文献はタイトルの付け方がとても上手く、絶妙に中間的なタイトルを付けるんです。そういう部分では、海外の文献がとても参考になるので、そういうことも含めて1冊位は洋書を書きたいなと。英語は苦手ですけど、今は良い自動翻訳機もあるので、翻訳の専門家に添削してもらいながらやればできるでしょう。英語を日本語に訳した本はすでに1冊あるので、今度はこちらが発信した本を1冊作りたいなと思っています。特に品質管理なんて日本が本家ですから。統計は本家じゃないんですが、そういうことも、展望としてやっていければ良いと思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 内田治 』