電子書籍は研究のための電子ジャーナル購読がメイン
――発信者、書き手として、電子書籍に対する思いはございますか?
桜井久勝氏: 自分ではほとんど使ったことがないので、長所短所がよくわかっていないんです。私がユーザーとして使う場合は、勤務先の大学図書館へアクセスして、電子ジャーナルを読む時です。わざわざ図書館へ行かなくても、有名雑誌の論文は全部読めるし、ダウンロードして印刷して研究室で読むこともできます。私はそれぐらいしか使っていません。昔は図書館まで借りに行って、紙にコピーをして、それがどんどんたまっていくという感じでした。電子で便利なのは、キーワード検索ですね。この分野で今までどのような論文が書かれてきたのかというリストアップをすることができることです。その中から取捨選択していけるので、重要なものの見落としがなくなりました。昔は、資料の有る無しといった経済力のようなものが、仕事のできに影響してきていましたが、今は、資料の入手という点に関しては皆平等ですので、より一層競争が厳しくなったのだと思います。競争が厳しいということは、個人にとってはあまり幸せではないかもしれませんが、ユーザーにとっては、競争してより良いものが生き残った方が良いのではないでしょうか。
――電子書籍に対して期待することはありますか?
桜井久勝氏: 自分の博士論文を本にして日経賞をいただいたことあるんですが、ありがたいことに、今でもその本を読みたいと言ってくださる方がいらっしゃいます。しかし今はもう手に入らないのです。もし電子化されると、そういうこともなくなるのではないかと思っています。あとは、自分が電子ジャーナルで論文を読む時にも思うんですが、離れたページをめくる時には、どのようになるんでしょうか。例えば20ページくらいの論文の場合、数式で使う記号は前の方で説明されているじゃないですか。後ろの方の離れた数式の中の記号を見て、「これってなんだったんだろう」と振り返る時に、紙の雑誌だったら、ペラペラめくりながら見比べられます。それが電子ジャーナルだと、随分さかのぼって行ったり来たりしないといけない。それが不便だと感じるので、そういうことが改善されていけばいいと私は思っています。
読者のニーズに応えるための会計の本、趣味の島巡りの本も書いていきたい
――今後、著作に限らず様々な活動も含めて、どのような展望を描かれていますか?
桜井久勝氏: 今、私の著作を読んでくださっている方がいらっしゃるので、力の続く限りそういう需要に対応していこうと思います。あともう1つが、これは全く仕事と関係なく、完全に自分の趣味の本を1冊、本名ではない名前で出版してみたいです(笑)。
――どのような本をお書きになりたいと考えていらっしゃいますか?
桜井久勝氏: 色々と趣味はあるんですが、旅行が好きで、ここ10年ぐらいずっと、日本全国島巡りをやっています。加藤庸二さんという方が、『日本百名島の旅』という本を出版されています。それから、光文社新書で、斎藤潤さんという方が、何冊か『日本《島旅》紀行』や『東京の島』などを出版されていています。私はそういう紀行モノが好きなので、自分でもそういった本を書いてみたいと思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 桜井久勝 』