小倉広

Profile

大学卒業後、株式会社リクルート入社。事業企画室、編集部、組織人事コンサルティング室課長、ソースネクスト株式会社常務取締役などを経て現職。リーダーシップ開発の専門家として多くの企業組織づくりや人事育成を支援しており、「リーダーシップは生き様そのものである」との考えの元、「人間塾」主宰し、塾長として東洋哲学全般の啓蒙活動を行なっている。著書に『任せる技術』『やりきる技術』(共に日本経済新聞出版社)、『自分でやったほうが早い病』(星海社新書)、『僕はこうして、苦しい働き方から抜けだした。』(WAVE出版)などがある。また、『33歳のルール』(明日香出版)などを通じて、悩める30代を救うメンターとしても知られている。

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コンサルタントから「足を洗った」わけ


――その後、現在のお仕事にもつながる組織人事コンサルティングに携わられますね。


小倉広氏: コンサルティングの仕事は楽しくてしょうがなかったんですが、限界も感じました。僕は1回、コンサルタントから足を洗ったので、今は「出戻り」です。今から15年前、コンサルタントになって3年ほど経ち、外部から会社を変えることの限界を感じているタイミングで、当時のクライアントの中の1社だった、従業員18人の中小企業に転職したのが初めての僕の転職でした。それがソースネクスト、今は東証一部上場している会社です。33歳の時のことでした。

――コンサルタントの仕事に限界を感じられた理由とは?


小倉広氏: 自分がいくら専門知識を駆使してアドバイスをしても、中にいる人が動かなければ会社は決して変わらない、という無力感からです。会社が変わるために必要なことは、我々外部の専門家からのアドバイスは全体の1、2割ほどで、その助言を現場がどれくらい実行するかで8、9割が決まるんです。それで会社が変わったとしても、きれいな絵を描いたコンサルタントが偉いのではなくて、泥まみれになりながらそれを実現する人がカッコいいんだと気づきました。「これまでの自分はなんてカッコつけで、そのくせカッコ悪いのか」ということに気がついたんです。

――そうお感じになったきっかけはありましたか?


小倉広氏: リクルートの友人を見て、それに気がつきました。リクルートには広告を売る系列の代理店があって、当時は代理店の売り上げと直販の売り上げが半々ぐらいでした。代理店はバブルの頃までは上手くいっていたのですが、バブルがはじけた後、経営難に陥る会社が続出していたので、リクルートの社員を出向させて建て直しを図ることになりました。その時、友人の彼は、大手代理店の1社に営業部長として出向することになって、彼が出向前に「コンサルタントとして手伝ってくれないか」と僕に依頼してくれたのです。そこで、コンサルタントの僕はその会社を調査した結果、「経費の使い方がおかしくないか?」、「なぜ、この人がこっちの人よりもたくさん給与をもらってるの?」などときれいごとを言うわけです。すると彼は、「分かった、その通りだね。僕がやるよ」と言って、これまで誰も手をつけなかった、リストラに手を付けることを決めました。「仕事もせずに高い給料をもらっている人に辞めてもらって、若手の優秀な人を登用していく」などと言うのは簡単なんです。でもそれを実行するのは大変なことです。彼は、リストラ役として社員のみんなから嫌われて、自分が泥をかぶって、赤字を黒字に変えていきました。「社長は素晴らしい経営者だ。だから社長を悪者にしてはいけない。自分が嫌われ者になればいい」。そう言って、嫌な役目を一人で引き受け、結果を出していったんです。その時に僕は、彼には勝てない、と感動しました。今まで評論家のようなことを言っていた自分が急に情けなくなったんです。

「裸になるため」の自己改造



小倉広氏: リクルート時代、全国から100人以上の管理職が集まる集会があって、どこかの大学教授に難しい組織論のような話をしてもらったことがありました。終わった後、みんな拍手をして「素晴らしいですね」「中々いい話だった」などと言っていたのですが、ある部長が質問をして、「僕にはさっぱり分からんかった。頭が悪いんですかね?」と言ったんです。一瞬会場がしーんとなった後、ドっとウケて、「実は僕も分からなかった」と、みんなも正直に言い出しました。僕は、さらけ出す人間の大きさに感じ入りました。僕の座右の銘の1つである、河合隼雄さんの「人は成熟するに従い、らっきょうの皮をむくように裸になっていく」という言葉に、その頃出会って「僕は裸になることをしたかったんだ」と。そこから自分改造の始まりです。でも最近は服を脱ぎ過ぎだ、と言われますけれども(笑)。

――「裸になる」といえば、作家デビュー作は『上司は部下よりも先にパンツを脱げ』ですね。


小倉広氏: まさにパンツを脱いだんです。徳間書店の元A編集長が担当してくれたのですが、彼女が僕の生みの親で、今でも彼女をとても尊敬しています。A編集長に「ここまでさらけ出して書いてもいいんですか?」と相談すると、「私は男が真剣に生きる時、きれいにカッコよくというのはうそくさいと思います。泥だらけ、血まみれ、傷だらけになって、はい上がっていく姿にリアリティがある。小倉さんならそれが書けるはずです」と背中を押してくれました。まさに、らっきょうの皮をむく感じで、「ここまで書いたら全部書いてやれ!」と開き直りました。それは今まで書いたすべての本に共通している僕の書き方です。

著書一覧『 小倉広

この著者のタグ: 『コンサルタント』 『コンサルティング』 『心理学』 『生き方』 『働き方』 『営業』 『カウンセラー』

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