宮下規久朗

Profile

1963年、名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業、同大学院修了。『カラヴァッジョ 聖性とヴィジョン』(名古屋大学出版会)で、サントリー学芸賞、地中海学会ヘレンド賞を受賞。ほかに、『バロック美術の成立』(山川出版社)、『食べる西洋美術史』『ウォーホルの芸術』『欲望の美術史』(光文社新書)、『カラヴァッジョ巡礼』(新潮社)、『刺青とヌードの美術史』(NHKブックス)、『裏側からみた美術史』(日経プレミアシリーズ)、『フェルメールの光とラ・トゥールの焔』(小学館101ビジュアル新書)、『知っておきたい世界の名画(角川ソフィア文庫)、『モチーフで読む美術史』(ちくま文庫)など多数。

Book Information

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紙と電子には、両方に役割がある


――執筆活動の原動力は、何でしょうか。


宮下規久朗氏: やはり本が好きということでしょうか。本屋に行くのも大好きですし、図書館に行くのも大好きです。そこで自分の本を必ずチェックしちゃうんです。図書館でも、「私の本はこれだけしかないのか」とか、「あの本が無いな」と、気になって仕方がありません。でも他人の本も興味があるし、新しく出る本は押さえておかないと、ちょっと落ち着かないというような部分もあります。

――どんな本を読まれますか?


宮下規久朗氏: それはもう千差万別で、小説やルポルタージュなど、その時の興味によって色々なものを読みます。美術の本は自分の仕事に結び付いて力を抜けないので、実はあまり読みません。寝る前の本は、宗教や思想の本、それから純粋な歴史学の本です。一見、美術とは関係ない本から、自分の研究や執筆する際のヒントを見つけられることが多いんです。何がどこに繋がるかは分からない。美術史以外の、例えば思想史や歴史の本を読むことでも、美術史を研究する上での大きなヒントや刺激が得られます。感性と知性はどこかで繋がっていますから、美術を学ぶためには、作品をたくさん見ることと同時に、色々な本をたくさん読むべきだと思っています。

――電子書籍について、どう思われますか?


宮下規久朗氏: 悪いものだとは思っていません。必要な情報がすぐに電子書籍で引き出せるのは便利だし、それを使わない手は無いと思います。美術であれば大きい本のほうがいいという意見もありますが、電子書籍だと絵の部分を拡大できるというのは、美術にとってはとても良いことです。ですから親和性も高いし、これから美術の本はどんどん電子化されるんじゃないかと思います。でも、紙媒体も無くなることは無いと思います。先ほどの、美術作品が物としての重量感や手触りが大事だという話と同様に、本もそうだと思うんです。単なるイメージじゃなくて、本としての重量感や手触り、装丁も全部ひっくるめて本が好きという気持ちがあると思うんです。その点では美術と似ているかもしれません。
また、時と場合に応じて必要な方を選べばいいわけですから、本当に本が好きな人は、紙と電子の両方を使うと思います。

――紙と電子、両方に役割があるということですね。


宮下規久朗氏: やはり、いくらAmazonで本を検索、注文できると言っても、本屋に行ってフラフラと見るということを楽しみにしている人は多いと思うんです。年輩の方もそうだと思いますが、神保町の古本街を歩くのを、私もいつも楽しみにしているんです。そういう楽しみって減らないと思うんです。電子書籍ができて、より一層、本の“もの”としての貴重さや面白さが認識されるのではないでしょうか。
本屋さんっていうのも、買うためだけの場所じゃなくて、立ち読みなど、見るための場所になるのではないかと。そういうところに、本屋さんの価値、活路があると思います。

――今後の展望をお聞かせ下さい。


宮下規久朗氏: 死と美術というのはすごく関係があるんです。死というのは色々な人間の文化の原動力になっていますし、それによって美術も色々と発展してきたという背景があるんです。墓廟彫刻というお墓もそうです。お墓の形や遺影など、ちょっと民俗学的な分野に、非常に興味があります。世界のそういった部分を、今、比較してるところなので、そのうち纏めたいなと思っています。その時には、自分が今までやってきた美術の研究も活かせますし、他の美術史家が言えなかったような視点も打ち出せたらいいと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 宮下規久朗

この著者のタグ: 『大学教授』 『考え方』 『アドバイス』 『原動力』 『歴史』 『研究』 『教育』 『本屋』 『美術』 『図書館』

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