――内容は、就職関連などの仕事に沿った内容になるんですか。
城繁幸氏: 就職って意外と少ないんですけどね、雇用とか社会保障とかそっちのほうですね。
――電子書籍の未来について、今後ソフト面が充実したうえでどんどん電子書籍が広まった場合に、出版社の意義というか、今後大事になってくる役割というのはどんなところだと思われますか。
城繁幸氏: 編集力は従来でもありましたけれど、編集力というのがまず1つですよね。もう1つはトータルなプロモート力だと思います。これはもう、活字以外にもアーティストみんなそうだと思うんだけど、トータルでのプロデュースをしないとダメな時代になると思っていて。
――やはり普段本を書かれるときというのは、(出版社と)一緒に作られてますか。
城繁幸氏: そのあたりは、人によるんでしょうけど。一緒に作る人、9割作ってもらう人もいるわけで、だけどそういう人向けにはもちろん編集力って大事だと思うんですよね。私のは、ほとんど全部書き上げて持ち込むタイプなのでいらないんですけど、ただやっぱりある程度のプロモートというかマネージメントは必要ですよね。出版社がいないとすると、自分で広告を出さなくちゃいけないし、交渉も全部やらなければいけないし、あと、窓口ですよね。いろんな取材が来るときの窓口になってくれる。つまりマネージメント的な役割というのが、これまで以上に重要になるというような気はしていますよね。
――1冊執筆するのにかかる時間はどれくらいですか。
城繁幸氏: それは、忙しいかどうかで決まるので、わからないですね(笑)。一般的に期間がどれくらいかかるかというと、大体私は半年くらいです。
――2006年の『若者はなぜ3年で辞めるのか?』も半年くらいですか。
城繁幸氏: あれはもっと早かったですね。4か月で書いて、あれ出すの苦労して、そこから4か月くらい転々としていたんですよね。構想は最初に考えて、それを含めて4か月ですね。
――電子書籍化されて、一般読者として何か変わることはありますか。
城繁幸氏: 読むという行為自体は変わらないと思うのだけれど、電子書籍が底上げになればいいなとは思っていますね。今情報収集という中で、活字から読むということがかなり弱くなっているんですよね。確かにネットも見てるし、いろんなまとめサイトなんかや、twitterを見たり、ブログを読んだりというのもひとつの情報収集だとは思うんだけども、チラチラ流れるものを見ているだけであって、じぃっと見るというものではないので、非常に質が低い。活字がネットに移る中で、そこを埋めるメディアが今のところなくて、情報の質というのが相対的に地盤沈下している気がするんですよね。それを、電子書籍が『いやそうじゃない。電子でもこういうふうにちゃんと体系的に吸収できますよ。』っていう架け橋になるのではないかな?というような気はしていますけどね。
――最後に、人生の転機になった本お伺いしたいと思います。
城繁幸氏: イギリスのコリン・ウィルソンの「アウトサイダー」という本。たぶん今、絶版になっていると思うんですけども。内容は一言でいうのは難しいですけど(笑)。日常生活の中で味わえない充足感というものを非日常の中で味わう人たちの話ですよね。これは本の中では『アウトサイダー』と言ってるんだけども、実はクリエイターとして一番必要なものなんだ、と。それは社会不適応ではないし、こらえ性がないわけでもなくて、それ自体が一つの自由な才能だとわかる。そんな内容ですよね。
――電子書籍のメリットとしては絶版がなくなるというのもありますね。
城繁幸氏: それは大きいですね。結構そのへんも期待しているんですよね。Amazonで高いお金出して買わなくてもいいから。
(聞き手:沖中幸太郎)
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