寺田昌嗣

Profile

1970年12月23日、福岡市生まれ。名古屋大学法学部卒。高校時代に「右脳」「1冊1分」をうたう夢のような速読に傾倒し、7年がかりで自力で速読をマスター。公立高校・中学校で公民科の教師を7年間務めながらさらに7年かけて実用的ビジネススキルとして速読術を完成。人気ベンチャー企業や大手電力会社まで幅広く社員研修を実施。速読メソッドを詰め込んだ近著『フォーカス・リーディング』は2ヶ月で8万部を越えるベストセラー。現在は福岡で古典・名作などの課題図書を楽しむ読書会(博多非凡塾・読書倶楽部)を主催。福岡市を中心とした読書会・勉強会(朝活・セミナーetc)ネットワークの事務局を務める。

Book Information

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『速読』を極めると『ゆっくり読むところに行きつく』というのはラディカルだと思う


――本とのかかわりも含めてお伺いしたいと思います。学生時代までどんな本を読まれていましたか。


寺田昌嗣氏: 学生時代。中学時代は、ひたすら推理小説と星新一ですね。高校時代は角川文庫とあの頃は、ちょっと今の中二病というか青春というキーワードに引っ掛かるものはあらゆるものを読んでたんですね。古典でいえば武者小路実篤の著作とかも「青春なんとか」ってあったらそれを読んでるし、今どきの著者のも読んでるし、あとはミヒャエル・エンデだったりっていうのも読んで、意外と手当たり次第読んでたような気がします。

本が好きだったのか?と言われるとそうでもないんですけどね。中学、高校時代を通じて、図書館から、『あなたよく読みましたね』的なものは届けられてたんで、意外と読んでたのかな?という気はしますが。

――その中で、今でも影響を受けてるなと思われる本はありますか。


寺田昌嗣氏: 今僕の中でですね、自分の中で人生の3冊っていうのを持っていて、1つは大学1年の時に読んだダグラス・ラミスっていう、津田塾大学の政治学の教授が書いた、『影の学問、窓の学問』っていう本ですね。晶文社だったかな。

――どういった内容ですか?


寺田昌嗣氏: 『影の学問、窓の学問』っていうのは、言葉で言いづらいんですけど、物を見るときにラディカルな目を持てと。例えば僕ら伝統に縛られるっていうけれども、伝統は僕らを縛るのか?救うのか?みたいな話であったりとか。学問には世の中の真実に窓を開いてくれるものと、真実を覆い隠して影の世界にとどまらせてしまうものがあるぞ、と。
例えば僕の速読の本も実はタイトル案として、『フォーカスリーディング』と、『ラディカルリーディング』っていうのがあったんですよ。『ラディカルって意味が分からないから』って言って却下されたんですけどね。それぐらい、この『ラディカル』は僕の中のキーワードなんですよ。

速読って何のため?っていう風に考えたら、速読は本の価値、読者の価値を高めるためだ。ってなったら、最終的にじゃあゆっくり読めばいいっていう結論にいってもいいじゃんと。

速読の価値を極めた結果、ゆっくり読むところに行きつきましたっていうのは、ラディカルだと僕は思うんですよ。ラディカルっていう言葉は実は、急進的なっていう意味と、その原義としてですね、根本的な、根源的なっていう意味があるんですよ。根本に立ち返った時に現実を覆すような結論が出てくると。そういう話が宇宙船の例えで、宇宙船の窓際で真実を見てしまった少年と、それを見ないで影の世界、自分たちが実は宇宙船の中にいることすら知らず、そこで生きている人たちと。目指すべきはどっちかという話なんです。

――あと2冊についてはどういった本ですか。


寺田昌嗣氏: あとはですね、これを読んだのは高校時代だったか大学時代だったか覚えていないんですけど、福沢諭吉の『学問のすすめ』ですね。これはもう『一身独立して一国独立す。』という。『自分はまず地に足をついて自力で歩ける人でないと国家は成り立っていかないよ。』って。国家って言わなくても組織は成り立っていかないよっていう考え方を示したもので、個人と社会の在り方を問う内容ですね。感銘を受けたなというところです。

読書は自分の中の『豊かな大地』を育む行為


――なるほど。今ひと月に平均どのくらい読まれますか。


寺田昌嗣氏: これはその時によって全然違って。2年前、3年前。いや違う。例えば起業して最初の数年間は年間200~300冊くらいの話だと思うんですよ。せいぜい。僕冊を何回も読む人なんでそんなに読まないんですけど、一昨年は200冊近く読んでるんですよね。去年はたぶん110冊くらいしか読んでなくて、今年はせいぜい月4~5冊。週1ですね。資料としてとか、トレンドを追っておくためにとか、そんな本は多分もっとあるんですが、純粋に本当に読んだといえるのは週1冊。僕の中で価値がある本として読んでいるのは月2冊。

――どのような読み方をされていますか?




寺田昌嗣氏: 私はですね、読書っていうのは、比喩ですが、自分の中にある、豊かな大地を育む行為だって捉えているんですね。今どきのノウハウ書を読むというのは、よそで作られた作物を採ってくるようなもんだ、と。それは今の自分には役に立つけれども、決して自分の中は豊かになっていないっていう前提があるんですね。

だから自分を豊かにするために、今自分はどんなステージに立っていて、どこを目指しているのか?ということを、要するに今と未来を繋ぐデザインっていうものを明確にしましょうってことですね。今の自分の課題と目指すところを見た時に何をどう読まなきゃいけないのかを明確にすることが前提として必要だ、と。

1冊10分でざーっと流していいとこ取りしていくような収穫して、今の自分を元気にする。あるいは明日のエネルギーを得る。そんな読書をしなきゃいけない時はあるし、地面を耕したりだとかそこを豊かにすることだけにフォーカスして読むこともあっていいと。

そういう意味では、たくさん読んでた時期っていうのは、明日のビジネスを作るためにノウハウを吸収していった時期であり、同時にその中でも自分の大地を耕しているっていう同時進行ですよね。

――読み方っていうのは人それぞれでもそうですけど、その時期に応じて一律ではないということですね。


寺田昌嗣氏: そうですね。だから速読も効率を上げるために使う時もあれば、効果を高めるために使う時もある。つまり、概要をとらえるのにゆっくり読んでいたら捉え損なっちゃうから、その概要をとるにふさわしい読み方をする。その結果『1冊10分しかかかりませんでした。』なのか、『90分かかりました。』なのか。効率を高めたいのか効果を高めたいのかってことをまず明確にして速読を使う。だから僕は速読をできるからと言ってたくさん読むという風にはならない。あくまで自分のデザインの中で、この時期には何を読むっていうのが出来あがってるんですよ。

2009年から5年計画っていうのがあって。もちろん、何を読むかはまだ決まってないんだけど、ここに行きたいからこういう風に人生のステージを上げていかなきゃいけないっていうのがあって、じゃあ2012年を迎えた時に、今年はこういうフェーズだからこういう風に読書を作っていこう、と。つまり読書っていうより自分の成長のデザインですね。

今年は本を読むのではなくて今まで相当ため込んできたもので、今、人に無料でカウンセリングというかコンサルティングをずっとしてるんですよ。経営だったりとか勉強の。そこで自分がどれだけ知識を生きたものとして人に提供できるのか?っていうのを実践しているんですよね。だから今は、読書のプロセスのうち、処理、出力の部分でどんどんどんどん活性化している時と。

私の中の読書というのは、読む行為だけを指すのではなくて読んだものが自分の中に入って、処理されて、自分の行動とか思考の様式が変わることであり、自分の文化まで変えていく行為。読むっていう行為だけしかフォーカスできていないと、どれだけ読みましたか?っていう話になるんだけども、そこの先にある自分の文化が変わっていくところまでフォーカスがいくと、やっぱり今は読んでちゃだめだよねっていう話なんですよね。


『新刊書』は一切追わないし人にも薦めない


――読んだうえでどうするかですよね。寺田さんが今気になる本っていうのはありますか。


寺田昌嗣氏: 気になる本。全然ないんですよね。アンテナ立ててないんですよ。

――じゃあ、何かを読もうと思った時はどういったきっかけでしたか。


寺田昌嗣氏: 今はですね、新刊を一切追わないことにしているんですね。ビジネス書の著書をプロデュースする仕事に関わっていたので、去年まではビジネス書、新刊をずっと追ってトレンドとかを見てたんですけど、今年はそこから一旦離れたんで、追わなくなりました。
もともと僕は、人にも新刊書って基本的に薦めないんですよ。

僕は読書会を3つやっているんですけど、そこに出てくる課題図書っていうのは、もうかなり前に出版されて評価も定まった本。しかも自分が読んで、これはこういう風に読んでもらいたいっていうのが明確な本なんですよね。

例えば僕が読む本を選ぶのは、僕の師匠である土井英司氏あるいは私が注目するビジネスリーダーが勧める本の中で、出版から時間が経過している本ですね。少なくともここ10年以内には出てない本みたいなもの。それからその人が書いた本だったり、その人が参考文献に挙げている本だったりとか、結局自分が尊敬する信頼する人を通じてってことになりますね。

著書一覧『 寺田昌嗣

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