高橋克徳

Profile

1966年生まれ。一橋大学大学院修士、慶應義塾大学大学院博士課程単位取得。野村総合研究所、ワトソンワイアットを経て、2007年、サザンオールスターズや福山雅治らを抱えるエンターテインメント企業「アミューズ」のグループ企業として設立された株式会社ジェイフィールの創設メンバーとなり、組織活性化、人材育成などの研修やコンサルティングを行っている。2010年より現職。『不機嫌な職場』は、28万部を超えるベストセラーに。主な著書に『潰されない生き方』『明日から部下にイライラしなくなる本』『職場は感情で変わる』『人がつながるマネジメント』など。

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「ともに働く喜び」を取り戻せば、日本はきっと面白くなる



ベストセラー『不機嫌な職場』の著者であり、株式会社ジェイフィール代表である高橋克徳さんは、リレーションシップを基軸にした新たなマネジメント論を提唱し、組織の中に「つながり力」を再生し、「ともに働く喜び」を取り戻す支援をされています。今日は高橋さんに、働く事、生きる事、そしてよりよく生きていく上での『読書』について伺いました。

未来の子供達への『想い』がジェイフィール設立のきっかけだった


――株式会社ジェイフィールを設立されたのは、どういったきっかけからでしょうか?


高橋克徳氏: 2007年の春でしたが、わたしが最初に勤めた野村総研時代の上司であり、師匠である野田稔から、新しい会社を一緒に作らないかという話をもらいました。同じように組織開発や人材育成の仕事をしてきた人たちが集まって、人の心からの変革を支援する仕事をもっとやろうと盛り上がりました。議論していく中で出てきた最大の危機感は、このままだと、日本から子供達がいなくなっちゃうんじゃないかということでした。年金問題もあるし、日本の社会の中で大人が元気がなくて、未来への希望や期待を持てない。そして子供達に責任や負担ばかり増えている。これでは、今の子供が大人になったら、日本を捨てて海外へ出ていくんじゃないのかと思った。そうならないために、子供達の心がもっとワクワク、元気になる仕事がしたい、そんな話で盛り上がりました。

――子供たちへの想いが最初のきっかけだったんですね。現在は、ジェイフィールは大人向けの事業ですが、そこへ至るきっかけを伺えますか?


高橋克徳氏: ところが、よく考えてみると、僕らは子供のプロではない。それに、子供が元気になっても、親や大人たちが今のままなら、何も変わらないのではないか。だったら、やっぱり大人に対しての仕事をするべきだという結論になったんです。その時に、「仕事が面白い」「職場が楽しい」「会社が好きだ」という事を、堂々と子供の前で語れるような、そういう大人を増やしていこう。こんな風に「想い」先行でジェイフィールという会社ができました。

――人々の「仕事への想い」を変えていこうと思われたんですね。


高橋克徳氏: この会社を作る時に、サザンオールスターズや福山雅治さんが所属しているアミューズというエンターテインメント企業が出資をしてくれたのですが、その時に、アミューズの方がこうおっしゃった。「エンターテインメントというのは人の心を動かす仕事。感動だけが人の心を打ち抜く。平凡な日常の中で、映画を見たり音楽を聴いたり、ライブへ行ったり芝居を見たりする事で、これでもいいかなとあきらめていた部分を『本当にいいの?』と自分に問いかけたり、『変わらなきゃ』と思う。それがいい連鎖になって、社会が変わっていく。そういう事をやっていくのがうちの会社です。あなた方が企業の中でそういう事をやりたいのであれば、お手伝いします。」と言って下さったんです。

Don't think、just feel! 理屈を考える前に、素直に感じる


――ジェイフィールのお名前はどういった由来ですか?


高橋克徳氏: J.FeelのJには2つの意味があって、1つは、JapanのJ。もう1つはJustのJ。Don't think、just feel!(理屈を考える前に、素直に感じてみよう)という提案なんですよね。今、日本の中で感情を置き去りにしているんじゃないかと思うんです。例えば、仕事に感情を持ち込むなとか、とにかく目の前の事を一生懸命やれと。感情的になるのはダメ。でも、感情や気持ちを隠して働いていて、人がイキイキしているんだろうか?と疑問に感じます。考える事や、論理的に何が必要かを突き詰める事も大事だけれども、一方で「感じてみる」というのが、ものすごく大事なんじゃないかと思う。だから、まずは感情という所にきちんと焦点を当てて、どうしたら良い感情が生まれるかという事や、その感情が、個人を前向きにさせるだけじゃなく、組織の力に変わっていくプロセスをきちんと考えられるような、組織づくりや人づくりを応援しようと思ったんです。

――ご著書でも、職場づくりについて書かれていますね。


高橋克徳氏: 『不機嫌な職場』や『職場は感情で変わる』(ともに講談社)をはじめ、職場づくりがテーマの本が多いのですが、でも一緒に考えて欲しいのは、職場とか組織がなぜ、人を追い込む場になってしまうのか、そうならないためにどうしたら良いのか、その中でどう生きていくのかということです。時代や環境が変わっても、大切にしなければならないことがあると思うんです。それをきちんと共有したいと思っています。

――どういったことを考えて執筆されていらっしゃったんでしょうか?


高橋克徳氏: 僕が新卒で会社へ入社した頃は、まだバブル世代で会社にも社会にも余裕がありました。「まだ彼女ができないの?」とか先輩達にいじられながら、仕事を厳しく教えてもらったものです。土日関係なく出社して働いていたけれど、やっぱり会社に来るのが楽しかった。そういう人とのあたたかいつながりがあるからこそ、自然と仕事に前向きになれた、頑張れた。でも、それが大きく変わりました。役割分担が明確になり、自分の仕事は自分にしかわからない。忙しいから誰も頼れない、気づいてくれない。周囲からも「すごいね」と言われたり、「ありがとう」と感謝の言葉をもらうこともない。これで本当に人は前向きに頑張れるのだろうか。人が働く上で、生きていく上で大事なものが置き去りにされているのではないか。今の時代にあった形で、人として大切なものを取り戻す。そんなことを一緒に考えてみていただきたくて、本を書いています。

何故自分が本を書くのか、悩んだ時期があった


―― 高橋さんが本を書いているのは、一人でも多く良い連鎖を広めたいという想いからでしょうか?


高橋克徳氏: 僕は「何故自分が本を書くんだろう」と結構、悩んだ時期がありまして。コンサルタントとして色々な経験をしてきた事やノウハウを本にしましょうという出版社からの依頼がいくつかあったんですが、何度か挫折しているんですよ。途中、150ページぐらいまで書いたのに挫折しているものもあります。

――なぜ挫折したんでしょうか?


高橋克徳氏: 正直、自分のために書こうと思っても、書けなかったんですよね。何か気持ちが入らないというか、意義が見えないというか。書くことだけに必死で、そこに悩んでいる人たち、その人たちが前向きになる、元気になる姿が浮かんでいなかったんです。

――ご自身で本当に書きたいと思われたのはいつくらいからですか?


高橋克徳氏: 本当に本を書きたいと思ったのは、まさに『不機嫌な職場』辺りからなんですけれども、自分の中で我慢ができなくなったというか。ここらへんで自分の思っている事を、きちんとみんなで共有していかないと、世の中良くならないし、追い込まれる人が出てくるし、日本企業だってこのままだと競争力がどんどん落ちていく一方だし、そういう事に対して「これでいいの?」という事を正面から語らないと、本当に手遅れになると思ったんです。それで書き始めたというのがやっぱり一番大きいですね。

――「書きたい」というよりは、「書かなければ」という使命感だったんですね。


高橋克徳氏: 正直、僕が2000年の前半ぐらいまでは、人とのつながりや感情が大事だということを語っていても、時代の中では「個人は自立するべき」だとか、「自分のキャリアは自分で切り開け」とかが主流で、全然相手にされなかった。でも正直言うと、「そんな強い生き方、僕にはできません」と思った。この時代を力強く生きていく事の大事さも分かりながらも、一方で「人ってそんなに強く生きていける人間ばかりなんだろうか」というそういう問題意識がすごくあった。そして2000年の中盤ぐらいから、だんだん企業の状況が変化してきて、働き方が多様化するようになる一方で、人との関わりが薄くなって社員同士協力ができないとか、そういう事が顕著になってきたわけです。

――高橋さんが危惧していた問題が目に見えてくるようになったんですね。


高橋克徳氏: それで「これじゃ駄目だな、こんな状況を変えたい」とか、「変えたいと思っている人を応援しないといけない」と思った。そこからですね、僕が本当に本を書けるようになったのは。それまでは、途中で悩む事や、止まる事が多くて書けなかった。でも、今の社会や組織で働くこと、生きることに苦しんでいる人たちが、少しでも楽になる、前を向いて歩き出せる、そんな後押しができるものを書きたい、書かなきゃいけないと思ったら書けるようになったんですよね。不思議に。

大学で2浪、肺を破って入院の2重苦の時代


――それでは、高橋さんの本との関わりについて伺えればと思います。学生時代はどういった本を読んでいらっしゃいましたか?


高橋克徳氏: 今回、「そもそも僕はどういう本を読んできたんだろう」と思い返してみたんですよ。僕は中学、高校ぐらいまでは色々な本を読んでいましたけれども、妹の影響もあって例えば星新一さんとか新井素子さんとか、何かちょっとSFとか空想小説みたいな物が多かった。アイデアや発想が面白い物を読んでいたなと思います。それから、大学を受験するわけですが、僕は大学受験に失敗して、2浪したんです。2浪が決まって、その直後に自然気胸、肺を立て続けに2回破って2か月半位入院をしました。

――2か月半入院されたんですね。入院をきっかけに何か心境の変化のようなことはありましたか?


高橋克徳氏: 入院をすると、心臓病棟だったので、命を亡くしかけたおじさんが沢山いたんですね。そのおじさんたちが、唯一の若者に人生を語ってくれた。死にそうな瞬間に駆け巡ったこと。助かって今思っていること。いろんな話をしてくださったんですね。「いやあ、人間っていつ何が起こるか分からないよ、だから生きている間、真剣にきちんと生きた方がいい」とか、そんな事を言われて、いつ死んでも「よく頑張って生きたな」と自分で思える生き方をしないといけないなと思ったんですね。

――人生の大先輩たちが助言してくれたんですね。


高橋克徳氏: 退院後、自宅浪人をして、塾にも行かず一人で家に閉じこもる1年間でした。病気もまだ完治せず、肺が痛いから外にもなかなか出られなかった。その時に福永武彦さんという、フランス文学者の本に出会って、ほぼ1年中その人の本を読み続けたんです。

――どういった本でしたか?


高橋克徳氏: 福永武彦さんのテーマは「生と死」がテーマなんです。実際に彼も肺の病気を患っていて長期の入院をしている。そういう背景もあって、『草の花』(新潮社)という本に最初に出会った時には、生きる事と死ぬ事、愛や孤独を、すごく考えさせられたんですよ。だからどちらかというと僕の中で「人の原点」というのは孤独なんですよ。人って孤独な生き物だし、やっぱりすごく奥深い所で色々な事に悩むものなんだなとすごく感じましたね。だから多分、人の苦しみとか悲しみを、自分の中の深い所で考えざるを得なくなった時期が浪人時代だったんですね。

――大学時代はいかがでしたか?




高橋克徳氏: 大学に入ってからは逆にいろんな仲間に囲まれて、バンドやゼミに熱中しました。大学時代とか大学院時代に「ニューサイエンス分野」が流行ったんですね。それは物理学や生物学の世界ですが、今までは要素還元主義といって、色々な物の全体を分解して、その1個1個を検証すれば物質の性質が分かり、基本原則が分かると思われていた。ところが、そうではないんじゃないかと。例えば分解して部分を取って、その部分をもう1回組み合わせてみた所で同じ物にはならないと。という事は、部分と部分をつないでいる物があるはずだ。あるいはそこの中に全体と個というのが完全に独立した物じゃなくて、全体と個の内包関係みたいな物があるんだとか。そういう新しい議論が当時盛んだったんです。僕はその分野の本を色々と読みあさって、ものすごくはまったんです。その時に僕の中で、「確かに1人1人は孤立した個だけれども、一方で個人は個人だけで成り立っている物じゃない」という考えが確立されたんです。人間は「お互いの関係性や周囲との関わりによって成り立っている物」だと。逆に、自分自身も周囲によって色々な影響を受けるし、自分も色々な影響を与えている、それがお互いの関係性であり社会を作っていくという。そこに対するこだわりとか意識がすごく高くなったんです。だから社会人になって、色々な企業の研究をやったり個人の研究をやったりしている中で、やはりその考えと結び付けていつも研究をしていました。

人は周囲との関係性なしでは、生きていけない


――今のお考えの核となる物が、大学時代に確立されたんですね。


高橋克徳氏: 人って結局、孤独な物だし、孤独と常に向き合わざるを得ないけれども、その一方で、だからこそ周囲との関係という物を必要としている存在なんだと思う。それを抜きにして何かを語っても、結局上っ面に感じられるなということを、根っこでずっと思っていました。でもコンサルティングの仕事を続けていくと、そうはいっても企業は収益や利益を出さなければならない。そのために、人はどういう風に働けばいいかとか、どうやって上司はやる気を引き出すのかとか考えなくてはならない。人をパーツみたいに扱って、それぞれをどうやって上手く機能させたら最大のパフォーマンスが上がるかみたいな事を考えている人たちもいる。なんて傲慢な論理がまかり通るのだろうと思っていた、ずっと疑問だったわけです。仕事をしながらも。組織や人はそんな簡単な物じゃない。

――今、そのような事がだんだん分かってきていますね。


高橋克徳氏: 今、ジェイフィールで組織感情診断というものをやっていて、「ご機嫌な職場」と「不機嫌な職場」との違いを分析したんです。「ご機嫌な職場」って、あたたかいだけの仲良し集団ではないんですよ。むしろ、無理をしてでも頑張らないといけないとか、強い緊張感を持っていたり、謙虚さとか厳しさをすごく持っている。一方で「不機嫌な職場」は逆で、自分は主体的だし、支え合おうという気持ちがあるのに、周囲の人たちは違うと自分を正当化して、周囲を否定する人が多くいます。どうしてこんな差が生まれるのか。それは周囲のことが見えなくて、閉じ込められた人たちは、自分を守ろうという心理が働きやすくなるからです。最初は前向きな人も、閉じこもる中で、気付いたら防御的になり、批判的な事を平気で口にしてしまう人間になってしまう。周囲からも自分からも、向き合うことから逃げてしまったら、結局は自分を追い込んでしまいます。

――向き合うという事は、自己肯定する事でもあるという風におっしゃっていらっしゃいましたね。


高橋克徳氏: 他人に対してであれ、自分に対してであれ、向き合うことは苦しいことです。でも、相手をよく知り、自分をよく知る中で、自分の良さも悪さも見えてくる。その悪い部分があったとしても、そこに向き合い、どうにかしたいと思っている人は、そんな自分を肯定できるようになります。

電子書籍でも紙でもライフスタイルにあわせて読めばいい


――続いて電子書籍について伺います。電子書籍というのが今どんどん普及している中で、ご自著を電子書籍で読まれている読者に対しては、どのような感想をお持でしょうか?


高橋克徳氏: 僕は、電子書籍も紙の本も、別に両方ともいいんじゃないかと素直に思っています。やっぱり個人のライフスタイルによりけりですね。紙の本を電子書籍にしてデータ化して読むという事が習慣としてある人もいれば、紙の本で持つことがいい人もいるということですよね。検索とかは、明確な意図や知識がないとできない。だから意図がある時には、電子書籍は検索できるし、すごく便利だと思います。これからはさらに映像やネットとリンクしていく本になる。媒体としてさらに進化していくのだと思います。

――高橋さんはどのように本を読まれますか?




高橋克徳氏: ただ、僕の本の読み方って、大体、気に入った著者がいるとその人の本をドワーッと集めて読んじゃったり、ある分野が気になると、その分野の本を10冊とかいきなり買ってきてバーッと読む読書法なんです。そういう時って、ほとんど分野だとかテーマが決まっているから、自分で選んで買って、ストックして…というやり方が性に合っている。

――本は本屋で購入されますか?


高橋克徳氏: 本屋に行く時は、全く知らない分野の本を見つける時に行くんですよね。やっぱり知らない分野の本を読んで、「あ、こんな本があるんだ」とか、新たな発見がありますね。
僕は、本屋が無くなるとさみしいですね。色々なコーナーに行って発見する喜びが無くなるのは嫌ですし。

出版社も編集者も、これからはポリシーを取り戻せ


――出版社、編集者の本来の役割とは、どのような所だと思われますか?


高橋克徳氏: 今、まさに出版社も編集者も成果主義になってきてしまって、売れる本を出したいという風潮になってきていますね。ただ、逆に言うと出版社自身もポリシーを持たなければいけない。自分達の役割とかミッションとかをもっともっと明確に出して差別化、個性化をしていった方が、いいのかなという感じがするんです。「うちはこういう思想を持つ出版社です。だからこそ、こういう著者と一緒に組んでやりたい」みたいに、出版社は明確に個性を出して欲しいなと思う。

――高橋さんは書き手として、出版社へ対してどのように思われますか?


高橋克徳氏: わたしは出版社の人と一緒に議論しながら、本を一緒につくるというスタンスが好きです。出版社の人たちの思いも、自分は受け取って、本にしたいと思う。現代社会が生み出した矛盾、問題を明らかにして、その中でも前向きに生きていく人たちを支援する本を書きたい、届けたい。こんな思いを共有できる人と、一緒になって議論しながら、多くの人たちが共感して、元気になれるような本をつくっていきたいですね。

若い世代とバブル世代へ送る二つのエール


――今後、書いてみたい新しいテーマなどはございますか?


高橋克徳氏: 今2冊書いているんですけれども、1つは「会話って何だろうか、対話って何だろうか」という事を改めてきちんと考えるというテーマです。気づくと、会話下手になった人たちが増えたんだと思うんです。お互い気遣い合っていると、言いたいことも言えない。何から会話したら良いかわからない。だから、会話から逃げてしまう。でも「会話」って、相手に自分を知ってもらったり、自分が相手を理解する事だったりする。会話を深めていけば、自分が足りない物に気付かされたりもするわけです。そういう良い会話をどうしたら自然とできるようになるのかを考えようという本です。

もう1冊の本は、今、ゆとり世代がどうだとか、そういう事を言われてしまうけれども、今の若い人ってすごくいい物を沢山持っている。でも世代間の20年のギャップって、その背景にある時代の変化が大きすぎて、お互いに理解できない部分というのが生まれてしまっているんですね。その結果、上と下とでつぶし合ってしまう。下の世代が上の世代を見た時、上の世代がいい先輩であり、いい仲間であり、という関係にどうしたら変えられるかを一緒に考えていくというテーマの本を書いていますね。

――バブル世代の方たちというのはどういう方たちですか?




高橋克徳氏: バブル世代のおじさん達は仕事もちゃんとしない、人数ばっかり多いとか思われがちです。でも逆にバブル世代は、ともに働く喜びを実感できた最後のいい時期を過ごしたんですよね。先輩からいじられながら、ちょっといじめられながらもあたたかく育ててもらったり、みんなで一緒に何かをやる経験をしたり。海外で新規事業を経験していたり、そういう経験やパワーがある。40代の我々の仲間が集まると、例えばフェイスブックなんかもめちゃくちゃ利用しているんです。バブル世代の人達ってすごいんですよ。やっぱり元々そうやってしょっちゅう飲みに行ったり大騒ぎしたりというエネルギーがある世代。

――20代の方たちと40代以上の方たちの橋渡しをされるんですね。


高橋克徳氏: 若い人は若い人で、あなたは何ができるのかというような事を初めから問われる時代ですよね。そういう中で不安になりながらも一生懸命やっている。それも可哀そうだと思うし、そういう状態が続いて行って自分が30代になった時に、ますます不安になっちゃう人も増えるんじゃないかなと思うんです。

僕は20代に対してメッセージを送りたいという事も常に考えていますね。今、テクニカルな褒め方論とか怒り方とか、方法論ばかり増えている。叱るっていうのは、叱る相手の事を考えて、「それじゃ、成長しないぞ」とか、「お前が駄目になるぞ」とか、「人を傷つける人間になるぞ」ってことですよね。叱る時は真剣にぶつかるわけじゃないですか。でも今、日本全体、社会全体で、それが出来なくなってきている。これも大きな問題じゃないかなと思うんです。

「対話」の話も一緒ですけれども、テクニックばっかりなんですよね。だから今、みんなが、この20年の中で当たり前にできていた事を忘れてしまったような気がするんです。でも、それが生きていく上や、仲間と一緒に何かをやっていく上で、すごく大事な原理原則なんですよね。尊敬であったり敬意であったり理解という物が、ものすごくベースで必要になって来ている。そういう事を世代を超えてきちんとできるようになれば、日本には色々な人材がいるし、もっと面白い状況になると思いますね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 高橋克徳

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