人間の原点を描いた、読み継がれる本を書いていきたい
臼井由妃さんは、33歳で主婦から健康器具販売会社の社長に転身、数々のヒット商品を手がけてきました。また、勉強法や時間活用術などのビジネス書や、話し方や人づきあいなどのコミュニュケーションに関する本、女性の生き方や暮らし回りのエッセイなど、多彩なジャンルの著書があります。臼井さんに、読書とのかかわり、著者としてのこだわりなど本にかける想いをお聞きしました。
生きていることすべてが仕事、生きていることすべてが遊び
――ご著書のことなどを含め近況をお伺いできますか?
臼井由妃氏: 最近、青春出版社さんから出したのが、逆説的なタイトルですが、『金なし! コネなし! 経験なし! だから会社は強くなる』です。今までたくさんの本を書かせていただいた中で、経営術の本が実はなかったんですよ。かっこいいビジネス書ではなく、泥臭いビジネス書を書きたかったんです。あとは今、料理レシピを書いています。私が普通の料理研究家のような本を書いても意味がないので、私にしかできない料理の本はなんだろうかと考えて、「イージー、おいしい、ヘルシー」をコンセプトに書いています。
――臼井さんは執筆ジャンルが多岐にわたりますね。
臼井由妃氏: 「振り幅」が非常に広いんです。私は自分の執筆するジャンルのことを「ヌードからフードまで」っていっているんですね。ヌードというのは、精神的な部分を含めた体や恋愛などフードは健康や料理など栄養士としての視点から伝えたいこともあります。その振り幅の中に、ビジネスもあるんです。初めて執筆の仕事をさせていただいていたころに、ある有名な出版プロデューサーの方から「いろいろなジャンルに手を広げると、何が何だかわからなくなる」と苦言を呈されたことがあるんです。「ただ私は栄養学も健康科学の学術的な研究もしてきたし、経営学も勉強してきたし、英会話も勉強しているし、振り幅が広いんです」っていったんです。私が著わしたくても世の中が認めてくれなかったらできないわけですから、やらせてもらえるものは全部やる、来るものは一切拒まず、のスタンスで来ました。
――たくさんの著書に一貫したテーマのようなものはありますか?
臼井由妃氏: 同じ仕事をするんだったら、「楽しく朗らか」にということです。私自身が著者として、一読者としても楽しんで書きたいし読みたいんですね。例えばそれが悲劇的なものであっても、その教えを楽しむということです。ですから、かなり重いテーマのものであっても、実は書いている時はノリノリなんですよ。仕事なのか、遊びなのか、趣味なのか区別があまりないんですね。かっこよくいうと、生きていることすべて仕事だし、生きていることすべて遊び。仕事ということを意識しないで仕事をするのが私のやり方です。
――普段はどういった場所で、どのようなスタイルで執筆をされていますか?
臼井由妃氏: 信じていることなんですけど、高いところに行ったほうがアイデアが降りてくるんです。天に近いからなんでしょうか。高いところに行って下を見るとお殿様の気持ちで気持ち良いですよね。空気がきれいで高いところ。空気が滞留せずに、抜けていくような感じじゃなきゃだめなので、山や海が見えるところが好きなんです。東京ではなくて、温泉地にある別宅で書いています。標高330メートルくらいで、空気もおいしいですし、鳥のさえずり、風の音なども聞こえます。自然の恵みで研ぎ澄まされる感覚がありますね。
著者にはっきりとものをいう編集者が好み
――本はどのように企画されているのでしょうか?
臼井由妃氏: 本に限らず、企画に関しては覚書でも記録しておかないと忘れてしまうんですね。だから紙の端っこにメモしています。本だったらまずタイトル、それからサブキャッチですね。そして、どういう人に読んでほしいかなども、ひらめいたらとりあえず全部メモします。タイトルが浮かぶとサブタイトルは自然に出てきて、あとは細かい項目まで早くできますね。
――ご自分で立てられた企画は、どのように出版社や編集者に提案するのですか?
臼井由妃氏: 私、担当の編集者や、パーティーでお会いした版元の方に、「こういうことを考えているんですけれど、面白いと思いますか?」って質問するんです。それで相手が話に乗ってきたら、「じゃあ来週会いませんか」っていうんですよね。別にガツガツしているんじゃなくて、「面白がってくれてありがとう」、みたいな感じです。向こうがびっくりしちゃうんですけどね(笑)。何作も一緒にやってきた気心の知れた編集者も良いんですけれど、私はどちらかというと新しい人が好きなんです。ちょっとくせがあって、私が「どう思いますか」って聞くと、「それはちょっと」とか、「そういうものは臼井さんらしくない」とか、はっきりいう人が好きなんですね。もじもじして何もいわないのは、しょせんうわべの付き合いじゃないですか。言葉を選びながらも、「私の意見は……」っていう人が好きなんです。
例えば、1作当たったジャンルがあるとしたら、それの周辺で同じことばっかりやっているんじゃ、読者の人に失礼ですし、以前に出した本にも書いてあったことが、他の本にも同じ形で出てきたら、本を冒とくしているような気がするので、私はだめなんですね。長年一緒にやってきている方には、私も「どんどん原稿を直してください」といっています。私は、120パーセント自分で書いているんです。120パーセントっていうのはどういうことかというと、余計なことまで書くってことなんです。例えば250ページ書くことになっていると、300ページ位書いちゃうって感じなんです。だから、それを削るという作業が必要になります。「ちょっとこれはわからない」とか、はっきりいってくれる人ではなくてはだめなんです。
――出版社によって編集方法など異なるかと思いますが、どのように一緒に仕事をする出版社を決めてますか?
臼井由妃氏: 出版社の勢力図みたいなものが、業界的にいろいろありますよね。でもあんまり有名でない会社や編集者でも関係はないんです。編集者さんと版元さんと私が、三者で同じ方向を向いてできるんだったら小さい、大きいは関係ない。例えばビジネス書はどこの版元が強いとか、私なりにわかっていますけれど、出版数が多い会社であっても、一点あたりの力のかけ方が弱いこともあるじゃないですか。そこのトップが「臼井さんの本が良いよ」といえば力を入れるけど、そうじゃなかったら「その他大勢」になる可能性も高いでしょう。一方、小さい会社でワンマン的だけど、精魂込めてやってくれるところもあります。どっちが良いかっていったら、私は後者のほうを取りますね。それはある種リスクかもしれないんですけど、そちらのほうが楽しく仕事ができますからね。
――本を書く際に、気をつけていることやこだわりはありますか?
臼井由妃氏: 私自身が、ビジネスをずっとやって来ていることもあって、商品の納期、原稿でいう締め切りにはかなり厳しいです。例えば手形の入金が遅れたらアウトじゃないですか。原稿も今日の5時まで締め切りだとしたら、5時01分でも手形が落ちないのと同じだと私は思っているんです。パソコンの調子が悪くて、どうしても送れないということも有り得るので、最悪締め切りの前の日に送ります。これはずっと続けていることです。一番きつかったのは腱鞘炎の時ですね。どうしてもスピードが遅くなってしまうし、キーは打てるけど痛いからイライラして気持ちが乗らない。その時は、締め切りは明日なんだけど、「ちょっとだめです」っていおうかと思ったんですけど、ここでタガを外してしまうと、雪崩のようになってしまうと思って、先方に電話をして、「実は腱鞘炎なんですけど、ちゃんと明日の何時までに入れますのでご心配なく」って宣言をしたんですね。別にいう必要ないんですけど、宣言しておきたかったんです。そうしないと怠けちゃいますから。私は、著者としてあまり誇れることはないんですが、締め切りだけは絶対に守る自信があります。
家族の影響で始めた読書が今につながっている
――臼井さんの読書にまつわる話も伺いたいと思います。最初の読書体験はいつごろでしょうか?
臼井由妃氏: 子どものころ、父が漫画は毒にしかならないとかいって、家では一切漫画禁止だったんですよ。じゃあ何を読むかというと、世界名作全集にある『小公女』(偕成社文庫)とか、『赤毛のアン』(新潮社文庫)とか。それが7歳ごろのことですが、自分としては、手ごたえのあった本を読んだ初めての記憶ですね。くり色の髪の毛とか、ブルーの瞳の女の子とか、あるいは外国の文化みたいなものが垣間見えて、あこがれで読んでいただけのような気がします。子どものころは体があまり丈夫じゃなかったので、外に出て遊ぶということができなかったものですから、家の中で本を読む機会は非常に多かったです。それから、祖母が日本の古い民話とか、伝承文学みたいなものの本を持っていたんです。多分原書に近いんだと思うんですが、古事記とか古今和歌集とか、枕草子とかがいっぱいあって、もちろん読んでも理解できないんですけど、表紙が何ともいない風格があって、すてきなんですよね。開くだけでお利口になる気がして、読むんじゃなくて、見ていましたね。
そして中学になって、祖母の本からなんとなく歴史に興味がいったみたいで、日本史がすごく好きだということに気づいたんです。両親が徳川家康とか織田信長、武田信玄とかの偉人伝などを持っていたので、読んでいました。図書館のにおいが好きで、夏休みは図書館にもう通いつめて本を読んでいましたね。で、気になった言葉とかを書きとめていた記憶があるんですが、「下克上」とか、「川中島」、「桶狭間」とか、キリシタン大名の名前とか仏教の用語とかが出たり、めちゃくちゃでしたね(笑)。
――ご家族の趣味や蔵書からの影響が強かったのでしょうか?
臼井由妃氏: 私は一人っ子なので兄や姉に影響されるということがなかったんです。父や母が買ってくれたものとか、祖母が持っているものしかないので、どうも古臭いようです。漫画は禁止でしたが、じゃあ見たいかっていうと、見たくないんですよ。学校でアニメとかテレビの話をしていても、全然わからなくて、浮いているんですよね。徳川家康のこととか聞いてくれればすごく詳しいんだけど、誰も聞いてくれないし。何か変な子っていう感じでした。家康といえば、そのころ読んだ本の中に、家康の食生活が出ていたんですね。三河ですから豆、みそを使って、また薄味であるとか、薬草や漢方に非常に造詣が深いとか。それで食にも興味がいきました。だから考えてみると、子どものころの体験がすべて今につながっていますね。
「名刺代わりに本を書く」という言葉は大嫌い
――現在、経営者として活躍されていますが、ビジネスに関する本は読まれていましたか?
臼井由妃氏: 実は、大学を出て就職した人が勉強する経理の本とかが抜けちゃっているんですね。本を読んで勉強しようという気が中学校位までで止まってしまっているんです。そこからまた急に読み始めることになったのは、33歳で経営者になったころです。経営のことなどは何にもわからないので、八重洲ブックセンターなら何かあるだろうと思って行ったんですが、読書を何十年もしてない人間がいきなり、経営戦略的なものを読んでもわからないわけです。何かわかるものはないかと思って、新聞の書評とか広告で、「これならいけるかもしれないな」とか、そういう選び方で本に触れるようになりました。
で、なんとなく本選びができるようになったのは35、6歳のころでしょうか。ただ、当時はAmazonとか楽天とかがないから、本屋に行ってタイトルで興味を持った本の後ろのページを見て、著者プロフィールで自分に近いような人が書いたものを探していました。でも、当時は女性の経営者の本も、中小経営者の本もあまりなかったんです。ないってことは必要とされてないのかもしれませんが、いつか必要とされるんじゃないかなっていう気も芽生えましたね。それがどこかこびりついていて、本を書くことに結びついたような気もします。
――影響を受けた本を1冊挙げていただけますか?
臼井由妃氏: 転機になった本としては、木村治美先生の『エッセイを書きたいあなたに』(文藝春秋)ですね。木村治美先生がカルチャーセンターでエッセイ教室をやっていて、そこに来る人たちに向けて書いたみたいなんですけれど、特に印象に残っているのは、「本を何のために出すのか」という問いかけで、「社会にとって役立たない自己主張を書くのは出版じゃないよ」と、辛らつなことが書いてあるんですよ。初版を持っていて、もう茶色くなっているんですけど、何か迷った時に読むんです。そうするとズキッとくることが書いてあるんですね。要するに、著者としてある程度経験を積んでくると、こういうことを書いたらウケるとか、時流みたいなのがわかってくるじゃないですか。そういう風になりかける時もあるし、そうせざるを得ない時もあるのですが、そういう時に、「この本を何のために、読者に届けるのか」とか、「なぜ私が書く必要があるのか」みたいなものを思い返させてくれます。著者としての原点回帰になる本です。
――本を書くことの意義はどのようなこととお考えですか?
臼井由妃氏: 基本姿勢として仕事とは「仕える」ことです。誰かに仕え、役に立つことが仕事なんです。特に本というのは心の内面まで、その人の人生を変えてしまう場合だってあるわけですよね。変な話、死にたくなる本だってあるし、生きる力がわいてくる本だってある。すごく大変な仕事だと思っているんです。なので、大げさにいえば使命感みたいなものは、段々芽生えてきましたね。私が偉そうにいうことではないですけど、単に著者になりたいのか、世の中に自分が経験してきたことを発信して、役に立てていただきたいと思っているのかがわからない本が多いような気がします。講演会やパーティーで人が集まってきて「臼井先生、私も本を出したいんですけどどうしたら出せるんですか」って聞かれるんです。素直といえば素直ですけど、おかしいと思うんですよ。一番私が嫌いなのは、「名刺代わりに本を出したい」とかっていう人。極端な話、もう横っ面をはたきたくなりますよね。
――著者になるための絶対条件を挙げるとするとどのようなことでしょうか?
臼井由妃氏: 文章を書けない人は著者になってはいけないと思います。中にはご年配の方やご病気の方で、貴重な経験があるけどどうしても書けない方もいますが、普通の方が書けるのに書かないのは良くないです。へたでも良いんですよ。どうせ最初はへたなんだから。へたでも書きたいことがまとまらない人は書いちゃいけないと思うんですよ。私は、本を読んで、本当に本人が書いているか、書いてないかはだいたいわかります。「あの人が編集しているな」とかわかることがあります。だから書けない人はだめです。著者には文芸的な要素は必要ないんです。ただ、書きたいことがあって伝えたいことがあるのなら、自分でまとめられないのはおかしいはずです。
BOOKOFFに自分の本。「良いところに嫁いで」と祈る
――出版の垣根が下がったといわれる一方で、出版不況とか、本が売れないなどともいわれますが、出版の現状をどうご覧になっていますか?
臼井由妃氏: 今は逆に良い傾向だと思っているんですよ。何でも出しますよ、みたいな時代が5、6年前にあって、その時に著者になりたいっていう人たちがたくさん出てきて、1作2作当たってしぼむパターンを何人も見ています。そういう本は出しちゃいけないと思っています。今は不況というよりも、淘汰されて良い本が増えてきたように思います。これからもっと淘汰されると思っています。
――本が売れないと同時に、新刊本の寿命も短くなっていると感じますか?
臼井由妃氏: それは難しい問題ですね。今はロングセラーと呼ばれるものでも、本屋さんに10年置いてある本なんてないですよね。例えば、1万部以上売れた本っていうのは、何らかの形で世の中に置いておいてほしいなと思います。在庫の問題など難しい事情があるのはわかっていますが。今は新刊本も本屋で2週間もたない。それでは生鮮食品と同じじゃないですか。一番著者にとって悲しいことは、売れないということで断裁処分するっていう言葉ですよね。私もかつて処分するという連絡が来たこともあります。ショックなので連絡しないで良いと思いますね。私の終始変わらぬ自分の願いであり、目標として達成できたら良いなって思っているのは、ロングセラーを作ることですね。
例えば、松下幸之助さんの本ですら全部は本屋に置いてないですよね。デール・カーネギーの『人を動かす』(創元社)のように、必然的に置かざるを得なくなるような本を作りたいです。それはもうはかない、夢みたいな話です。100万部売れる本を書くよりも難しい話だと思います。100万部も、時代背景と、版元さんのプッシュ等すべての要素が合致しないと無理だと思うんですよ。それも死ぬまでに1度は味わってみたいとは思うけど、その本が10年残るかっていったら、これがまた疑問じゃないですか。それよりも初版が5千で、3千、2千、2千、千、千ってずっと増版されるというのが良いですね。
――在庫リスクが低いということで電子書籍も注目されていますが、電子書籍についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか?
臼井由妃氏: 私の本も電子書籍に随分なっていますけども、そこそこ売れた本を電子化するパターンがほとんどなんですね。もしくは思った程は数字が出なかったけれども、じゃあ電子書籍化してみるかみたいなパターンなんですね。だから、ちょっと言葉は悪いんですけど、今の電子書籍のイメージは「ついで」みたいな感じなんですよ。読むツールが整備されてくると変わってくると思うんですけれど。ただ、版元さんが電子書籍をガーンとやって、売り上げが上がるのかというのも非常に厳しい問題だと思いますよね。
――臼井さんが過去に出した本をスキャンして手元に残している読者の方もいると思いますが、そういった保存方法についてはどう思いますか?
臼井由妃氏: 自分の宝物のような本に出会えたとして、それが私の本だとしたらどういう形であっても残してほしいと思います。ただ、残す材料としてはスキャニングも良いのですが、本という形で残ってほしい気持ちもあります。厚みのある本の文化も絶対残ると思うし、残さなきゃいけないとも思います。私、よくBOOKOFFに自分の本が並んでいるか見に行くんですよ。これだけ出していると1冊や2冊はあるんです。開いてみると中にレシートが入ってたり、元持ち主のメモがあったりして、悲しい気持ちにもなるんですけど、捨てられるよりは良いなと思いながら、元に戻しています。「良い人のところに嫁いでください」ってお祈りしてます。
作家の「バラエティー班」としてやっていきたい
――紙の本と電子書籍はどのように住み分ければ良いでしょうか?
臼井由妃氏: お互いに補助し合うのが良いと思います。電子書籍の編集の仕方自体は詳しく知りませんが、電子書籍のほうが、早く編集できるような気がするんですね。もし、早くできるんだとしたら、旬のネタの本、例えば病気が大流行した時の対処法とかをすぐに出すといいですね。ネットの情報は、不確かな部分もあるし、週刊誌では遅いじゃないですか。だから、検証したものを電子書籍化すれば良いなと思います。別に書籍だからといって、何百ページもなくても良いわけだし。例えば1章、2章、三章でばら売りしても良いと思うんですよ。そのようなタイムリーな電子書籍は、やっぱり書き手の時代を読む力とか、また違った能力が必要となりますね。だから企画がなかなか通らなくて、電子書籍だったら良いよ、といわれたからというだけの理由で電子書籍にするというパターンが一番良くないと思います。でもその傾向はあると思いますね。
――電子書籍によって本の読み方が変わるということもありそうですね。
臼井由妃氏: 読者が本を読みながら質問ができるようなシステムができると良いですね。例えば、本には愛読者カードがついていますが、あのカードに書く人って本当に本の好きな人ですよ。私も今まで頂いた手紙は宝物です。それを読む楽しみっていうのは自己満足じゃなくて、そこにネタがあるわけですよ。何ページの何行目に書いてあったことを実際にやってみたらこうでしたとか、ここは違うと思いますとか、納得ですとかいろいろあるんですね。それが例えば電子書籍の様な形だったらもっとスピーディーにできると思うんです。著者にとっても次の著作に役立つんじゃないかなと思います。そういうスタイルだったら本に興味のない人も、読むようになることもあるのかなと思います。
――最後に今後取り組みたいテーマや、お仕事の展望をお聞かせください。
臼井由妃氏: 私は仕事も趣味も、挑戦が好きなんですね。挑戦にはけががつきものなので、大けがをしない程度の擦り傷、切り傷は年中なんですね。著作に関しても、私はこうでなきゃいけないというのが定まっていないというか、定めたくないんです。だから、やりたいことはいっぱいあります。今書いている料理の本も、以前から結構いっていたんですね。ずっとやりたいといっていると周りも段々その気になってきて、じゃあって感じになるんです。今後やりたいこととしては、1月に55歳になるんですが、昔は55歳ってもっとおばあさんで、くたびれちゃっていると思っていたんですけど、全然くたびれないんです。とはいっても、「美魔女」とか「熟女」なんて言葉は気持ち悪くて大嫌いなんです。だから、普通の55歳が元気にはつらつと生きてくための試金石になるような本は書きたいと思っています。それから、私は人間の原点っていう言葉がすごく好きで、本能にかかわること、衣食住にかかわることすべてを扱ってみたいと考えています。今は食しか書いていませんから、衣と住の部分もあります。人間の根本的なことを見直すというテーマを、歴史に絡めたものとか、構想はいっぱいあります。少し先の未来に自分が何をやっているかっていうのが読めない部分が楽しいんです。もしからしたら小説を書いているかもしれない(笑)。私、著者の中のバラエティー班だと思っていますので、頭が回るというか、動くうちはずっとやっていきたいと思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
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