恋愛も仕事も、会話は「気持ちのキャッチボール」

――早速ですが、野口さんの運営されているスクールについてお聞かせいただけますか？

野口敏氏: 大阪の北浜の教室で会話術をお教えしています。教えている内容は、コミュニケーション全般で、「自分をオープンにすると話題が増える」「話を聞く」「説明がうまくなる」とか、そういう身近なところからスタートしています。

――受講されている人はどのような目的で勉強されている方が多いのでしょうか？

野口敏氏: 例えば今、婚活を目的にしてコミュニケーションを学ぶ方が増えています。結構、成績が良くて、時間は1年間位かかりますけど、皆さんちゃんと結婚が決まっていきますよね。彼女いない歴5000日、17年間いなかった人が、この間13歳下の人と結婚しました（笑）。会話を勉強すると、自分の思っていることを一方的にしゃべるんじゃなくて、気遣いとか、相手の気持ちを考えることができるようになります。会話を勉強していく上で、相手との接し方とか、メールをいつ送ったら良いかといったところまで段々気づいていく訳ですね。そういうことを重ねていくと、皆とは言いませんけど、良い人と巡り合って結婚していくんです。あとは今、就職も厳しいですから、学生さんや転職する方の面接対策も多いです。社内昇進で管理職になったりする時の面接のためにも結構来られますね。

――面接等、ビジネス上のコミュニケーションではどのような指導をされていますか？

野口敏氏: 自分のことを短い言葉でどうPRするか。どういう風に相手に伝えるかというような内容が多いですね。あと、会社の中での「コメント力」みたいなのもあります。例えば社内で、「どう、最近、どんな仕事しているの？」とか、何気ない投げかけってありますよね。あれに、うまく答えられなくって、「まあ何とかやっております」みたいな、しょうもないコメントしかできなかったりします。ああいう時に、短く的確にしかも上司に「ほう」と言わせる様なコメントをする力はどうすれば身につけていくかという様なことです。人ってそういったことで、「やるな」とか判断するものなんです。「普段のイメージと全然違うんだね」とか、「よく考えているね」とか、上司に思われる。ちゃんと言えるってことは日ごろ考えているってことで、考えているっていうことは、行動しているってことですから。仕事力につながるんですね。

――ちょっとした会話に苦手意識を持っている人は確かに多いと思います。

野口敏氏: 「会話は気持ちのキャッチボール」っていうのが、うちの教室の大きなテーマです。お互いの気持ちを具体的に感じ取って、自分の気持ちを具体的に表現する。まず感じ取って、言葉にするってことですね。例えば、今かなり緊張されていますよね。

――はい（笑）

野口敏氏: そこで、単に「インタビュアーって大変ですよね」っていうだけでは、わかってそうで実はよくわかってない人の言葉だと感じますよね。でも、「インタビューの能力とかを見られちゃうのかな、相手にどう思われているのかなとか思うと緊張しますよね」って、具体性があると「わかっているな」っていう感じがすると思うんですね。人間は気持ちと気持ちでつながることができるんです。気持ちをお互いにわかり合わないと信頼が生まれない。一緒に共同して仕事をやっていこうっていうような気持ちも生まれないので、気持ちってすごく大事なんですよ。

生徒の変化を見て段々のめり込んでいった

――野口さんが会話のスクールを始められたきっかけはどういったことだったのでしょうか？

野口敏氏: 自分でも何で始めたのか、よく覚えてないんですが（笑）。平成元年に始めたんですけど、当時も、結婚できない男性がいるっていうことが段々ささやかれてきた時代でした。今は、当たり前みたいですけど、当時は、何か際物扱いみたいな、気持ち悪いとかそういう時代だったんですよ。それで、自分が教えるとちょっと変わってもらえるんじゃないかという気持ちがあって、始めてみようかなと思ったんです。30歳位で若かったので、だめだったらすぐやめれば良いしというつもりで始めてみたんですけど、やってみると奥が深くて、勉強もいっぱいしないといけない。段々のめり込みましたね。生徒さんとかかわって、変わっていかれる方もいらっしゃるんで、やめられなくなってきたんですよね。

――その前は呉服屋にお勤めだったそうですが、お客さまを相手にする職業をされていたことが役に立つこともあったのではないでしょうか。

野口敏氏: 呉服を売るためには、コミュニケーションがいっぱい要りますからね。そこでコミュニケーションの初歩みたいなものを身につけてはいました。でも、それで自分にはできるかと思ったんですが、始めてみると全然違っていた。呉服を売るっていうコミュニケーションと、苦手な人に何か教えるということにはだいぶ違いがあったので、そこからいっぱい勉強しました。

――会話を教えるための勉強とはどのようなことでしょうか？

野口敏氏: 当時、コミュニケーションはそんなに研究されていない分野で、本がなかったんですよ。カウンセリングの本があった位です。でもカウンセリングとコミュニケーションはちょっと違う。カウンセリングって、つらい話を聞くじゃないですか。自分はあまりしゃべらないで、穏やかに「あ、そうですか。おつらかったですね」って相手の話を聞くんですけど、コミュニケーションは楽しい話を聞く方が多いでしょう。お互いが楽しくならないといけない。同じようなことをやっている人があまりいなかったので、まず自分で考えて、これがいいのではないかというのを、講座で取り入れていた感じですね。

――試行錯誤される中で、どのような指導が効果があるとわかってきたのでしょうか？

野口敏氏: 口下手な人が、会社で話しかけられるようになってきたとか、彼女ができたとか、そういうデータが集まって来て、この方法が合っているんだなと残ったことが2つあって、「反応する」っていうのと、「自分のことをオープン」にするということでした。相手の話に「はい、はい」じゃなくて、もっと体を大きく使って、「えー」とか「へー」とか反応することと、自分のことを言って良い範囲をなるべく広げていくということです。もちろん、言えないところもあるんですけども、言って良いはずなのに、言ってないところって皆結構多いんですね。極端に言うと、どこに住んでいるか言わない人もいるんです。「お家はどこですか」って聞いたら「ここから30分位ですね」とか。30分って、地図に円を引かないといけないじゃないですか（笑）。



もちろん番地まで言う必要はないですけどね。言って構わないのであれば、「難波の方です」とか。もうちょっと具体的にして、そこから徐々に自分のことを話すようにする。職場では「嫌いな上司はどんなタイプか」とか、そういうつっこんだことを皆聞きたいんですから。

――似た業態が少ない中、独立して1からカリキュラムを作り上げることに苦労もあったのではないですか？

野口敏氏: そりゃ失敗もいっぱいありました。成功したのは、5年前です。もうずっと生活が苦しくって、ぎりぎりですね。うちの家内も働いていたし、年収も300万円位で、一番ひどい時は年収50万円っていう時もありました。さすがにもうだめだと思いましたけどね。

好きなことじゃないとエネルギーが爆発しない

――苦労の時期もありながら、なぜめげずに続けてこられたのでしょうか？

野口敏氏: 好きだったからですよね。誰も歩いてない道を自分で色々試しながら、失敗しながら、世間の誰も知らないことを徐々に明らかにしていって、困っている人が助かって幸せになる訳でしょ。やっぱり、そういう幸福を味わうと、やめられない。よく好きなことを仕事にできないとか、好きなことを仕事にしているうちは食べていけないんだよとか言う人がいますけど、できるんですよね。好きなことを仕事にして裕福になることができるんですよ。好きなことをするために仕事をするとか、仕事は半分で、自分の人生を半分位とか言っていると稼ぐ力はつかない。もう仕事っていうのは、人間が一生かけるようなものです。それで、色んな人が喜んだり、幸せになったりする訳でしょ。それ以上の喜びって人間にはないはずなんですよ。その代わり時間はかかります。私はほぼこれしかない状態で来ましたからね。毎日仕事のことを考えている様な感じです。ゴルフなんかをしていても、仕事のことを考えない時っていうのはないです。でも無理して考えているんじゃなくて、誰かが会話してるのを聞いて、こういう会話はうまくいかないんだとか、思考がそっちにいっちゃうんですよね。ゴルフをするのも楽しいですし、飲みにもいくのも楽しいですよ。だけど、やっぱり仕事して、色んな人がこういう風に変わっていきました、来てよかったですって言われることとは比べ物にならないんですね。だから天職だったんですね。

――仕事は自分のためではなく人のためにするということでしょうか？

野口敏氏: いいえ、自分のためなんです。自分の喜びのためなんです。相手の人が喜んだり幸せになったりするのが一番の喜びなんです。だから、結局は皆、誰だって自分のためにやる。ここを間違えるといけません。自分のためにやっている人が成功するし、幸せになれるんだと思いますよ。「自分はそんなには幸せじゃないけど、皆の幸せのために必死に頑張る」ではエネルギーが出てこないですよね。生活の安定を取ると、やりたくないこともやらないといけないし、へつらわないといけない時もあるでしょう。こっちをやった方が幸せだろうなって思っても、それで食べていけるのかなとか、誰でも不安になるじゃないですか。でも、喜びの中で仕事をしたり、好きなことをしてる人しか、裕福にはなれないですよね。エネルギーが爆発しないですから。やりたいことをやるっていうことが大事だと思います。

――やりたいことをやるという、その1歩が踏み出せない人も多いと思いますが、何が原因なのでしょうか？

野口敏氏: できると思ってないからですよ。例えば、今サラリーマンで、「やりたいことあるんだけど、やっぱり生活があるから無理だよね」って言うんだったら、土日にやれば良いじゃないですか。仕事しながら土日とか夜に、ちょっとやってみる。ビジネスになるかどうかわからないけど、やってみて、ちょっと可能性が見えてきたら、もう少し時間を増やしたり、力の入れ具合を会社から事業の方に移して行いって、こっちの方が楽しいとなれば、そこで会社をやめれば良いと思うんですよ。やってみない限りは何もできないですよね。

本との「偶然の出会い」が自分を育ててくれた

――野口さんにとって本とはどういう存在でしょう？読書の流儀のようなものはありますか？

野口敏氏: 本はたくさん読まないといけません。本は色んな著者の一生分がつまっている訳ですから。あと、本は買わないとだめですね。借りちゃだめです。それは何回も読まないといけないからです。初めて読んだ時の印象と、1年後に読んだ印象は全く違います。管理職になった時の印象とか、成功した後の印象とか、ヒットするところが違うんです。だから、最初に読んだ時に線や書き込みをすべきですよね。わからないところに線を引いて1年後に読むと、今はすんなりわかることがあります。1年前にわかったと思っていたところも、今読むともっと奥があるんだろうな、本当はもうちょっと自分はここをわからないといけないんだろうなと感じたりするんです。だから、本っていうのはまず自分で買う。何回も読む。つまらなかったらブックオフなんかに持っていってもいいですけどね。良い本は何回も読むべきです。すぐに売ってお金に換えようというせせこましい気持ちではだめです。なるべく安くとか、得したいとか、もうその時点でその人は成功しないです。ちゃんとお金を出して、自分の書棚に飾って、気になったら時々出して読んでみるということでないと、身にはならないですよね。

『神との対話』と一緒に買った感情の本が、自分を変えてくれた

――野口さんが何度も読み直すような、影響を受けた本を伺えますか？

野口敏氏: 『神との対話』は、15回位読んでいますね。書き込みもいっぱいしています。今も持っていますよ。どうぞ、見てください。書き込みが甚だしいでしょう。

書き込みにはこうあります。
「家庭はいつも平和で、親はいつも子のことを思い、二親がそろい、必ず仕事を持ち、結婚すれば子を持ち、いつも健康で収入のうちで暮らし、うそは決してつかず、などと決め付けネガティブな感情を抑圧しているからつまらない人になってしまう」

野口敏氏: それ10何年前に書いたものですね（笑）。そういう風に人間は正しく前向きでいないといけないんだっていう縛りがあると、そこからずれちゃうとしんどいんでしょうねって書いてあるんでしょうね。

――『神との対話』のどういったところに魅力を感じられますか？

野口敏氏: 神様と対話する本といっても宗教の本ではないんですね。神を信じなさいとかそういう本じゃないんですよ。ある時この作者が生活に困って、「何で神は私を助けないんだ」と紙に書く訳です。そうすると、神が自動書記みたいな感じで「いつもお前は助けないと思っているのか」みたいな感じで対話が始まって、それを1冊の本にしたという内容です。逆に言うと、神を信じる必要はないんですよということも言っているんです。神は完ぺきなのに、何で君たちにあがめられたり恐れられたりしないといけないと思うんだということが書いてあるんですよね。そういうことは気にしないで、情熱を持って生きれば良いんだよみたいな部分が面白かったんですよ。宗教の神は逆らったら「地獄に落とす」とか言うじゃないですか。そういうことは全然なくて、地獄なんてない、何をしようと最後には私のところに帰って来るんだから、自分を鎖で縛らないで自由に生きなさいというようなことが対話で出てくるんですね。

ただ、「神との対話」は600万部位、全米で売れているんですけど、とにかく難しいんですよね。とても深い本なので、多分どんな人も完全に理解することは無理だと思うんです。何を書いているかわからないところもあるんだけど、面白いところもいっぱいあって、わからないところは読み飛ばす。読み飛ばして最後までいくと段々わかってくるんですね。

――『神との対話』を読もうと思われたきっかけはどういったことでしたか？

野口敏氏: インスピレーションですよね。第1部が新聞の広告に載っていたんですよ。もうこれは買おうと思って決めていたんです。そうしたら、たまたま書店の前を通ったらあって、買おうと思ったら、感情に関する本が一緒に並んでいて、偶然一緒に買ったんです。全然違う本ですけど、感情に関する本は、神との対話を読む上ですごく参考になったんですね。両方なかったら無理でしたね。この本があったので今の私があるんです。本には「偶然の出会い」があるから、気になったら絶対買わないといけないんです。どんどん本は入れ替わるので、その時買わないともう次で会えないことも多いですから。偶然の一致って、大事にしないといけません。誰々と会ってみないかとか、こんなところ行ってみないかとか。そういうことを言われたら、リスクが大きい場合は別ですけど、チャンスがあれば乗ってみないといけませんね。

――野口さんは電子書籍は利用されていますか？

野口敏氏: 持っていないですね。

――野口さんの本をスキャンして電子化して読みたいという読者もいらっしゃると思いますが、例えば紙の本を裁断してスキャンされることについて抵抗を感じられますか？

野口敏氏: 買っていただける方と全く同じで、持ち運びしてまで読んでいただける訳ですから、ありがたいと思いますよ。皆さんのためにもうちょっとまた良い本を書かなければと思います。

――電子書籍の動画や音声が収録できるなどの技術的な可能性は、コミュニケーションに関する書籍と親和性は高いのではないでしょうか？

野口敏氏: そこまで考えていなかったですけど、言われてみれば、本当にそうですよね。私は動画自体は作ってるんですが、本と合体するとは思っていませんでした。確かに動画が付いている本があると面白そうですね。

ベストセラー・ロングセラーの誕生秘話

――野口さんといえば、ベストセラー作家でもあります。作品が売れ続けていますね。

野口敏氏: 『誰とでも15分以上会話がとぎれない話し方66のルール』が、もうちょっとで80万ですね。出版社が今突然「100万部キャンペーン」っていうのをやってくださって、1ヶ月で2万5千部増刷なったんですよ。5月にはシリーズ第3弾が出ます。今から書くんですけど、今までになかった本にするつもりです。もしかしたらすばる舎さんは次の本を考えて、3冊合わせて100万部って言っているのかもしれませんね（笑）。

――『誰とでも15分以上会話がとぎれない話し方66のルール』を執筆されるきっかけはどういったことでしたか？

野口敏氏: 最初は電話で依頼があったんです。編集の方が私のブログを読んでいてくれたみたいですね。それで「1ヶ月で書いてください」と言うんですよ。「「会話がとぎれない」っていうテーマは、絶対ヒットするんで、他社から出る前に、なるべく早く書いてください」って。だから、急いで書けるっていうことも条件に入っていたんですね。その当時は本1冊出していましたけど、すごいヒットって訳じゃなくて、世間的にそんなに知名度もなかったんですね。それでもわざわざ声を掛けていただいたので、極力受けようと思っていましたが、結構忙しい時期だったんです。教室の教材も作って、会社の研修も長期で請け負っている会社があって、それもやりつつ1ヶ月なんで。今は本を書く時、2ヶ月もらっていますからね。1週間で2章書くっていうのはしんどいんですよ。仕事掛け持ちしていると1週間で1章がぎりぎりなんですけど、ただ、20年間のエピソードもいっぱいありましたので書くのは早かったです。

――編集者が絶対の自信を持つ企画と、野口さんの20年のノウハウの蓄積がピッタリ合ったんですね。

野口敏氏: この本は本当に皆に喜んでもらえて、多くの人の不安を軽くできたと思います。読者の皆さんも、すばる舎さんも、私も、とても幸せになったのではないでしょうか。私はこの本を出版する時、この本は20年分書いているから、「30万部位は売れないとちょっとさびしいですよ」って言ったんですけど、すばる舎さんは2万部売れれば万々歳と思ってたみたいです。この本が売れたおかげで、今まで他の作家の方が仕事を引き受けてもらえなかったのが、「『会話がとぎれない』を出したすばる舎です」って言うと、「じゃあ出しましょうか」という風に話が通りやすくなったとも言っていました。

―― 一時的なブームではなくて、ロングセラーになっていることについては、なぜだとお考えですか？

野口敏氏: 会話の本質が詰まっているからでしょう。毎年大体年初めから6月位までがいっぱい売れるみたいなんです。これは会社に入って買う人が多いからでしょう。あとは、キャバクラの近くの書店がとても売れているらしいです。お嬢さんたちが読んでくれているのかなと思っています。

ライターは絶対に使わず、自分の言葉で書く

――執筆される際に気をつけていることや、こだわりはありますか？

野口敏氏: あまり考えたことなかったですね。いつも自由に書いているんで、書きたくないものは書かないということでしょうか。私の言葉で書きたいので、ライターさんは絶対使いません。

――先ほど企画のお話がありましたが、本作りに編集者の存在は重要だとお考えですか？

野口敏氏: もちろん。私の担当編集者さんは天才ですよ。『会話がとぎれない』は、タイトルで売れたんです。タイトルを考えたのは編集者です。最初からタイトルは決めてあったんですが、私は最初、「変なタイトルだな」と思ってました。出来上がった表紙も赤紫で変だなと思いました（笑）。だからタイトルなんかは編集者に任せた方が良いですよね。著者も一応考えますけど、編集者はプロですから。よっぽどひどかったら、口を出しますけど、なるべく文句を言わずに従います。

――ヒット作を連発している今も、独善的にならず、謙虚なのですね。

野口敏氏: デビューしてすぐ売れたらそうなったかもしれませんけど、20年下積みしてきたんで。だって、いつまたあの苦しかったところに帰るかと思えば、謙虚にしていないと人が相手にしてくれなくなりますから。自分1人で書いた訳じゃないですからね。生徒さんも何万人も来て、1人1人の生徒さんが言ったことが書かれている訳です。うちの社員も協力して、出版社の人もとっても頑張ってやっていただいています。だから、自分の力だけではないということはよくわかります。

――最後に、書いてみたいジャンルの本など今後の展望をお聞かせください。

野口敏氏: 以前はベストセラーを出すというビジョンがあったんです。まさか、本当になるとは思わなかったものですから、今はしたいことがだいぶできてしまった感じなんです。新しいビジョンを考えないといけませんね。もちろんこれからも会話とか人間関係の本は出していきますが、今までの本でちょっと弱いのはビジネスなんですよ。婚活などもやっていますので柔らかいことを教えるだけないのかなって思われがちなんですけど、先ほど申し上げたコメント力とか、説明力とか、ビジネスで使うコミュニケーションっていうことにも、われわれがこういうことができるんですよっていう風に告知をして、そちらの方でもベストセラーになるようなテーマを考えていこうと思っています。

(聞き手：沖中幸太郎)