電子の時代、出版社はなくなるかもしれない
――本を執筆される中で、実際、出版社・編集者の方とのやり取りもたくさんされていると思いますが、掌田さんの考える理想的な出版社・編集者のあり方はどんなものでしょうか?
掌田津耶乃氏: 電子書籍とか、そっちの方向で考えていくと、どうしても頭の中に、出版社って必要なのかなっていうことに結びついてしまう。今、インターネットがあって、誰でもサイトなり何なりが作るわけで、誰でも情報発信は可能なわけですよね。それを宣伝しようと思ったらGoogleのAdwordsとか、誰でもお金をかければそれなりの宣伝ができてしまう。となると、そうなってまで出版社が必要な理由はやっぱりない。たぶん編集プロダクション的な部分はあると思うんです。
要するに編集プロダクションというよりは、デザインとかアイデアを出す仕事という部分はきっとあるんでしょうけど、出版という今の形はたぶんなくなって来るんだろうなという気はするんですね。そうすると今、出版社編集と著者という感じがなくなってきて、著者でもセンスのいい人はデザインの部分も自分でやっちゃうでしょうし。そうじゃなくて、自分は文章を書くだけに徹するという人ももちろんいるでしょう。そうするとその間をつなぐ部分で、何らかの、今の編集に相当する部分はあるんでしょうけど、そうすると出版するという部分は、おそらくほぼ、消えて来るんじゃないかという気はします。
ITのテーマの中でも、自分にしか書けない面白いものを書きたい
――今後の活動などについても伺えますか?
掌田津耶乃氏: インターネット自体、IT関係自体というのは、この先必ずどんどん伸びるのはわかるんです。そういう意味で言えば、いろいろな技術が出てきて、それがそれなりに、入門的な物とか、解説物は需要はやっぱりそれなりにずっとあり続けるとは思うんです。その中で、「これは別に自分が書かなくても誰かが書けばいいんだよな」という物ばかりだと、あんまり自分の必要性といいますかね、自分がその本を書かなければならないというものが、薄れてきてしまうんですよね。そうなると、どうも仕事として面白くない。今そういう中で、意図的にテーマとして考えているのは、Google関係ですよね。
何年か前から、意識して自分の環境をGoogleにシフトしています。今、原稿や単行本の執筆とかも全部GoogleAppsのドキュメントで書いていますし、編集者ともファイル共有で編集作業を行っているんです。GoogleAppsスクリプトはちょっと今までにあったサーバーサイドのものとは全然違う感じの、そういうエクセルのマクロのようでもあるし、サーバーの開発環境でもあるし、あるいはいろいろなGoogleのサービスをくっつける接着剤のようなものでもあるという、非常に不思議な魅力があるんです。ただテーマとしてどこに話を持っていっても、「もうちょっとしたらやりましょう」っていう感じですね(笑)。だからこういうドキドキするような新しいテーマを書いていきたいですね。
(聞き手:沖中幸太郎)
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