柴山政行

Profile

1965年神奈川県生まれ。埼玉大学経済学部卒業。センチュリー監査法人(現・新日本監査法人)を経て、合資会社柴山会計ソリューション、柴山ソリューションズ株式会社、柴山政行公認会計士・税理士事務所を経営。同時に、執筆・講演・中小企業向けの会計コンサルティング等も行う。無料メールマガジン「時事問題で楽しくマスター!使える会計知識」は、読者5万5000人を超え、メールマガジンを解説したCDセミナー「経済・会計・時事ニュース通信」は200名以上の会員を持つ。近著に『ストーリーで頭に入る日商簿記3級合格一直線』(エクスナレッジ)、『速習! 日商簿記3級[トレーニング編]』(中央経済社)など。

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会計教育で、事業を創出する人を育てる


――柴山さんは子どもたちに会計を教える活動もされていますね。


柴山政行氏: よく「投資教育が必要だ」などと言いますが、私は子どもに投資教育をすることは優先順位からして後だと思っています。馬券を買うように、どのベンチャーの事業がもうかりそうかと読んで投資する教育ではなくて、優秀な馬をいっぱい作るのが日本人だと思っています。
なぜアメリカで投資が発達するかというと、いろんな人種がいて渦がいっぱいあって、ビル・ゲイツとかザッカーバーグとか、Googleの創業者のセルゲイ・ブリンとかラリー・ペイジとかが出てくる。そしてその馬に投資する人もいる。日本人って単一民族で、アメリカほど懐が深くないから、馬と投資家どちらかにいく方が合理的ではないかと。そして私は、基本は馬だと思います。アニメのザッカーバーグを作ればいい。まずは競走馬を育てることに徹して、たくさん出てきたら、後に日本にも投資家が発展するのだと思います。

子どもに教えるべきは帳簿付けだと思います。まず小遣い帳を付けさせる。他人に投資するためではなく、自分のビジネスを育てて、自分自身の事業に投資するためです。日本人は自分でやったことの記録を付けるのは得意です。今、「キッズ簿記」という講座をやって、小学生が簿記2級に受かったりしていますが、子どもの段階でお金の動きについて記録するという習慣を付ければ、数字の感覚が変わる。小学生が「減価償却はいくらか」とか、「当期純利益と違うじゃん!」とか、「固定資産の計上が漏れているよ」と言って、お母さんがびっくりしています。
日本人はきめ細かいですからニーズを見つけるのはうまいはずです。自分がやっていることがどういう結果を生んでいるかという記録を付けて、ビジネスチャンスをつかむ人を多く育てたいと思っています。その記録を見て投資するのは欧米人でもいい。現場で自分なりの強みを生かして、上位4%の中に入って、その市場で確実に収益を確保する若い人が1万人も出てくれば、GDPが一挙に上がりますし、消費税率アップなんていらなくなります。

――新たな事業が育たなければ、経済・財政も結局危機に陥ってしまいますね。


柴山政行氏: 個人的な意見で言うと、日本の財政は破たんする確率が高い。家計簿で言えば、40~50万の収入で60万、70万、下手すると90万の生活をして、差額は借金している。金利が上がれば当然負担は増える。消費税率をアップしたぐらいではどうにもならない。消費税率は、ゼロから3%が1989年、3から5%が1997年、どっちもアップした2~3年後から税収は激減している。世間ではたまたまバブルが崩壊したからとか、アジア通貨危機が重なったからとか言うけれど、それだけではないと思っています。ちなみに1989年の時の税収は60兆あったのですが、今は40兆。バブルであったとはいえ、信じられない数字です。政府も、消費税率がアップすれば景気が下がることは分かっているはず。では何で上げるかというところに裏がある。税率をアップさせたいのはお役所の事情ではないか。軽減税率の問題も大きくて、いろいろな業界が軽減税率の恩恵を受けたいと考えるとか、天下りが増える余地が高まるとか…。数字が分かってくると、増税の裏も見えるし、「アベノミクス」も付け焼き刃の可能性が高いと分かる。子どもに簿記をもっと教えたいというのはそういう意味もありますね

(聞き手:沖中幸太郎)

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