0.1%の差は読書で生まれる
――起業されてから、読書において変わったと思われることはありますか?
平野友朗氏: サラリーマン時代は、本で読んだことを使える場所がなかったのだということ、それが大きな違いだと分かりました。今は自分が本で読んだことを、すぐに経営に活かせる。会話の糸口にもなるし、売り上げにもつながります。
私は「平野友朗の思考・実践メルマガ【毎日0.1%の成長】」というメルマガを書いていますが、365日で1.44倍、これを10年間続けると38倍ぐらいと「日々の成長を続けていくと、変わっていける」という思いが、私の1つの支えでもあるのです。この「0.1%」の差というのは、私は読書で生まれるのではないかと思っています。1冊読んだら0.1%変わるとすると、1年後にかなりの差がつくわけです。経営者の多くは本を読んでいるので、同じペースで本を読んだのでは先を行く経営者には追いつきませんし、さらに多くの本を読まなければ差がついてしまう。「同じ本を繰り返し読め」と言う人もいますが、私は「好きなように全部読もう」と言っています。過去の自分と比べると、増えているのは読書量です。
――先ほどのメルマガ「毎日0.1%の成長」で影響を受けた方も多くいらっしゃいますが、書くきっかけというのはどのようなことだったのでしょうか?
平野友朗氏: 書くきっかけは起業1年目に、「自分のことをもっと知ってもらうためにはメディアに出なきゃいけない」と思ったことです。『月刊CYBiz SOHO COMPUTING』に起業した人を紹介するコーナーがあって、「出たい人、募集」と書いてあったので応募しました。そうしたら「メルマガの人は珍しいから」と編集長が取材に来てくれたんです。それで帰り際に、「どうやったら本を出せますか?」と素直に聞いてみたところ、数日後には企画会議に出ることになりました。そうやって、サイビズさん、ベストブックさん、日本実業出版社さんでの出版につながりました。1冊目は、講演の内容などに修正を加えてまとめあげ、2冊目は、自分が思っていることや考えていることを一気にアウトプットしました。3冊目は、1冊目と2冊目の経験を活かして書き上げました。編集者から「もっとネタはありますか」とか「ここに事例を入れると、もっと良くなるから事例を探していただけますか」などと宿題をもらって、お互いが納得するまで、ときには夜中のファミレスで何度も打ち合わせをしました。そうやって一緒に作り上げていきました。これまでに21冊出版してきましたが、1冊1冊に思い出がつまっています。
――理想の編集者とは?
平野友朗氏: 編集は大事です。私たちはコンテンツのプロであっても、本としての見せ方はあまり上手くないわけです。どういう順番で伝えたら盛り上がりか、その中でどのように完結させたらよいかなど、いろいろなことを編集さんに教えてもらいました。だから、手をかけてくれる編集さんが最高だと私は思っています。編集者のまとめる力は必要ですし、読者を騙さないタイトルをきちんと付けてもらえたらいいなと思います。タイトルを見て本を買ってみたものの「なんか違う」と思うこともありますよね。
――編集長に声をかけたことが本を出すことにつながったわけなのですが、書くことの原動力となっているのはなんでしょうか?
平野友朗氏: 「これ、本になりませんか?」と声かけるだけなら失うものはないので、どうしてみんなやらないんだろう、と思います。「本を出したい」と言う人は多いのですが、本当に出したいのならば、企画書を持ち込むなりできることはあるはずです。仕事を何年かしていれば、教えることも増えますし、本を書くネタもあると思います。自分で「少しできるようになったかな」と思った時に「できない人に教えてあげたい」と思ったのが、私の場合のコンセプトでした。いろいろと学び、賢くなっていく過程であっても、本は書けるものです。ステージごとに、その情報を必要とする人がいますし、教えることによって自分自身も成長できると思います。
自分に恥ずかしくない仕事をするべき
――書き手として大事にしていることや、こだわりはありますか?
平野友朗氏: 私は、本で完結してほしいと思っています。例えば、商品を売るために本を書く人もいらっしゃいますが、それはあまり良くないと思います。本を高いと感じる人もいるので、本が1,400円ならば、その金額に見合った内容だと読者が感じてくれるような情報を出す。「ターゲットが理解できる内容」というのを念頭に、出し惜しみせずに書き続けてきました。
――お仕事をされる上で、どういったところに使命を感じますか?
平野友朗氏: メルマガの仕事をしていて思ったのが、要は迷惑メールをたくさん送れば儲かるということです。でも、それはやってはいけないことで、難しいところでもあります。公害を撒き散らしても自分が儲かればいい、という考えに近いのではないでしょうか。そういうグレーなやり方をしている起業家も見てきましたが、中には被害者が出ているケースもありますので、恥ずかしくないことをやって評価される仕事をするべきだと私は思っています。だからこそ「メルマガはちゃんとやりましょう」というメッセージを発信し続けています。ビジネスメールのコミュニケーションが少しでも良くなれば、恐らく日本の経済は良くなると私は思っているので、そういうところを広げていきたいです。「みんなが良いことをしたらいい」という思いは、ずっと持ち続けています。
私にとって仕事とは、1人でも多くの人に良い影響を与えることなのかもしれません。物を売って社会を変えることができないなら、良いことをできる人を増やしていかなければならない。それがコンサルタントの使命であり、本を書くことも使命であると感じています。