渡辺隆裕

Profile

1964年生まれ、北海道出身。東京工業大学工学部経営工学科卒業、同大学理工学研究科経営工学専攻修士課程修了。博士(工学)。東京工業大学工学部社会工学科助手、岩手県立大学総合政策学部助教授、東京都立大学経済学部助教授を経て、現職。専門はゲーム理論、ミクロ経済学。特にオークション、リアルオプションとゲーム理論など、ゲーム理論の工学的応用などを中心としている。 著書に『ゼミナール ゲーム理論入門』(日本経済新聞出版社)、『書き込み式 最強のゲーム理論ノート』『図解雑学 ゲーム理論』(ナツメ社)。

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研究活動から教育啓蒙へ。ゲーム理論の面白さを伝えたい



首都大学東京都市教養学部経営学系の教授として、ゲーム理論を研究している渡辺さん。世界的な大問題から日常生活での問題まで、幅広く解決する手がかりを与えてくれるゲーム理論の重要性を伝えています。著書には、『ゼミナール ゲーム理論入門』『ゲーム理論(図解雑学)』『インターネットオークションの方式と比較に関する研究』などがあります。今回は、研究の道を歩むきっかけ、本、電子書籍についてお聞きしました。

今まで見たことのない数学の発見は、大きな喜び


――ゲーム理論とは、どういったものなのでしょうか?


渡辺隆裕氏: ゲーム理論というのは、企業や国家、個人などの問題について色々な協力をしたり、紛争が起きたりするのを、数式で分析するという学問です。今は、経済学を中心に標準的に使われるようになり、ミクロ経済学の大学院のテキストなどは、半分以上がゲーム理論になっています。ゲーム理論は経済学の中にあたりまえのように入ってきていて、最近は政治学や社会学、あるいは経営学でも使われています。全ての社会的な現象を、モデルとして厳密な形、そして統一した形で書けて、同じように語れるのがゲーム理論の魅力です。だからこそ広く使われているのだと思います。

――どのような研究をされているのでしょうか?


渡辺隆裕氏: 毎日数式を書いたり、定理の証明を書いたりと、かなり数学に近いことをしています。ナッシュ均衡という、ジョン・フォーブス・ナッシュという数学者が作ったゲーム理論の答があります。彼の答は、微分したりするなど、なめらかで連続した世界で答が出てきますから、その答も価格がルート2だったり、生産量が2.375だったりするんです。でも私が現在研究しているのは、その答が2や3などといった整数になる条件を探すことなんです。今は「その整数がゲーム理論の答になってくれる数学の条件とは、どのような条件なんだろうか」ということに興味をもって研究を続けています。研究をしていて、今まで自分が見たことのないような数学を作ったり、発見できた時が、一番喜びが大きいです。今までにないようなものを、自分たちで作っていきたいという気持ちが強いですね。

研究室での出会いが、数学の道へ進むきっかけに


――子どもの頃から数学はお好きだったのでしょうか?


渡辺隆裕氏: 子どもの頃はみんなのまとめ役で、学級委員長や生徒会長などをすることが多く、組織やクラスの難しさ、対立する者同士の難しさを感じていました。それと同時に、人をまとめる面白さということも小学校の高学年から中高にかけて感じていました。それもあって、高校までは会社や企業などで働きたいという気持ちが強かったです。その一方で、数学や物理の理論なども大好きでした。右往左往する議論はとてもストレスがたまりますが、物理学や数学は、キチッと数式に書けて、なおかつモデル化されているのですごく好きでした。科学にも興味があり、高校の頃はブルーバックスの新書をよく読む科学少年でもありました。色々な分野に興味があったので、どうやって折り合いを付けて自分の将来を決めたらいいのかと、すごく迷っていました。

――大学はどのようにして決められたのでしょうか?


渡辺隆裕氏: 高校の時は、経営学と数学を、なんとかして結びつけられないかと考えていました。そこで調べてみると、経営工学という学問が東京工業大学にあると知り、「そこに行ったら自分のやりたいことができるのではないか」と思いました。社会組織や経営学や企業のことと、数学や理論を一緒に勉強したいという気持ちが強かったんです。

――大学では、どのようなことに取り組まれていたのでしょうか?


渡辺隆裕氏: 学生の時は生活協同組合の委員会に所属し、食堂の改善について考えたり、食品添加物に反対したりなど、リベラルな市民運動や組織活動のようなことをしていました。でも、その組織に対して疑問に思うこともあり、次第に「組織の中で人のわがままに左右されて何かをやっていくのは嫌だ」とか「企業に入って派閥の違う人たちの中で、もまれて苦しんで生きていくのは嫌だ」と考えるようになりました。

――組織から離れ、徐々に研究の道を目指すようになったのですね。


渡辺隆裕氏: 何か1つを極めていきたいという気持ちがありました。生活協同組合での色々な活動のために満足に勉強できていなかったので、4年生の時には「厳しいけれど、しっかり勉強ができる」という評判だったオペレーションズリサーチの研究室に入りました。そこで出会った先輩方は、知的好奇心が非常に高く、読書家で博識があり、なおかつ数学が大好きという方々でした。それで、その研究室で真剣に勉強をしてみようと決心し、大学4年からは、それこそ夜も寝ずに勉強して、大学院に行きました。そうやって人間関係や組織から離れて、数学の道へと一歩を踏み出しました。

著書一覧『 渡辺隆裕

この著者のタグ: 『大学教授』 『数学』 『可能性』 『研究』 『教育』 『理系』

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