関橋英作

Profile

青森県八戸市生まれ。外資系広告代理店JWTでコピーライターから副社長までを歴任。ハーゲンダッツ、キットカット、デビアス・ダイヤモンド、NOVA英会話学校など、たくさんのブランドを担当し、数多くの賞を獲得。特にキットカットにおいては、キットメールでカンヌ国際広告祭メディア部門で日本初のグランプリ受賞。その他に、日経BPオンラインコラム「マーケティング・ゼロ」をはじめ、執筆、講演、企業研修など幅広く活動する。 著書に『マーケティングはつまらない?』(日経BP社)、『チーム・キットカットの きっと勝つマーケティング―テレビCMに頼らないクリエイティブ・マーケティングとは?』(ダイヤモンド社)などがある。

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人を成長させるのは「物語」


――今まで様々な本を書かれていますが、本の役割はどういったものとお考えですか?


関橋英作氏: 本はとても大事だと思っています。本は、どんなものでも物語になっています。人間は必ず物語を通して泣いたり笑ったり感動したりして、成長する。小さい頃に読む絵本も形式は物語ですし、そこから人間としての感情や理性というものを学んでいる筈です。逆に、物語を読まない限り成長できません。哲学というものは一見難しいようですが、結局は「どう生きるか」ということを知るためのもの。それを知るためには、自分が感動しやすい物語などを読むことが必要です。そういう物語を通して自分のコアの価値ができ、その価値のフィルタを通して、皆、どう生きるかを判断している。ですから、基本的には全員、受け売りで生きているのかもしれませんね。僕も知識をたくさん本からもらっているので、その知識を本の執筆で開放しています。

――知識を次に伝えていくわけですね。


関橋英作氏: 僕の前の人から僕へ、僕から次の人へ繋げていく。人間の役割は、通過点にある。それに尽きると思います。歴史というものは通過点の連続で、そうやって人類が繋がっているわけです。知を伝えることは、血を繋げていくことと同じ。血と知です(笑)。知識を、「自分のものだ」と隠していては、おそらく良いものはできません。
このようにたくさん喋っている中にも、色々な知があります。自分が発信した知を誰が受け取るかはそれぞれですが、発信していかなければ、世間の知のベースが上がっていきません。今は、知のベースが低くなっていると思います。色々なことをジャッジしたりすることに対して、基準が無さ過ぎるのです。選挙に行っても、「僕1人くらい投票したって何も変わんない」という考えの人がいますが、1人が投票するからこそ変わる。人間は、自分にできることしかできないけれど、それをやることが、100%生きているということなのです。
日本は、実はもの凄く異質なものを受け入れています。江戸時代には、異なる者を尊重するという尊異論というのがありましたが、色々なことを尊重し、色々な価値を皆で共有して生きていくのが、日本。日本人は、「自然と動物と人間は同じ」と思っている珍しい民族です。ですから、自然や動物をどうやって守っていくか考えることも人間の、日本人の役割の1つだと思います。



――執筆には、どのような思いを込められていますか?


関橋英作氏: 皆、本当はポテンシャルとしてクリエイティブな能力を持っているのに、蓋をしている。その蓋をとり、自分の持っているクリエイティビティを発揮すれば、世の中は面白くなるし、人生も面白くなるし、仕事も上手くいくと思っています。その蓋を開けられるような刺激を与えようという想いで本を書いています。

紙には情緒、電子には機能


――電子書籍については、どのようなお考えをお持ちですか?


関橋英作氏: 電子書籍はポテンシャルがたくさんあり、本とは役割が違うと思います。学者にとってはツールや動画にもなる。アミューズメントであり、アカデミック(学術的)でもあるのです。逆に本の方が、普通の人のためのもののような気がします。ですから電子書籍は、役割が明快でないと売れないと思います。「電子書籍の方が便利ですよ」というのは、マーケティング的に間違っているのではないかと僕は考えていて、だから伸びないのだと思います。

――電子書籍と本には、どのような違いがあるのでしょうか?


関橋英作氏: 本に情緒がある代わりに、電子書籍には素晴らしい機能があります。ですから、電子書籍を伸ばすためには、調べる時に色々な情報にジャンプできるとか、学術的にもっと色々なものをストックしておけるとか、その機能を推し進めればいいわけです。
アメリカでは、元々ペーパーバック(紙で印刷された表紙を用いた本)なので、電子書籍と変わりませんが、日本の装丁は凝っていて素晴らしいです。そういったように電子書籍と紙の本は、そもそもが別物なので、将来も競合はしないと思います。紙対電子ではなく、情緒対機能と考え、2つを両立すれば良いわけです。

――本を作る際、編集者の方と多くのやり取りをされていると思いますが、理想の編集者とはどういうものだと思われますか?


関橋英作氏: 編集者は、知の仕事をしています。ですから、ただ知っているだけではなくて、人生のナビゲーターのような人が編集者にならないとダメだと思います。ある本を導いていく、というような人にならないといけない。1つの知識だけではそういったことはできないので、「これを売りたいのですが、これを読む時には、これとこれとこれも読んで下さい」というようなやり取りがあってもいいのではないかと僕は考えています。

――著作活動も含めて、今後はどのようなことをしていこうとお考えですか?


関橋英作氏: 今の日本が持っていると思っているものと、元々の日本が持っているものは違う。そんな価値観を、1人でも多くの人に伝えて、体、自然を通して、皆がそれを共有してほしいなと思っています。それを実現させるために、少しずつ行動していきたいです。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 関橋英作

この著者のタグ: 『アイディア』 『考え方』 『マーケティング』

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