蜘蛛の糸にしがみついてはいけない
金谷俊一郎氏: 企業のセミナーで西国立志の話をする時によく言うのは、今の平成不況は大多数の中流がいて、一部が成功するけどいつかは凋落していく。するとまた誰かが盛り上がってきて、凋落していく。根本から変わっていかないから、日本は閉塞しているのです。昔の日本の考え方というのは、「自分を殺すということじゃないか」という意見もありますが、そうではありません。社会を根底から良くしていくことで、自らも輝かせていこうとしているのです。地獄にたらされる1本の蜘蛛の糸ではないわけです。
――誤解されて解釈されているのは、問題ですね。
金谷俊一郎氏: 修身の考え方もそうですね。「お国のために命を捨てましょう」と言っているわけではないのです。靖国神社の問題もその一端だと思います。神様は数える時に1柱2柱と数えますが、靖国神社に祀られている神様は246万柱です。日本の神道においては、戦争でも病気でも、死ぬとみんな神になります。八百万の神の発想ですよね。等しく戦死者を祀っているのが靖国神社なのです。
――戦勝国が決めた「A級戦犯」という発想も、見直す必要があると思います。
金谷俊一郎氏: 一方的な発想で決められるものではないのです。ヨーロッパには全知全能の神がいて、「1つの神が全てのものを創りたもうた」という発想です。その発想から、日本を戦争に導いた人間を神様と崇めているということで、分祀しろといった反発が起きます。でも日本の神道は死ぬと神になるのです。外国の人はそういう発想が根幹にないので、そういった違いをしっかり伝えないとおかしくなるわけです。もちろん靖国の問題はそれだけではありませんが、まずは発信者側がそのことを十分に認識する必要があると思います。
――先ほどのW杯の話も、それで説明がつくような気がします。
金谷俊一郎氏: ワールドカップのコートジボワール戦のあとゴミを拾って帰るのは、そこに神がいるという発想のもと、そこを汚すことは冒涜であるという考えの表れなのではないでしょうか。「12、3歳くらいから神話を教えないと、その民族は滅びる」というトインビーの言葉もありますし、竹田恒泰先生などもよく言っています。日本普及機構という財団は日本人の根底にある考え方を子どもたちに伝える、『古事記』と『修身』を子どもたちに伝えるために作りました。
日本を当たり前の国に戻したい
――日本普及機構の活動も含め、どのように展開されていきますか。
金谷俊一郎氏: 『修身』の精神や『古事記』や日本の神話を子どもたちが普通に知っている、そういう国にしたいという思いで昨年、財団を立ち上げました。そして今、9月から本格的に古事記の読み聞かせの授業を始めようということになり、今、協賛などを集めているところです。『古事記』や修身の読み聞かせは、色々なところでやっていきたいですね。読み聞かせができる人を育てて、地元の公民館や、学童保育の場などでやりたいと思っています。
埋もれているものをお伝えするという役割として、今後も著述活動を続けたいと思っています。そのための財団であり、書籍、執筆活動であり講演であると思っています。先ほどの話にもあった、歴史教科書のようなものも作りたいですね。
――当たり前の国にしたい、と。
金谷俊一郎氏: 自分の国を愛することは、他国を侵害するのではありません。むしろ正しく尊重できる正常な国際関係に必要だと思います。私は常々「私の本が売れなくなったら、初めて日本はまともな国になる」と考えています。竹田恒泰先生も同様のことをおっしゃっていました。当たり前になって「もう大丈夫です」となるか、日本が変な方向にいって、「金谷は要らない」となるか。もちろん前者のようになって、70歳で悠々自適に暮らすのが理想ですが(笑)。日本が良い国になってほしいと願い、これからも活動を続けます。
(聞き手:沖中幸太郎)
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