世界の見本となる日本
――日本は課題先進国、などとも言われていますが。
朝倉慶氏: ウクライナ情勢やその他の紛争など、色々な対立軸の問題などもそうですが、あまり深く対立していくと、全体的に滅びてしまうのではないかと思うのです。明治維新は、諸外国の歴史を見ていても稀なことで、日本だけが、大変革に対して、最小の犠牲で成し遂げてきたという歴史があります。
バブルが崩壊しても暴動は起きず、地震が起きても助け合いの精神でやれる。原発の事故も、他の国だったら対応不能になっていた可能性もあります。ここまで日本人が悲劇的な経験をしているというのも、必然性があるように私は思うのです。それに上手く対応できるというのが日本人の力です。
これから国債の暴落による大混乱が世界で起きてしまうと思っていますが、その時も、日本が混乱なく乗り越えることができる素地を持っているということを世界に示すことができるかもしれません。今後起きるであろう経済混乱においても、ソフトランディングできる、つまり志を持った人が乗り切ることによって日本全体が上手く対応できれば、それをメッセージとして世界に伝えられるのではないかなと思っています。
――日本の対応が世界の見本になる、と。
朝倉慶氏: 日本人はおそらく1000兆円の国債がインフレになった時、大混乱でどうしようもなくなってしまうと思うのです。ヘッジファンドの人たちが来て、全部奪い取られ、全部海外に持っていかれるかもしれない。言うことを聞いていたら全部やられてしまう。そこで日本人の有識者何人かが、大きな富を得ることで、それを国内に還元する、ないしは色々と発信することで、悲劇的な状態を乗りこえられれば、それは1つの経済的な混乱の対応の仕方というか、こういう風に対処できましたという見本になりますよね。地震の時と同様、そういうものが必要なのではないかと思います。
――時代に打ち勝つ投資が必要だと。
朝倉慶氏: 資産価値がなくなる時に、資産価値のベースを残せる方々を作っていくことです。そういう人たちが次の時代を作れる方々だと思いますし、勝つ方々が、志を持っていなければダメ。そういう人たちが、経済的な力を得ることによって、新しい社会を作ることができるのです。
私は50を過ぎて朝から晩まで勉強しなきゃいけないような勉強三昧の生活になりました。でもこれも1つの人生。これもいいなと私は思っています。今まで努力してこなかったのが色々やれるようになって、世の中のために何か出来るというのは、自分で言うのもおかしいけれど本当に素晴らしい、ラッキーなことだなと思っています。だからそれに感謝して、力の限りやっていきたいですね。
――「朝倉慶」としてどのような事を伝えていきたいですか。
朝倉慶氏: 経済、相場などの話をする人はみな、私とは違いエリートです。日銀にしても経済評論家にしても、経済のアナリストと呼ばれる人たち全員、ほぼエリートです。今、世界経済は、ギャンブル経済のようになっています。日本のお金もどんどんアメリカに流れていますが、そういう世界は相場のプロが仕切っています。ヘッジファンドも、ポーカーゲームの勝者からハンティングしたりしているのです。面白いからという意識で相場をやってしまう、そういう人間臭さやその辺りの感覚、相場の世界や心理、動きというのはエリートの人には、なかなかわからない。
経済は生き物なので、次から次へと動いていきます。ですから、その個々の情勢というのを細かく発信しないといけません。浮き沈みがあり、当たったり外れたりはするのですが、できる限り正確な情勢を伝える必要があります。私は、自分の経歴を強みにして違った視点で伝えていけると思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
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