金森修

Profile

1954年、北海道生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。博士(哲学・パリ第一大学)。筑波大学講師、東京水産大学助教授などを経て、現職。専門はフランス哲学、科学思想史、生命倫理学。 著書に『サイエンス・ウォーズ』(東京大学出版会)、『ベルクソン』(NHK出版)、『動物に魂はあるのか』(中央公論新社)、『ゴーレムの生命論』(平凡社)、『〈生政治〉の哲学』(ミネルヴァ書房)など。編著、共著も多数。

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3・11以降の日本に思いをはせて



金森修氏: 最近、非常にショックだったのは、3・11以降の日本の社会の成り行きです。科学史をやってきた人間としては、原発事故に関しても日本の社会のあり方が凄くショックで。何本か攻撃的な論文も書きました。1つは、言うべきことは言っていこうというのがあります。罪のない人たちの生活を破壊する、生命を破壊するようなことに対しては、警鐘を鳴らしていかなければならないと思っています。実は、最近脱稿したばかりの新書が、あと少しで出ます。科学論というか、科学の成り立ちと変質、それがどう変わって、公益性という古典的な規範でさえ、今、おかしくなりつつあるのかということに 焦点をあてています。少し批判的な本ですが、今まで私がやってきたことの一つのまとめのような本です。

――先生だからこそ書けるものを、出していく。


金森修氏: それなりの年齢ですから、自分の個性と自分の限界は自覚しています。若い頃は色々な色があって、自分の中に黄色もあれば紫もあれば青もある。色々な影響も受けて、自分のことがよく分からないわけですよ。それが、だんだん年をとってくると、他人に影響を受ける比率が減っていって……感受性が鈍くなってくるせいでしょうね(笑)。自分の中の、これしかできないと思うものが決まってくる。ある1つの色に収れんしていくのです。最後はすーっと、自分の人格の中心が決まってくると、思っています。私は完全にその年齢なので、あとは自分でやれることをやりたいし、これは絶対に言っておきたいと思うことは言いたい。あとどのぐらいできるかどうか分かりませんが、可能な限り長く続けていきたいなと思います。

――いま、先生の興味はどこにありますか。


金森修氏: 子供にはやはり自由に生きて欲しい。自由というのは実は凄く大事で。それを、折に触れてこれからも言っていこうと思います。あとは、日本の3・11後があまりにひどいので、今の日本の社会に問題意識は持っていますが、そうは言いながらも、今まで築いてきた日本の文化は大事にしたい。ですから、人間が考えてきたこと、やってきたことはこんなに面白いというメッセージを本の中で伝えていきたいです。私はすでに60歳ですので、いいとこ、あと20年かなと思っていますが、昔、美術史などをやっていたのが懐かしくて。私の仕事は科学思想史ですが、その知識をベースにして、そこから美術や文学をもまたいでいくような仕事がしたいなと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 金森修

この著者のタグ: 『大学教授』 『コミュニケーション』 『海外』 『哲学』 『思想』 『科学』 『学者』 『考え方』 『可能性』 『紙』 『歴史』 『研究』 『宇宙』 『子ども』 『人生』 『世代』 『科学者』 『バブル』

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