「ためて、増やして、進化する」
藤野英人氏: 「今いる人に喜んでもらいたい」という思いが常にありますし、私はサービス精神が強いのかもしれません。喜んでもらいたい、楽しませたい、ワクワクしてもらいたいのです。ファンドの仕事は、もちろん成績を上げることも大事。でも英語で言うと、私たちの運用の仕事はperformance(パフォーマンス)です。
――performance(パフォーマンス)であって、決してresult(リザルト)だけではない、と。
藤野英人氏: だからファンドの運用では、成績のことを「パフォーマンスどうですか?」という風に言います。他にperformanceを使うといえば、絵やダンス、音楽や本がありますよね。要はその過程も含めた中で、実際にその軌跡を見せるというのがパフォーマンスなのであって、運用の話も、芸術的行為に近いのではないかと私は考えています。舞台芸術のような感覚でもあります。成績そのものの軌跡もそうですが、何に投資をしているかというところもサービスだし、それを語ることもサービスなんです。時代背景なども含めて、自分たちがどういう気持ちで、どういう形で運用しているのかという部分をパフォーマンスとしてどう示していくか。その過程を通じて、多くのオーディエンス、私たちの顧客に喜んでもらいたいのです。
基準価格が出てくると、Facebookで「今日のファンドの成績」というように必ず呟くようにしています。これも一日の軌跡を見せている、パフォーマンスの一つなのです。
ですからファンドが下がった時も、パフォーマンスとしてきちんと伝えます。良い時も悪い時もある。まさにもがき苦しむわけです。そのもがき苦しむ過程も含めて、色々見てもらうということ。今、100社に投資をしていて、それぞれの会社に社員がいて、日々活動しているわけです。ビジネスで成功して上司に褒められている奴もいれば、うまくいかなくて、気持ちが沈んで山手線に座って何周もしている奴もいると思うんです。そういうものも含めた人間の営みがファンドなのです。ファンドは、一見ドライな数字となって出てきますが、その中には様々な人間の活動があるんです。数字の裏には、沸き立つような熱量もあれば、小さな熱量もある。それら全部とは言いませんが、そういったものを私は提示していく。これがパフォーマンスなのです。
この仕事は、小さい喜びから大きな喜びまで、毎日、様々な喜びがあります。100社ありますから、その中には、上がる株、下がる株が必ずあります。そういう面で見ると、毎日色々な喜びがありますよね。それから、色々な会社の起業家、経営者と会って、「こういう人に会えて良かったな」とか「すごい生き様だな」と感じたりする、出会いによる喜びもあります。また、実際に成果が出て、「儲かりました」と、お客様からお礼の電話が掛かってくることもあります。そういう時に、「ああ、やってよかったな」と思います。私たちは今、3年連続ファンド大賞を取っていて、今、4年連続を目指しています。それが取れたら、大きな喜びとなると思います。ファンド大賞を獲るというのは、自分の名誉のためでもありますが、ファンドマネージャーそのものの名誉もあって。「ファンドマネージャーってかっこいいね」とか「ああいう仕事に就きたいね」と、一人でもいいから、子どもに思ってもらうこと。それが次の世代にとってはすごく重要なので、それはなんとか達成したいですね。投資教育というのは私にとっての、重要なミッションの一つです。
――投資の文化を伝えていくのですね。
藤野英人氏: それが自分の大きな使命だと思っています。お客さんには、最終的には投資で資産を増やして、より進化してほしいですね。私たちがよく言うのは「ためて、増やして、進化する」ということ。海外旅行に行くとか、結婚するとか、老後の生活に不安がなくなるとか、家を買うなど、何か新しいことをスタートできることが大事だと思います。お金を増やすこと自体が目的なのではなく、それぞれの人の進化を、私たちはお手伝いしたいのです。
進化したいと思うところへ、連れて行ってくれるサポーターという、“ひふみろくん”というゆるキャラもいて、LINEのスタンプも作っています。単なる金融商品を届けているだけじゃない私たちの想いを、ひふみを通じて感じてもらえるようにこれからも取り組んでいきます。
(聞き手:沖中幸太郎)
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