水野俊哉

Profile

1973年、東京都生まれ。 ベンチャー企業の経営者、経営コンサルタントなどを経て2008年1月「成功本50冊「勝ち抜け」案内」(光文社)でデビュー。プライベート重視のライフスタイルのためマスコミ露出や外部講演は行っていないが、自身が主催する「水野俊哉出版セミナー実践編」は開講から7年で約200名が受講し、多くの著者を輩出し、150冊以上の出版実績を誇る。 出版プロデュースも手掛け、2015年には「理想の出版」を実現するため「カシオペア出版」を設立。2015年5月発売の「フリー&マネー 彼らが楽して大儲けした57の秘訣」が同レーベルからの最初の著作となる。趣味はサッカー、ドライブ、お酒を飲むことと読書、旅行。
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幸せの価値観を見直してみよう



「理想の出版社を作りたい」その想いから、昨年末に「カシオペア出版」を立ち上げられた水野俊哉さん。水野さん自身も様々なテーマ、切り口で書き記されてきました。水野さんの考える理想の出版社とは?執筆時の三つのコンセプトとは?その想いを、歩みを辿りながら伺ってきました。

読んで、書いて、しゃべって、教える


――水野さんの出版セミナー[実践編]が好評ですね。


水野俊哉氏: 2009年に始めた出版セミナーは、今二十二期になりました。OBの人たちは、大体190人弱になります。参加者の半分以上が本を出版し、その数は100冊以上となっています。『「ビジネス書」のトリセツ』という本を出版して、実際に理論が正しいか、実践してみようということで、本に書いている内容を講義するセミナーを始めたのがきっかけです。業界内では、凄く反響があって、プロの人も来ていました。自分の出版社のスタッフから、成功しているOBの方の動画インタビューを公式サイトに載せてください、という話をいただきました。皆さん凄く喜んでくれて、昔の話に花が咲いたりもします。なかなか厳しいかもしれませんが、今年はOBの人たち全員と会えたらいいなと思っています。

――このほど「カシオペア出版」を立ち上げられました。


水野俊哉氏: 著者と出版社との間に入って交渉しているうちに、やはり自分で出版社をやりたいと思うようになりました。出版のコンサルティングには、本を出すだけではない著者自身の経営コンサルティングのような側面もあります。「カシオペア出版」では、それぞれの業界でトップクラスの実績を残している芸能人やタレント、スポーツ選手、あるいは経営者が望むパブリシティをサポートしています。著者のマネジメントの一環として、出版記念講演などを企画するような展開もあります。

――出版して終わり、ではないと。


水野俊哉氏: 私は、「読んで、書いて、しゃべって、教える」を提唱しています。読んで書くというアウトプットは、一回ですが、それを講演やセミナーで話すことで、再びその情報が活性化していきます。一つのコンテンツを様々な展開に持っていくお手伝いも出来る出版社なのです。そのためには、企画の段階から展開につながるような内容にする必要があります。発売日の直前に「どうやって本を売ったらいいのですか」では遅いんですね。

本を心に拠りどころに


――『幸福の商社、不幸のデパート』では、水野さんの私小説とも言える経歴が書かれています。


水野俊哉氏: 子どもの頃から本を読むことは好きでしたが、ビジネス書には全然興味がなくて、“つまらない本”という印象でした。ビジネス書が面白いと思うようになったのは、ベンチャーとして起業する頃でした。渋谷が「ビットバレー」と呼ばれていた頃、そこにいた経営者は、読書家が多かったように思います。リクルートの江副さんの自伝『かもめが翔んだ日』や、松下幸之助さんやジョブズなどを紹介し合ったりしていました。

事業で悩みを抱えたり行き詰まった時には、リクルートの大塚寿さんの本を読んだり、経営者向けの財務の本を読んで心のよりどころとしていましたね。当時は、朝5時に帰宅して寝て、9時には起きるという生活を続けていましたが、月に一回くらい突然誰とも連絡を取らない日を作って、一人でこもって本を読んでいました。

――本が心の拠り所に。


水野俊哉氏: 仕事がらみを全て無視して、一日中読みたい本を読んで、疲れた体を充電していましたね。ほどなくして事業を辞めざるを得なくなった時は、何もやる気がなくなってしまいました。疲れが出て、体調も最悪でほとんど家で寝ている生活です。本を読む気力すら涌きませんでした。仕方なく外出する時は“会社を失敗したやつ”と見られるのが怖くて、帽子とマスクとサングラスといった格好をしていました。

再出発に当たり、始めることができた唯一の仕事は経営コンサルタント。会社の経営者は失業保険もないし、採用する側も、元経営者というとなんか面倒くさく思うのか、就職もできませんでした。当時は財布の中には小銭しかなく、バスにすら乗れず新宿や池袋に行くのも歩いていました。

――価値観が大きく変化しましたね。


水野俊哉氏: モノの見方がすっかり変わりましたよ。とぼとぼ歩きながら、通り過ぎるバスを見ては、「セレブだな」とか思っていましたね(笑)。お金があって、忙しくタクシーに乗っていた時には、車窓から「平日の昼間に、こういうところを散歩できる人は、優雅だよな」と思っていたけれど、皮肉にもお金がなくなってそれが実現されました。

歩きながらも「今もしかしたら、ちょっと幸せかもしれないな」と思えるようになったんです。「お金がない」と言っている人も、その代わりにストレスもないし、忙しくもない。趣味でランニングをしたり、家族で過ごす時間があったりします。お金を稼ぐことばかりに集中していた自分を振り返って「今まで、なんて意味のないことをやっていたんだろう」と思いましたよ。

「高価な料理じゃないと食べた気がしない」などと思っていましたが、「家で家族と食べるスーパーのお刺身の方がおいしい」ということに気がつきました。そういう価値観の転換があったのです。ベンチャーの会社にいる時は、お金は力の象徴でした。でもお金というのは、誰かに何かをしてもらった時に、その感謝の気持ち、与えられた価値に対して払っているものなのだと気づいたのです。

著書一覧『 水野俊哉

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