「本」は時代を超えた知識と経験の宝庫
――横山さんにとって「本」は、どんな存在ですか。
横山信治氏: ぼくらが生涯で経験できることは、限られています。自分の身に起こることというのは、今まで必ず誰かが経験しているんです。それを知識として学んで、判断材料にしない手はありません。本はありがたいなと思います。「孫さんや渋沢栄一さんみたいになりたい」と言って、孫さんのところに近寄ろうと思ったら、どれだけ時間と労力を要することでしょう。渋沢栄一さんに到っては、もう会うこともできません。「自分の直観と経験しか信じない」と考えていたら、膨大な時間が必要になります。もちろん経験も大事ですが、データはたくさんあった方がいいですよね。だからぼくは、極力たくさんの本を読むようにしています。
――その経験と知識を本に記すようになったのは。
横山信治氏: 部下に自己啓発や、成功法則を教えていたのですが、「これをもっと多くの人に伝えたい」と思ったのが、きっかけです。その伝える最良の手段が本でした。ぼくは「目標ノート」という必ず実行する事柄を書いていて、“4年以内に本を書く”とそこに記しました。目標ノートに書いた一ヶ月半後、書店で水野俊哉さんの『知っているようで知らない「法則」のトリセツ』という本に出会いました。その本に共感したぼくは、彼の主催する「出版セミナー理論編」にすぐに申し込んでいました。
4人で始め、設立して10数年の会社を上場させたということ。決定権を持って4000人を面接をしてきた、というぼくのバックグラウンドを評価していただき、すぐに出版の話がきました。そのタイトルは、『笑福亭鶴瓶さんが何でパンツをおろすのか』というものでした(笑)。
ところが、タイトルがあまりにアレだったのか(笑)、その後出版の話はいっこうに進まず、悶々としていました。そんな時、水野さんの「ビジスタセミナー」の講師として、ぼくに声がかかったのです。時間もなく、集客やネタの不安もありましたが、すぐに「ぜひ出させてください」と答えました。その時に来ていた編集者が、ぼくに興味を持ってくれたのです。そこから出版に繋がりました。
運の悪い人、考え方に癖のある人は後ろ向き。「ちょっとそれは……」と言った時点で、「脳がそれは難しいぞ」と言っているわけだから、川を飛び越えなくてはいけない時も、絶対に飛ばないか、飛んでも落ちてしまうものなのです。人間は習慣の動物だから、考え方を変えるためには、習慣から変えていかなければいけません。
チャレンジのある人生を
横山信治氏: ぼくは、その習慣化を手助けする選択肢を本に書いています。習慣化して、困難な状況に、また新しい事にチャレンジしていってほしい。失敗しても、プライドが少し傷つくだけでたいしたことがありません。チャレンジしない方がプライドも傷つかないし、楽かもしれませんが、それで本当に楽しいのかどうか考えてみてほしいのです。
チャンスはどこから生まれるかわかりません。ぼくの場合は、ある編集者と知り合って2年経ってから、企画がきたこともあります。頼まれたら人を紹介してあげたりして名前を覚えてもらう、というコミュニケーションを続けていたら、いつかチャンスにつながるかもしれません。やりたいことにエネルギーを使っていたら、かなうようになっています。渡部昇一先生の『運と勉強 天からはしごが降りてくる生き方』というCDには、たまたまドイツ語を勉強していた時に先生に呼ばれて、難しいドイツ語の翻訳をなんなくこなせたことにより、ドイツ留学を射止めたという話があります。一生懸命やっていたら、おのずとそこへとつながっていくのです。そうやって、チャンスを自分でつかんでいってほしいですね。そのチャンスに繋がる行動の後押しができる本を、これからも皆さんに届けたいと思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
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