心の知能指数を上げて「幸せ」を
――EQを広げることで、少しずつ社会に変化をもたらしています。
高山直氏: ぼくは、毎年1月1日にその年のテーマを書いています。今年のテーマは「幸せは自分から」。「自分が幸せでいることが第一ですよ」ということを、色々な人に言葉で言えるようになってほしいと思っています。みんな、会社のため、家族のため、部下のため、一生懸命働いています。EQのトレーニングをしていても、その気持ちが伝わってくるのですが、「じゃあ、ご自分は幸せですか?」と聞くと、皆さん顔が曇るのです。「みんなが幸せになることがぼくの幸せです」と言う方もいますが、実は、自分の幸せに鈍感な方も多いのです。
EQの一番重要なところは、まず自分の気持ちを感じることです。それがEQを発揮する軸になります。その次が相手です。自分の気持ちを感じられない人は、実は人の気持ちも感じられないのです。
例えば、機嫌が悪い時は、どんな話を聞いても良い話には聞こえませんよね。ですから、「ぼくは今、不機嫌だから、この話がこういう風に入ってくるんだな」と理解しなければいけないのです。これが実はEQ能力なのです。でもみんな、自分の感情自体をわからないまま、人の話を聞いています。これは最悪です。自分の気持ちを感じることができれば、不機嫌であっても、正確にその情報が頭に入ってきますし、機嫌の良い時は、トラブル報告まで楽しくなります。やっぱり、自分の気持ちが最初。それがEQを通して一番伝えたいことです。自分のことを考えるのは大切だということをわからない人は、生きていくのは辛いだろうなとぼくは思います。
自分が幸せでなければ、人を幸せにできない、ということ。自分が幸せになるために、人を蹴落とせとはぼくは言っていません。自分の気持ちがいつも最初にあって、幸せだと感じている人は、人も幸せにできると思うのです。「ぼくは不幸で、何てだめなやつなんだ」と言う人に、幸せにしてもらいたくないですよね。だから、自分がどう幸せであるかというのを、いつも感じることがとても大事。それは、“感じる力”なのです。人間は感じる動物で、感じなくなったら生きていないのと同じです。この“感じる力”がいかに大事かということも、伝えていきたいと思っています。
――EQは感じる力、IQは考える力。
高山直氏: 「感じる」と「考える」では、「感じる」の方が先にあります。ですから、感じないとIQは働かないのです。今の日本の社会にある歪みを、EQや感情の大切さといったことが、軽減してくれることをぼくは願っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
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