心の処方箋を届ける
精神科医、作家の奥田弘美さん。精神科医としてクリニックでの診察に従事するほか、20社以上の嘱託産業医として、1万人以上のビジネスパーソンのメンタルヘルスケアや、コミュニケーション改善のための医学的アドバイスをされています。これまでに直面した医療現場での経験を生かし、さまざまな場面で“心の処方箋”を発信される奥田さん。「睡眠の質」を切り口に書かれた最新刊『一流の人はなぜ眠りが深いのか』のお話とともに、精神科医としての活動の原点と想いを伺ってきました。
心に寄り添うケアの実践
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奥田弘美氏: 私は、精神科医としてクリニックでの診療に従事するほか、現在約20社の嘱託産業医として、そこで働く人たちの快適な職場環境を、医学的アドバイスでサポートしています。業種はさまざまですが、毎月のべ100名以上のビジネスパーソンのメンタルや健康、人間関係やキャリアなど多岐にわたる相談を受けています。これまで、さまざまな患者の人生に向き合ってきた自身の経験を診療に生かし、また本や雑誌、さまざまなメディアで発信しています。
――ラジオでも、発信されています。
奥田弘美氏: FM世田谷の『三浦和人とドクター弘美の心デトックスナイト』はで、毎週金曜23:30からの30分間、シンガーソングライターの三浦和人さんと一緒に、心のイライラや疲れを音楽とメッセージで洗い流してもらう番組をお届けしています。
もともと書くことが好きだった特性と、様々な医療現場に従事した経験が、本に限らずそうしたメディアも含め、今、色々な形で結びついています。
理系一家で育った文学少女
奥田弘美氏: 父が医者で母親は薬剤師という家庭で育った私ですが、完全な文系人間でした。本を読むのが大好きで、小学生の頃は、図書館の本を1日10冊借りては読みふけっているような子どもでした。
世界名作シリーズや冒険推理小説まで、なんでも手に取っていました。特にシャーロック・ホームズは年ごろの女の子がアイドルに憧れるような感じで読んでいましたね。そのうち私の作文が、まちの作品展に入賞するようになり、その嬉しさから「書く」ことが好きになりました。
一方で、算数は大の苦手で、通常ならそのまま文系コースに進むはずでした。ところが、薬剤師だった母から、「女性も手に職を」と常々言われており、女性が活躍できる資格職業が薬剤師や医者という身近な職種しか思い浮かばなかったために、苦手な理数系に進んでしまいました。
――自立のために理系の世界に。
奥田弘美氏: 好き嫌いではなく損得で進んだ世界は全然面白くなくて……それでもあとには引けず、なるべく文系の匂いがする(と思っていた)心理学領域も扱う医学部に進むことにしました。大学入試の時でも数学はネックで、最後の方の問題は鉛筆転がして稼いだ点でした。あとは得意な文系科目でカバーし、なんとか滑り込みました。
著書一覧『 奥田弘美 』