滝井秀典氏: BOOKSCANさんのオープン当初から利用しています。真っ先に申し込みました(笑)。プレミアム会員で山ほど(笑)アマゾンから直送しています。
―― お知りになったきっかけは何だったのでしょうか。
滝井秀典氏: ツイッターで…誰かがつぶやいていたのを見てだと思います。
―― そうなんですね。主にどういったジャンルのものを電子化されますか。
滝井秀典氏: いわゆるビジネス書、一部小説ですね。
―― 今までどれくらい電子化されていますか。
滝井秀典氏: 最初にダンボールで5、6箱送ってからは…1000冊以上は間違いなくお願いしていますね。あとはAmazonから直送というサービスができた時も利用しています。
―― 電子化した1000冊の書籍というのは、それまでどのように保管されていたのですか。
滝井秀典氏: 今入ってきていただいた(インタビュー場所である会社の)本棚と、あとオフィスの奥にも同じような本棚にずらっと。
―― 電子化したものは、どのように利用されていますか。
滝井秀典氏: パソコンのローカル環境に入っていて、それをiPadやiPhoneで読んだりしています。
―― iPhoneでも読まれるんですね。
滝井秀典氏: チラ見というか、そんなにしっかりは読まないですが。チューニングのサービスも利用しています。最初は、チューニングを使用せずにiPadで読んでいたのですが、ページめくりがすごく遅くて。あのチューニングサービスは非常に良かったと思いますね。
―― 電子化される書籍の中に一部小説もあるということでしたが、基本的にはどんなものを読まれますか。
滝井秀典氏: コンサルティングをやっているので仕事柄トレンドをずっと追っているのですが、基本的にはビジネス書ですね。小説は昔に読んだお気に入りの物や、推理物とかサスペンス系ですね。最近だと『ミレニアム』のような長編小説とか、あと橘玲さんの『マネーロンダリング』ですね。
―― どういったシーンで読まれるのですか。特別に読書の時間を設けていますか。それとも隙間のお時間でしょうか。
滝井秀典氏: 基本は隙間時間ですね。以前は電車通勤していたので電車の中で読んでいましたが、今は電車通勤をしなくなったので、そんなに読む機会がなくなってしまいました。iPhoneでチラ見はします。小説を読む時は、iPadが飛行機の中では非常に活躍します。暗い中、発光体で見えるので。普通の本だと上から電気照らさないといけないのですが、照明にあわせるのが大変で、iPadのような発光体が非常に便利でして(笑)。海外旅行の長時間フライトには非常に活躍します。
―― 海外旅行の時だとか、普段のご出張に電子書籍が出てきて良かったなと感じるシーンが多いわけですね。
滝井秀典氏: それは間違いなくありますね。昔だったら5冊とか必ず持っていたので。
―― 今どれくらい本読まれていますか。
滝井秀典氏: 月に3~5冊ですね。
―― 1冊1冊を精読するスタイルですか、それとも同時読みをされますか。
滝井秀典氏: 基本的には仕事で読むので効率重視で拾い読みが多いですね。1冊を最初から最後まで読むことのほうが稀です。自分の仕事やクライアントの助けになることが書いてないかなという視点で拾い読みするスタイルです。
―― どんなふうに拾い読みされるのですか。
滝井秀典氏: 表紙まわりを見て、著者のプロフィールを読んで、目次を見て…。そこで終わることもよくありますね。目次を見て興味ありそうなところを拾い読みしてそこが面白かったら他の箇所も読む感じです。
―― 自分の中で必要であるものもしくは活用できるものを探し出すのですね。その際に電子書籍の場合だとOCR化、テキスト化で検索することもできますよね。今後電子書籍に望むものはありますか。
滝井秀典氏: 少し問題なのは電子書籍だとやはり、目が疲れます(笑)。AmazonのKindleの電子インクとか出てきているので、今後技術が進化すればそういう問題はだいぶ解消されると思いますが。検索にしても、普段読む本などは紙で見ていたほうが早いものですから。それが少しストレス感じていますね。ただ、電子媒体だからできることはあるともいます。話題の本があって、とりあえずその本の中に何が書いてあったのかというプレビューだけを知りたいとか、むしろそれを見て紙の本を買うとか、そういう使い方も本来あると思います。
―― 電子書籍か紙か、二者択一を迫るものではなくて、補完し合うものですね。
滝井秀典氏: そうですね、私は電子媒体と紙は両方あって欲しいと思っています。基本的に紙だと熟考がしやすい。電子媒体を通じて、特にiPadで見ていると、使っている脳みそが多分違うのだと思うのですが、深い思考には向いていないかもしれない。電子媒体経由で得る情報を紙に出力した場合であれば、紙はアナログなのでアナログの深い思考がしやすいし、紙だとページをめくるのも指で感覚が出るので、ある意味時空を超えるところがあるじゃないですか。電子書籍の場合、プレビューとアーカイブには向いていると思います。この間も安田さんという元ワイキューブの社長さんが書いた本がすごい人気で、すぐ売り切れになってしまいました。何を書いているか、知りたいからとりあえず早く中身を見たいけど、アマゾンじゃ売り切れだし書店でもない。そういう時に電子媒体だと基本的に売り切れという概念はないわけです。それで安価で買えるのであればすぐに買って、中身を読むと思います。それで読んでみて良ければ、実際の紙も購入するという行動をすると思います。プレビュー機能は、在庫という概念がないわけだからすごく有効ですよね。一方紙の場合ですと、本を紛失したり、絶版になったりしますよね。ですので、アーカイブという意味で残しておくという機能は優れていると思います。
―― まだまだ発展の余地がありますね。
滝井秀典氏: そうですね。小説はじっくり電子媒体で最初から最後まで読みましたが、ビジネス書はやはり途中で疲れてしまう。
―― それぞれの利便性を活かした読み方ですね、精読・熟考するための紙の書籍。アーカイブに優れ娯楽性に富んだ電子書籍。
滝井秀典氏: そうですね、燃えてしまったり絶版になったら困りますので。
―― 作家さんの中には、絶版になった本をもう一度読んでもらいたいという希望があると思います。また、時代によって求められているものも変わってくると思うのです。ですから、もっと広く、アクセシビリティを向上させ誰でも簡単に希望のものが読めるような状態に “人類の英知”にアクセスできる権利は重要ですね。
滝井秀典氏: そうですね、だからAmazonでも楽天でも、リアルな本も買えるしダウンロード版も買えるという、いわゆるオープンプラットフォームにどんどんのせられればいいと思いますね。音楽に似ているかもしれないですが、そうあるべきだと思います。そうするとプレビュー機能で在庫概念なくサクっと本を読めると。その本の内容に満足したら、リアルの本も買う人もいるでしょうしということですね。当然そんなことをしたらリアルな本を選ぶんじゃないかという話が出てきちゃうけど、あんまりそこはないと思いますけれどね。
―― 電子書籍を出してしまうと売れなくなるということはないということですよね。
滝井秀典氏: 情報を流通させて悪いということは多分ないと思います。オープン化の流れというのは止められないので、より多くの人にいい情報、英知を伝えるというのが出版社の役割ですから、オープンプラットフォームにのせてほしいですよね。
―― 今回著作者の皆さんにインタビューさせていただく中で、意外だったのは、権利というものが大事な収入源の一つになると思うので、それに対してオープン化に慎重なお考えをお持ちなのかなと思っていたのですが、『アクセスしてほしい』『読んでほしい』という気持ちは皆さんお持ちなのですね。
滝井秀典氏: それは時代の流れですね。年代によってはそういうのがダメだという人も当然いると思いますが。CDも音楽もそうですけれど、情報は流通コストが下がってしまうのは仕方なくて、それを前提にいろんなビジネスモデルが変わると思うんですね。簡単に早く情報にたどり着けるというのが時代の流れなので。例えばK-POPなどは、YouTubeでほとんど視聴可能ですよね。音楽CDよりも早くYouTubeにフル音声でめちゃくちゃ画質の良い映像で出ている。よく成立しているなと思うのですが、結局ウォン安で世界に売っていきたいので、音楽CDの売り上げももちろんですが、海外に出向いて行って、結構費用の高いコンサートをやったりするのです、1万円以上のライブとか。日本で韓流の歌手が来ると1万円とか2万円とか皆さん抵抗なく払っています。結構稼いで帰っていく(笑)。今までCD売ってなんぼでしたが『CDはおまけでいいですよ』と。情報を流通させて、生身の人間で稼ぐみたいなのが彼らの戦略、ビジネスモデルの大きな転換ですよね。すごいと思います。私の姉は韓流の男性スターにはまっていまして、今50歳近いですけど。この間伊勢から東京ドームに来て、コンサートありイベントあり、そこに3万円くらい払います。東京ドーム満杯ですよ(笑)。ものすごいお金が動くわけです。結局CDも購入するのです。
―― そうですよね、グッズだとかも売れるのでしょうね。
滝井秀典氏: そうです。情報の良さって伝えない限りわからないので、そのハードルは下げざるを得ない。もうそんなの下げていいじゃないかと。そこに情報が広がることにより、韓流と同じようにメリットが確実にあるわけです。そういったビジネスモデルにしていければいいと思います。
―― もうコンテンツのみで稼ぐ時代ではないと。
滝井秀典氏: それはもう残念ながら難しいですよね。だからコンテンツは稼ぐものではなくて、広く流通させるものだという風にしていけばいい。そういう意味では韓国の人達は上手だなと思いますね。
―― 学ぶべきところは多いですよね。
滝井秀典氏: 大いに(笑)。最後に私から質問なのですが、BOOKSCANさんは今どんな感じなのですか。先般、著作者の何人かの方がいわゆる自炊業者2社に訴えを起こしましたが、あれは何ですか。断裁するのがダメだと言っているのですか。
―― 様々な立場の方がいて、一様ではありません。著作者の意向を無視した電子化にはBOOKSCANも同様に、反対をしております。
滝井秀典氏: 単純に電子化反対、というわけではないのですね。
―― 電子化には賛成だが、『与り(あずかり)知らない所で海賊版として出回るのが嫌だから』という方もいれば、『自分の作った本が、みんなの努力の結晶で作られた本が断裁される、もうそれが正視に堪えない』という気持ちの方もいらっしゃいます。様々な立場が存在していると思います。BOOKSCANとしては、裁断した本を溶解処分しており、またライツコントロールセンターを設け、『データ化しないでほしい』と表明されている著者の方は全てデータベースを作成し、書籍が到着した際に全てISBNをiPadで調べ電子化拒否の著作物については返送しています。こんな感じです。(調べる様子をお見せする)
滝井秀典氏: スマートフォンでチェック対応するのですか。
―― はい、カメラアプリです。
滝井秀典氏: すごいですね、開発したのですか。
―― 自社開発しています。ユーザーにもAppStoreから無料で取れる形にしているのですが、全て返却しています。著者の著作権保護を重要視しています。
滝井秀典氏: わかりました、すばらしいですね(笑)。ぜひ頑張ってください、応援していますので。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 滝井秀典 』