谷川真理

Profile

24歳でマラソンを始め、1991年東京国際女子マラソン、94年パリマラソンを大会新で優勝。92年に都民文化栄誉章、朝日スポーツ賞を受賞。現在もマラソンランナーとして走り続け、1年に30本以上の大会に出場。タレントとしてもテレビで活躍中。2002年に。「マラソンの楽しさを多くの人たちに伝えること。そして、 たくさんの人が走るためのお手伝いをすること」の実現のため、ハイテクスポーツ塾を開設。2007年第1回東京マラソンでは2位に入賞。地雷廃絶の啓蒙にも積極的で、2002年より地雷廃絶の活動を始め、パキスタン、スーダン、カンボジア、コロンビアを訪れ、2009年、地雷廃絶活動で外務大臣表彰受賞。

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座右の銘「忍耐は苦しいけれどもその実は甘い」


――このインタビューでは、読書体験についてお聞きしているのですが、谷川さんの人生で影響を受けた本や、これまでの読書遍歴をお聞かせください。


谷川真理氏: 母方の祖母が看護師で、母の姉妹もみんな看護師だったせいか、小学校時代はナイチンゲールの伝記を読んでいたことを覚えています。その影響があるのかどうかはわからないけれど、やっぱり看護師になりたいという希望はありましたね。今やっているボランティアの活動にも、影響があるかもしれません。自分は幸せだけれど、不自由な生活をしている世界の子どもたちもたくさんいるわけですから、何かできたらいいなと思いながらやっていますね。

もともと本を読むということがそんなに得意ではなくて、高校を卒業してからは女性作家の推理小説を読んでいました。ほかには、群ようこさん、林真理子さん、佐藤愛子さんなどの、面白いエッセイ風のものをよく読んでいました。その後は唯川恵さんや石田衣良さん、江國香織さんなどの恋愛小説も読みましたね。

――今はどのような本を読まれていますか?


谷川真理氏: 今、神社に関する本を読んでいる最中です。私は文京区のあたりが好きで、根津とか谷中とかに行くと根津神社があったり、お寺もたくさんあったりするんです。あと文京区に住んでいた文豪も多いですね、夏目漱石や樋口一葉、石川啄木。石川啄木なんかは6カ所も文京区内を転々としていたらしくて、そういう人たちが昔住んでいた所を、今自分が走っている。「真理の気まぐれランニング」といって、会員の方と一緒に適当なコースを走っているんですが、そういうときに「ここの坂はどうだ」とか、「菊坂通りは樋口一葉が住んでいた」とか、ゆっくりジョギングしながら、そんな歴史を説明できたらいいなと思って、そういう本を読んでいます。でも、なかなか頭に入って来なくて。覚えても人に説明するというのはまた難しい。本当にちゃんと自分の中でかみ砕いてしっかり暗記しないと話ができないじゃないですか。1カ所だけ覚えればいいのにあれもこれもどれも覚えようとするから、なかなか記憶できなくて、今困っています(笑)。

――本の言葉や文章から、勇気をもらったり、励まされることはありますか?


谷川真理氏: 本で読んだ言葉ではないのですが、私が偶然出会ってから座右の銘にしているのが、ルソーの言葉で、「忍耐は苦しいけれどもその実は甘い」という言葉です。

――まさに谷川さんにぴったりの言葉ですね。ところで、谷川さんの言葉も人に元気を与える力があると感じますが、ご自分の言葉を文章でお書きになるという機会はありますか?


谷川真理氏: 機会があったらやりたいです(笑)。でも自分の思っていることを文章に表すというのは、結構難しいですね。少しずつやればできると思うのですが。以前東京新聞で、自分にまつわる街をテーマに、コラムを連載していたんです。資生堂があった銀座だったり、中野坂上周辺の話だったりとか、それを書くときは、本当にきつかったですね。昔は結構日記とかは書いていましたが、今は全然で。手帳にスケジュールを書くのが精一杯(笑)。ロケに行った時の反省とか、今度はこうした方がいいんじゃないかとかは、メモしたりはしますけどね。その程度ですね。年間30本近く市民レースを走っているわけだから、大会にまつわるエピソードとか、そこの景色がきれいだったとか、街の人が親切だったとか、そんなことを書くのもいいんだろうなとは思いながら、日々が過ぎています(笑)。



後悔したくないから、これからも走っていく


――最近はランニングを始める人が増えたと言われますね。


谷川真理氏: 東京マラソンが開催されるようになって、ビックリするぐらいランニング人口が増えました。最近は女性誌でも、ランニングのページがあったりしますね。ランニングウエアはこんなのがあるよとか。それで、「あ、こんなかわいいウエアがあるんだ」と思って、グッズから入っていく人たちもいるでしょうね。もちろんモチベーションも上がると思いますし。何らかの形でランニング用品に触れたり見たりすることがきっかけで走り始める人たちもいるような気がしますよね。

――これからランニングを始める人にアドバイスをお願いできますか。


谷川真理氏: いきなり走りだすと、いろいろな問題が発生するので、ウォーキングから始めて、少しずつ走るのが体には優しいですね。一気にやっちゃうと、筋肉痛もすごくなっちゃうし、「うわっ、こんなにきついのやってられないよ」って、精神的にもやられますし、「もうちょっと走りたいかな」位で止めてもらって、少しずつ増やしていくといいんじゃないかと思いますけどね。2月の東京マラソンに出場するなら、その前に1月の谷川真理ハーフも走っていただいて(笑)。一度大会に出て、レースということで走ると、まあまあ頑張るじゃないですか。そしてハーフを一応走り終わった後に、「ああ、フルマラソンってこれの倍なんだ…」って。体って1回そういうきつい体験をすると学習するから、さらにもう一段上がれるんです。

――最後に、ご自身の今後の活動についてお聞かせください。


谷川真理氏: オリンピックを目指していた時もそうでしたが、「今しかできない」と思って貪欲に前に進んで行きたいですね。特に3・11があってからね、人生は何が起きるかわからないって強く思います。だから自分の人生を振り返った時に、後悔をしたくない。「ああ、最高だったな」と思えたらいいなって思います。その日その日を一生懸命に生きるということでしょうか。だからあまり先のことというのはほぼ考えていないんです。これは自分で勝手に思っているんですが、何かを一生懸命やっていると確実に前進はできているんだろうなと。一生懸命やっていたらだんだんいろいろな形で道が開けていくのかなと思っています。マネージャーさんや会社の方、ファンの方など、自分を支えてくれている人たちが、周りの世界を広げてくれる中で、自分がどこかに向かっていく。これからも『走る』ということを軸に、やっていくんだろうなと思っていますね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 谷川真理

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