山本直人

Profile

1964年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。博報堂に入社。制作局コピーライター、研究開発局主席研究員(兼)ブランドコンサルティングコンサルタントを経て人事局人材開発担当ディレクター。2004年8月独立。独立後は、マーケティングスキル、営業能力開発、スキル開発、若年層モチベーション向上等を中心とした人材育成コンサルティング/トレーニング、および商品開発、ブランディング、経営理念開発を中心としたコンサルティング/ファシリテーションをおこなう。青山学院大学経営学部マーケティング学科講師も務める。

Book Information

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「アナロジー」が重要


――書き手はある程度の読者の感想などをシャットダウンすることは必要ですか?


山本直人氏: そうだと思いますけどね。特に匿名で出てくるものも気にしたらきりがない気がします。感想の中には断片的なものも多いですし、「全体像を見る」という姿勢が、送り手にも受け手にも薄れているのかもしれない。

「アナロジー」は、物を人に伝える時には重要ですよね。「アナロジー」というのは、「アナログ」と同じ語源です。「アナログ」というのは類推なので、「デジタル」と違うわけですよね。「アナログ」の写真とかって、厳密に言えば粗いんだけど、見れば分かりますよね。だいたい猫だなとか、富士山だなとかと。「だいたい」でいいんです。たとえ話も実は同じなんです。類推ですね。「アナロジー」は、「アナログ」と同じなので、「だいたい」でいいんです。「だいたい」で大つかみするという能力である「アナログ」というのは、凄く重要なんです。

――本が「アナログ」だとして、情報は「デジタル」でしょうか?


山本直人氏: そうですね。デジタルの場合、どうしても断片化されちゃいますよね。気になっているのは、若い人たちはここ10年ぐらい、名言がものすごく好きですよね。でも、それだとすごく断片的で、名言の一文だけ読んだって、全然意味がない。本来は、その小説なりの中にあった時に、ピカッて光る言葉なんだけど、名言集というのは、名言を抜き出してデジタル化しているものなんですよね。

――名言が断片的になったとき、言葉が情報として、命令になってしまうのでしょうか?


山本直人氏: そうです。電子書籍になった場合も、書籍と言うからには主題、テーマがわかるような物であってほしいなと思います。それが無い限り命令になってしまうので。

お酒を飲んだら、「ミステリー」は読まない


――仕事以外では普段どんな本を読まれますか?


山本直人氏: 仕事以外ではほとんど小説を読んでいますね。フィクションのミステリーが多いです。ミステリーは、その時評判になったものを読んでいくというような読み方が多いので、考えてみると特定の誰かが好きっていうのはないですね(笑)。

――あちらの本棚を拝見すると、鉄道百科などの本が多いですね。




山本直人氏: 頭を使わないで、お酒を飲んだ時にダラダラ暇つぶしみたいに読んでますね。今、図鑑とかも売れていますよね。図鑑が売れているのを見ると、ネットの情報の限界みたいなもの感じますよね。電子的な百科事典とかもあるけど、何かかたまった形でダラダラ見たいという欲求が、どこかにあるんだろうなと思います。ミステリーはお酒を飲みながらだと厳しいかな(笑)。何でかって言うと、酔って読んで、翌朝とかに読み直したりしたときに、「え!?この人死んじゃったの?」とか「この人誰だっけ?」みたいに、前の晩に読んだ事を半分覚えていないとかがあるじゃないですか(笑)。だから本気で本を読む時にはお酒は敵ですよね。

――ちなみにお酒は何を飲まれるんですか?


山本直人氏: ああ、なんでも飲みます。冷蔵庫にはだいたい冷えていますよ、いくつかね。ウォッカは冷凍庫に入れていますけどね。お酒の話はキリがなくなるからやめておきますが(笑)。

分類ではなく、文脈で本を並べる本屋さん


――読書についてお伺いしようと思います。普段どのように本を読まれてますか?


山本直人氏: 本はいつも文庫本を持ち歩いています。スポーツクラブのエアロバイクを漕ぐ時に読む本というのがあって、それは宮城谷昌光さんの小説なんですが、これをずっと延々と汗だくになりながら読み続けているんです(笑)。あと寝る前、家で読む本は大きめのハードカバーですね。今、枕元に置いてある本が3冊あって、山川の世界史と日本史の参考書と俳句の本ですね。高校の教科書みたいなものにちょっと毛の生えたやつで、それは暇があると読んでますね。俳句はどこからでも読めるので。

――俳句はずっと読まれてるんですか?


山本直人氏: 俳句とか詩集とか、歌集とかそういうのは、文庫本で暇なときに読みますね。どこからでも読めるし、百人一首とかは読むたびに発見があります。

――山本さんの本の読み方というのは1冊の本を全部読み終えたら次を読みますか?それとも色々な本を同時並行して読まれますか?


山本直人氏: 3冊ぐらいは同時に読んでいます。カテゴリーを変えて、ノンフィクションと小説と。ビジネスを読む時はドバッと集中して読んじゃうんで。

――本は、どのくらい読まれますか?


山本直人氏: 仕事で読む場合は全然違うと思うんですけど、仕事以外だと月に小説を5冊ぐらいかな。ちゃんと腰を据えて読んでいる本って、やっぱり月に15冊ぐらいだと思いますね。

――読まれる本はどこで購入されますか?

 

山本直人氏: ほとんどAmazonですね。Amazonは、欠品が少ないんですよね。今本屋に行って特定の本を探すと、意外と欠品が多いんですよね。あと本の大きさがこれだけ大きくなっちゃうと、物理的に本を並べるということの合理性が凄く減ってきていますよね。本屋さんの中には、分類じゃなくて分脈で並べるという本屋さんもいくつかあります。もうなくなりましたが渋谷のブックファーストの音楽・芸術のところは凄く個性的だったし、同じブックファーストのミステリーのところは文庫本だけど古い小説もちゃんとあっていいなと思いました。つまり流行に対してじゃなくて分脈で並べているんですね。でも、そういう本屋は減ってきていますね。たぶん物理的に難しいんでしょうね。パッケージで置くことの限界なんだろうか。もちろん意義はあるのですが。

本があることで、何ら不自由しない人生を送れる


――今後の山本さんはどういったことに取り組まれたいですか?


山本直人氏: 学生を含めて若い人に、「情報が命令だ」という事を気付かせてあげたいなと思います。いい情報を獲得したつもりで、「実はそれって命令なんじゃないの?」っていうことを気付かせなきゃいけないなということを、試みとして考えていますね。情報が命令だって思った瞬間に、見方が変わってくると思うんです。だからといって、単に「情報に振り回されるな」って言ったってダメなんですよね(笑)。そういう言い方をしたって、現時点で既に振り回されている。言っている方も振り回されているし、振り回されていない人はいないわけで、全ての人は情報から命令を受けているわけです。だからそこにワンクッション置いて、本を読むということはすごく重要になるってことを伝えていきたいですね。

あとは、まったくそれとは関係ないような事をやりたいなと思っているんです。今までのマーケティングとか人材育成とかのビジネスの世界とは関係ないようなものを書いてみたいなと思っていて、猫が出てくるような本とか書けたらいいなと思っています(笑)。

――最後の質問です。山本さんにとって本、読書というのはどういうものですか?


山本直人氏: 本だけあれば、永遠に暇をつぶせるというか、生きてる限りは暇がない。本さえあれば何の予定を入れる必要が無い。本を読めばいいから予定がなくても困らない。本って、どんなに時間があったって読み終わらないですよね。本があるお陰で、人生に何ら不自由しないという感じがします。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 山本直人

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