『今絶対に必要な情報』だけにアンテナを張っている
――執筆される際に読まれる本の数は多いかと思いますが、1冊の本を書き上げる時に参考図書は何冊位ありますか?
和田裕美氏: 本を書く時の参考図書はそんなに多くありません。書いている本は実体験に基づいたり自分で感じたりしたことを中心に書いています。後は実際に会った人から聞いた生の話を自分で咀嚼して書くことが多いので、引用文を使うことは無いです。ですが、今回の神社の本に関してはさすがに歴史の事等を、正しいか正しくないか含めて調べなければいけないので、5、6冊は併せて同時進行で見ながら書いていたりします。
――普段読まれるものを含めて、本はどういったところで購入していますか?
和田裕美氏: Amazonが多いですね。人に薦められたりとか、たまたま新聞や雑誌で紹介している紹介文を見て、選ぶ参考にしてます。あとは献本が多いです。人から貰う本が月2,30冊ぐらいあるので追いつかないですよ。その中で読みたいなと思ったものをピックアップするとか、出版社さんとの関係で直接貰うものもあって、そこからものすごくいい本に巡りあったりすることもあります。
――最近読んだ本の中で面白かったものは何でしょうか?
和田裕美氏: 最近読んだ本では、久石譲さんと養老孟司さんが対談した、『耳で考える――脳は名曲を欲する』っていう対談本ですね。人間が音に対してどういう反応をするとか、人が心地良い音があるとか、悪い音があるとか、例えば人間っていうのは音全てを聞いているわけではなくて都合のいい音だけしか聞かないとか。目で見るものは見てしまうから、制御できないけど、耳は集中していると好きな人の声だけ聞き分けたりとか、聞き分け能力が自然に備わっている事とか。映画等の挿入歌を作るときに、シーンのどまんなかじゃなくて0コンマ何秒か分からないけれど、ずらすのだそうです。何故かというと、耳のほうが先に反応するからということなんです。視覚と聴覚は同時じゃなくてちょっとのずれがあるから、そのずれを生かしたほうが、感動的に心に届くみたいなことが書いてあって感心しました。あとは竹田恒泰さんと私が好きな塩沼亮潤さんっていうお坊さんの『日本人の宝』という対談本がありますが、感動する内容の本でした。私はノウハウ系より、深みのあるものが好きですね。この2冊は対談本ですけど、対談本以外にも小説なども読んでいます。流行っているもの、売れているものはちゃんと読んでおこうというのはあります。
――読書にはかなり時間を割かれているのですか?
和田裕美氏: テレビをほとんど観ないので、そうなりますね。テレビを観ないとニュースに意識が向かなくて、自分が今絶対に必要なことだけにアンテナを張ると、そこだけ鋭くなって要らないものが無くなってしまうのです。とても忙しい時はそういう生き方をしないとキャパシティが足りなくなってしまうかなと。でも、話が合わなくなってしまうと大変ですから、色々雑誌などを見てキャッチアップするようには努力しています。また、周りに愛国者みたいな人ばかり集まっているから、結構過激な話が飛び交う世界なので、逆に偏った情報が入っているとも思います。博識と呼ばれている人たちが周りにいるので、私の情報が偏ってきているのは事実ですね。客観的に見ないといけないなというのはあります。
心が元気になる『本当に良い本』を出して欲しい。
――沢山の本を読まれているとのことですが、その中で電子書籍はご利用されていますか?
和田裕美氏: 紙のほうが多いですが、電子書籍も読みます。でもiPadを購入したんですけども、重くて持ち運べなくて、要らなくなって悩みの種になっています。今は、iPhoneに戻りましたね。
――読みやすさ、操作性はどうですか?
和田裕美氏: 私の本も何冊か電子書籍があるんですが、そんなに読みづらいということはないんです。読みやすい読みにくいっていうのは、閲覧ソフトの問題なんですよね。だから自分の本のレビューで「ここをめくったら一気にページが飛んで残念だった」等書いてあったのを読んだ時に、読みづらいソフトだったのかな、と思ったり。ダイヤモンド社で作ったときは、とても読みやすいソフトでしたね。
――電子書籍が普及していく中で、本作りにおける出版社や編集者の役割はどういった所が重要になってくると思いますか?
和田裕美氏: ソフトがあれば本が簡単にできるということだと思うんですが、精査する目というものは必要ではないでしょうか。本当にいいものを見極めていかなくてはならないので、本は多ければいいという世界じゃないと思うんです。タイトルの響きだけで選んだりしがちですが、さすがに量が多すぎて選べない。一生読める本の数も、自分が研究者になろうと思わない限り多くはないから、本当にいいものを出して貰いたいと思います。編集担当の価値観で構わないのですが、著者の造詣の深いものとか、出すのだったら日本人が元気になって強くなっていくとか、心が元気になるようなものを出来る限り出してもらいたいですね。言論の自由があるとはいえ、書籍って教育ですから、教育が変われば人間が変わるのでそういうことは大事かなと思いますね。とりあえずやっつけ仕事でやっちゃったみたいな事は嫌だなと思います。
著書はディスカッション重ね、最高の一冊に。
――和田さんが本を書かれる時は、どういった書き方をされますか?
和田裕美氏: まず本を作る前の段階で、何回もインタビューを繰り返すことや、ディスカッション等をしながら、一人でこもっていたら出てこないことを出していきます。ネタを一人じゃつくらないという感じです。今日から本を作りますよってなると、編集の人とか粗書きするライターの人とかと3、4人で、今日はこの3つの質問について解決していこうといったディスカッションとか会議みたいなものを何回か繰り返していきます。例えばさっきのいじめの話とかでもそうなんですけど。「いじめって自然が無いからだと思うんですけど、どう思いますか」と質問から始める。そうすると、「私はこう思う、ああ思う」という話をもらえます。それが私の情報収集なんですね。打ち合わせから始まっています。そこでの話をまた膨らませていきます。それでも足りなかったら、また違う人に聞きに行ったりします。そこからテープ起こしをしたり、編集の方で粗い原稿にしてもらったりして、それを頂いて上から全部書き直すという感じですね。
――出版されている本は、和田さんと関わりになった方々との集大成のようなものですね。
和田裕美氏: そうですね。例えば誰かに質問しないと出てこない答えというのは沢山あります。だから編集の人に私に聞いてみたい事を、とことん質問させたりするんです。それで私が一所懸命考えながら、話していくという感じですね。
――最後の質問になりますが、今2冊目の神社の本を書かれているということなんですが、今後はどのようなテーマの本を書かれるのでしょうか?
和田裕美氏: 神社の本はたまたま話をいただいて「やるやる」と言って書いているんですが、他にも『自信の持ち方』という本を書いています。今、2つの本を同時進行で書いているので、神社の本が終わったらすぐそっちを書かないと、と今ドキドキしています。2冊とも絶対期限内に書かないといけないので、日々どうしようかと思って生きています。今神社の方がやっと半分書けた段階ですので、あと1.5冊ですね。『自信の持ち方』は、まだ1ページも書けてないのに表紙のイメージが来たりして、恐々としてます(笑)。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 和田裕美 』