きたみりゅうじ

Profile

1972年、大阪、寝屋川生まれ。もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありで、ほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でWindowsのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらWeb上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラスト レーターとして活動中。遅筆ながらも自身のWebサイト上にて1コマ日記や4コマまんがを現在も連載中。
キタ印工房 : http://www.kitajirushi.jp/

Book Information

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怠け者だったから、コンピューターが好きだった


――そこからどうやってコンピューターの分野へ進まれたんですか?


きたみりゅうじ氏: コンピューターはもともと好きだったんです。小学校の時に自分の兄貴が親にコンピューターを買ってもらって、FMNEW7(1984年発売)というパソコンだったんですけども、ゲーム機として遊んでいて、プログラムを打ち込んで遊んだこともありました。プログラムって簡単だなって思ったのは大学の時ですね。僕は大学へ行っても単位取るギリギリくらいしか勉強をしなかった。でもプログラムの授業があって、それは勉強しなくてもできたんですよ。BASICで三角形書いて、これを左から右に動かしなさいっていうのをコードで書けっていう課題があったんです。その課題を、自分より賢いやつらがみんなうんうん言って悩んでいるのに、自分は悩むことなくぱっとできた。&を論理回路につなげて、特定の出力を求めよとかそういう試験も勉強しなくてもできたんです。「これは簡単だな、楽しいな」と思って。もともとゲームもコンピューターも好きだったので「コンピューターが欲しいな」ってずっと思っていたんです。当時は高かったので買えなくて、絵を描くのは好きだったんですが、勉強嫌いと同時になんせ怠け者だったので、絵を描くために道具をそろえるのが面倒くさかった。それに、お金もかかるじゃないですか。油絵とかをやってみたいなと思っても、道具代でお金がかかるし、それを広げる場所もいる。広げたあと片付けなきゃいけないし、なんて面倒くさいんだろうと思って全然ダメだった。でもコンピューターだとそれが全部できちゃう。そういう意味でもコンピューターが好きだったんですよ。



――文章もパソコンでお書きになりますか?


きたみりゅうじ氏: 文章を書くのも好きだった。でも消して書いてがやっぱり面倒くさかったんです。原稿用紙にばーっと書いて「ああ、なんか違うな」と思って「ここを描きなおしたら入りきらないから」っていうのはなんか面倒くさい。でもパソコンがあったらそれもできる、パソコンがあれば全部できるんだなって思ってました。それとプログラムが簡単で楽しいなというのがあわさって、就職の時にコンピューター関連の会社に就職したんです。そもそも自動車関係のほうに行きたかったんですけども、成績が全然ダメで推薦もダメで、そもそも就職口がバブルがはじけてへこんでいるときだったのでありえなかったんですよ。

「自分のせいにしない」ことが成長のポイント


――プログラマー時代に経験されたことを、作品に昇華するっていうのは大変なことだと思うんですが。


きたみりゅうじ氏: もともと怠け者だったから、いい加減ちゃんとしないとというのがあったし、いい加減にちゃんと勉強しなきゃというのがあって、それで就職してやっとこれでお金を稼ぐことに集中できると思ったんです。大学の時って食費も稼がなきゃいけないし、課題もやらなければいけなかった。なんせまじめでなかったから、大学も勉強させてもらっているっていう感覚が全然なくて、大学を卒業するという資格を取りに行くためと、親の手前大学は行かなきゃという、本当にそれだけだったんです。さっさとそこから抜けてお金を稼ぐことに集中したいなというのがあった。それでやっと就職してそこに集中しようっていう意識があった。もともと情報系じゃないので予備知識が全然なくて、研修を受けても「ファイルって何?」「ディレクトリって何?」という感じだったので、教育係はそれを相手するほうが大変だったでしょうね。そこで3人新卒で一緒に入ったメンバーがいて、一人は結構人のせいにしてしまうタイプで、「研修ってもっとちゃんと教えてくれるんじゃないの?」と言っていた。でも自分ともう一人は「いやそれは違うだろう」というタイプだった。それで、最初3年くらいは「全部自分の責任にしてみる」ことにしてみたんです。3年ぐらい経ってからは、徐々に「これは僕のせいじゃないんじゃないか」と思うことも少しずつ解禁していきましたけども

――今もんもんと新卒3年目で悩んでいる人に対して、きたみさんからのアドバイス的なものをいただけますか?


きたみりゅうじ氏: 今は結構楽だと思うんですよね。自分たちのときって、外の声が入ってこなかったんです。今なら同業者の知り合いも作りやすい。だから情勢が違うので、「自分のときはこうだったよ」っていうのはあまり参考にならないと思います。ただひとつあるとすれば、「人のせいにしない」、ということですよね。それで自分が抱えこんでしまう問題のほうが大きくなったら「多少は人のせい」というのも考えていいと思いますが、とにかく人のせいにしないことが大切ですね。あとは、色々経験したことは無駄じゃないと思うことぐらいですね。大体同級生で就職して落ちてくだけになっている人は、大体会社のせいにしているし、自分の経験したことを無駄扱いしているんですよね。「お前はプログラマーだから、手に職があるし、絵が描けるからいい」とか言われるけれど、その人も自分の職業で身につけた何かがあるはずなんです。でも「俺は何もできないし」とか言っている。自分の持っているものを全部否定して、そのスキルをどう使えるかということを考えない。必ず、何かしらその業界でしか知りえないことがある。色々なことを自分の責任として考えていけばわかることもあるんです。もしその職業に本当に得るものがないならば、「得るものがなかった」というその反省を生かして次の職を考えればいいと思いますね。

電子化して読んでもらえるのはうれしい。手持ちの漫画を自炊するのはちょっと面倒くさい


――電子書籍についても伺いたいと思います。読者の方が、本を裁断して電子化していることについて何かご意見はありますか?


きたみりゅうじ氏: それはありがたいことだと思いますね。装丁家の人だと丹精かけて作ったのをバラバラにされるのがイヤっていうのはあるかもしれないですけども、自分はそういう抵抗は全くないですね。

――きたみさんご自身で電子書籍の利用はされますか?


きたみりゅうじ氏: 自炊は自分の手持ちの漫画とかでしたりしていますね。これは面倒くさいですね。でも古い本って黄ばんでくるじゃないですか。あれをスキャンすると黄ばみがなくなる。それで逆にきれいになって保存版ができるので、そのコンバート自体がすごくいいと思っていますね。

――読むデバイスは何を使われていますか?


きたみりゅうじ氏: 今はiPadですね。本当はKindleで読みたかったんですけども、どうしても解像度が上がっていかないし、反応速度も遅目なので、そういう意味でiPadを使っているんですけども、やっぱり目が疲れますね。主に漫画本を読んでいます。

今は色々計画したことが終わりにさしかかる時期。


――最後にきたみさんの今後の展望を教えていただけますか?


きたみりゅうじ氏: 今約束して書かなきゃいけないものはあるとして、その後って完全に未定なんですよ。自分のクセとして一回ばーっと考えて計画を決めたらまず、それを最後までやってみて次を考えるっていうのがある。今はやってみて終わりぐらいの時期なんですね。そうすると全部吐き出しきったことになっていったん空っぽになっちゃうので、今は趣味や遊びなど好きなことをとにかくやって、自分が次に何を出したくなるのかを様子を見ています。そうしながら、それとは関係のないところで解説書とか「こういうのをやらないか」というお話をいただくことはあるので、そういうお仕事をしながら、色々と考えていこうかなと思っていますね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 きたみりゅうじ

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