前坂俊之

Profile

1943年、岡山市生。慶應義塾大学経済学部卒、毎日新聞社に入社。京都支局を経て、毎日新聞東京本社調査部、同情報調査部副部長などを歴任。取材テーマは司法犯罪の冤罪から「国家犯罪としての戦争」に移して、「兵は凶器なり」「言論死して国ついに亡ぶ」の2冊を刊行。1993年4月、静岡県立大学国際関係学部教授に就任。ジャーナリズム、メディア、国際コミュニケーション論を担当、2009年3月に退官し名誉教授に。現在は一ジャーナリストにもどり、日本記者クラブを拠点にして、取材と執筆の日々。カヌー、フィッシングや海を年中楽しみながら、「生涯現役」「晩年悠々」「百歳健康学」の創設をめざしてブロガーライフ。

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デジタルビデオで「日本」をアーカイブ化


――現在は、組織がなくてもジャーナリスティックな活動をするためのメディアがそろっていますが、今の若い人に、どのような表現活動を勧めますか?




前坂俊之氏: 個人のビデオジャーナリストがどんどん増えればいいと思っています。それに広告さえ載せれば何とか回していけます。戦場のビデオジャーナリストというほどではなくても、旅番組のように海外にどんどん遊びに行かせればいいんです。今も私の学生が5、6人世界を放浪しているから、その連中にある程度金を払って、撮影しまくったら行けると思うんですよね。キャスターもどういうしゃべりかたでもいいんですよ。文章を書くときでも、専門家じゃなくても素人のほうが面白いんですから。今やパックツアーで中国でもあらゆる場所に行っているから、撮影したものを集めて作っていけば需要というのはあると思います。ただ、日本のデジタル社会は匿名社会で、ブログでも匿名中心になっていますよね。海外ではブログもホームページも実名を出してやっています。匿名で誹謗中傷した人間が逮捕されたりといった事件がありますが、陰湿ないじめ社会をネット社会がますます助長していく面があるのは気になります。

――前坂さんご自身が現在作っている動画など、今後のお仕事の展開をお聞かせください。


前坂俊之氏: ハイビジョンビデオで日本人の生活ぶり、暮らしぶり、街並み、自然等を観察して撮影していけば壮大なアーカイブができますので、それを個人的にやっています。
柳田国男は「常民」という農民生活者の人々の暮らしぶりや伝統を活字によって膨大な資料にしました。宮本常一は瀬戸内海を中心にして漁民、農民の生活を泊まり込みで酒を読みながらじっくり話を聞いて、それを文字にして全50巻ぐらいに残しています。それと同じ方法論です。あとは、来年の6月に鎌倉が世界文化遺産に登録されます。これはもう文化庁の情報で登録決定なんですが、観光客が鎌倉に来ますから、今年の初めから鎌倉の自然、神社仏閣、歴史、街並みから天気など、何でもかんでも1日最低10本ぐらい撮影してアップしています。鎌倉関係だけで1000本ぐらい発信しようとしていて、You Tubeに英語のキャプションで、武士とは何で、どうやって生まれたかとか、鎌倉時代の権力構造とか、鶴岡八幡宮に関してなどを書いています。日本の観光政策の最大の間違いは、土産物、買い物ばかりにこだわっていることです。もっと情報を出さないといけません。京都もYou Tubeに画像とキャプションをしっかり書いたものがない。それは政策としてやっていないからです。観光客もYou Tubeを最初に検索しますからね。

取材場所:日本記者クラブ

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 前坂俊之

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