伝えたいなら、書き手側も変わる必要がある
――これまでたくさん本を読まれてきて、本自体が以前とこんな風に変わったなというのを、感じられることはありますか?
鈴木真奈美氏: 本がというよりも、受け取り手が変わってきたかなという感じがしますね。簡単に情報が手に入る時代になって、昔のようにしっかり本を読もうというより、簡単に良い情報をたくさん欲しいという感じになってきているので。本の作り方がそれに合わせて変わってきたのかなと。簡単に、読みやすく。
――そういった傾向に対して、何かご感想をお持ちですか?
鈴木真奈美氏: 良い悪いではなく、こういう流れなのだと思っています。伝えたいメッセージがもしあるなら、世の中の流れに合わせて変えていく必要があるのかなと。
――書き手側も、世の中の状況に合わせて変化していく。
鈴木真奈美氏: 本質は変わらないですが、コミュニケーションって相手が理解してくれて始めて成り立つものだと思うので、本もそうだと思うんですね。書きたいことを書いて、自己満足ではなく、やはり一冊の本を書いたその先には、読んでくださる方がいるので。
――書き手と読み手のコミュニケーションですね。本を出版されて、反響はいかがですか?
鈴木真奈美氏: 今はネットがあるので、読者の皆さんの感想がすごく早い。Facebookなどで見つけてくださり、読み切れない量の感想がきます。こんなにダイレクトに伝わるんだということに、びっくりしました。
これまでとは全く違う、情報提供の形
――鈴木さんは、電子書籍はご利用されますか?
鈴木真奈美氏: iPadで日経を読むくらいですね。
――使い心地、読み心地はどうですか?
鈴木真奈美氏: 移動時間に読めるので、すごく便利ですね。電車の中で新聞を広げるのって、女性だと結構勇気がいると思うんです。でもiPadだと楽に読めるので。切り抜きなどもできて、使い勝手が良いです。
――電子出版が普及する過渡期にあり、出版社の役割が流通から少しずつシフト、変化してきています。本を一緒に作り上げるという側面をふまえて、出版社・編集者の役割、どんな編集者、どんな出版社だったら良いと思われるか、お聞かせください。
鈴木真奈美氏: 人が、より幸せになりたい、より豊かになりたいという思いは、普遍的にあると思うんですね。そこに対して情報提供をしていくのが、出版社の役割かなと思っています。ただ、そのやり方が、多分これからすごく変わっていく。これまでは、こういうものが出版社だったという、従来の役割をいったん手放して、じゃあその人が幸せになるために、豊かになるために、どう情報提供していけばいいのかというところに立って考えていくと、今までとは全然違う形の提供の仕方になっていくんじゃないかなと。私はカメラメーカーにいたので、デジタルカメラの時と似ているなという気がしています。約12年前、カメラがデジカメにシフトしていく時に、大手は、「それでも人は、プリントアウトして写真を見たいものだよ」というところにこだわっていたんです。ですから、フィルムはこれからも変わらず需要があるだろうし、プリントアウトするものが必要だっていうところにしばらくいたんです。でも、人の習慣がどんどん変わってくると、ネットでメールをやり取りしたりとか、撮った写真をみんなで共有するというように形が変わってきて、今までのビジネスのやり方じゃ通用しなくなってくる。本も同じじゃないかなと思って。今はまだ、紙にしたものを読みたいという声があるでしょうが、それは私たちの習慣から来るもので、多分、次世代は、当たり前のようにiPadで本を読むようになってくる。すると、こだわりや習慣が変わってくるので、これからはもっと未知の領域が広がっていくと思います。すごく面白くなっていくと思います。
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
鈴木真奈美氏: 今、「地球ファミリー」というビジョンに夢中なんです。本当に地球がひとつの家族だとしたら、人それぞれに役割があって、それぞれが本当にかけがえのない存在だっていう、それをもっと広げていきたいなと思っているんです。そのために、本を書いたり、ワークショップなど色んな活動をこれからもしていきたいです。それで、少しでも世の中がよく変化していけばいいなと思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 鈴木真奈美 』