若宮健

Profile

1940年、秋田県生まれ。トヨタ自動車のディーラーに19年勤務。メカニックから営業マン、営業所長を経験。営業マン13年間で新車を1200台販売。独立して自動車販売会社を設立するも、3年で撤退。その後、損保代理店、証券会社勤務を経験するも、一度体験したいと考えていたタクシードライバーを経験し、タクシードライバーをネタに『タクシードライバーほど素敵な商売はない』にて作家デビュー。選手として出場したスポーツは、スキー、ボクシングなど。ラリーにも出場。‘98年『夕刊フジ』に「ハマの流しの運転手」のタイトルで連載を執筆。近著に『パチンコに日本人は20年で540兆円使った』(幻冬舎新書)がある。

Book Information

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ゲートボールの横でシャドーボクシング


――体を動かすことがお好きだと伺いました。


若宮健氏: ついこのあいだ船舶免許を取りました。5日間ぶっ通しで通いまして。この日曜日が実地試験だったんですよ。丸1日海へ出ましてね。いやぁ、あれは結構きつかったですね。海上をボートでスラロームさせられた。だけど、僕は体力が取り柄ですから。

――スキーやボクシングもなさるんですか?


若宮健氏: 本気でやったのはスキーです。骨折をしなければ、オリンピックも行けたかもしれません。中学生で滑降の前走をやりましたよ。スキー大会の場合必ず前走というのがあるんです。前走というゼッケンを着けて、選手が滑る前に、試しに1人滑るんですが、転んでコースに穴があくような下手な人ではダメなんです。ボクシングは、実際公式の試合にも出ました。で、今でもシャドーボクシングはやっていますよ。散歩の途中に運動公園へ寄って。同じ年くらいの人がゲートボールやっている横でシャドーボクシングをやると、獣を見るような目で見られますけど(笑)。僕はあんなチンタラしたことは日当100万もらってもやれないですよ。そんな暇があったら体を動かしたい。

――ほかにも何か運動をなさっていますか?


若宮健氏: だいたい1日1時間半歩くんですよ。それもたらたらじゃなくて早足。それで途中で運動公園へ寄る。汗びっしょりです。それからバック走行を500メートルやります。バック走っていうのは後ろ向きに走る。走ると言っても早足ですね。早足で500メートル。これが最高にいいんですよ。というのは、人間は前に歩くことしかしないでしょ。バック走は普段使わない筋肉を使う。慣れると、自然とばーっとバックに走れるようになります。シャドーボクシングは、女性にも薦めたいですね。体のバランスと心肺機能が高くなるんで、ダイエットにも最高ですよ。

――それだけ鍛えておられれば、多少の危ない場面も大丈夫でしょうか?


若宮健氏: 刃物くらいは防げるでしょうね。空手も1年ちょっと経験あるんですよ。

体験主義を生み出すきっかけ


――若宮さんが本を好きになったのは、いつごろからですか?


若宮健氏: 最初のきっかけは、小学校5・6年の担任の先生なんです。国語の時間になると、しょっちゅう、丸々本を読んで聞かせる人で。『次郎物語』(新潮文庫)とか、そういうのをじっと静かに読んで聞かせてくれたんですよ。いやぁ素晴らしい先生でした。「あなたたちは、これから大人になるまでに、本を読む癖をつけなさい」と。小学校の6年のときに教わった。「本を読んで聞かせてもらうのは、いいもんだな」と、そのとき思いましたね。だから僕は今でもその先生にすごく感謝していますよ。今の子どもがもう本を読まなくなったって言われますけど、小学生のころにそんなふうに読ませてくれる先生がいたら、本好きになれると思います。

――学生時代に好きだった本はありますか?


若宮健氏: パール・バックの『大地』(岩波文庫)。パール・バックには高校のとき衝撃を受けましたね。女性の作家で、なんというか、男気をよくあれだけ表現できるもんだと思ったんですよ。

――手に取るきっかけは何だったんですか?


若宮健氏: 姉に薦められたような気がするんです。そうしたらのめり込みましたね。高校のときは、パール・バックと太宰治にものめり込みましたね。中学のころは、文藝春秋と、リーダーズ・ダイジェストっていうのがものすごくはやって、何百万部も売れたんですよ。だからリーダーズ・ダイジェストと、あと石坂洋次郎。それと、武者小路実篤。

――いわゆる純文学ですね。どんなことを感じましたか?


若宮健氏: 武者小路実篤は、当時の若者に大うけだったんですよね。「純粋に生きなさい」というメッセージです。それが、僕の体験主義みたいなのにつながっていますね。会社を立ち上げてつぶしたこともありました。だけど今でも、とにかく後ろを振り向かないんですよ。

本は、僕なんか足元にも及ばないすごい人を知ることができる


――若宮さんは、月に何冊くらいお読みになりますか?


若宮健氏: 僕は、月に10冊本を買えるだけのお金があればいいんです。ノンフィクションから小説まで幅広いですよ。つい最近読んだもので、すごいノンフィクションがあるんですよ。『戦後史の正体』(創元社)という単行本。これはすごいですよ。孫崎享(まごさきわたる)という方が書いた本で、外務省に勤めていて情報局長をやった人なんです。だから裏の裏まで知っている。そしてイラクの大使もやっている。今のこの日本の現状を見ていられなくて、吉田茂のGHQのころからのことを全て書いちゃったんですよ。僕はあれを読んで、「10年前に書いてくれればよかったな」と。でも、10年前に書いたら消されたかもしれませんね。あの本は、正直、僕も目からうろこでした。吉田茂はみんなが持ち上げているでしょ、素晴らしい総理だったと。実際はアメリカの使い走りをしていたんですよね。

――知らなかったことを知るためにも本はやはり重要ですよね。ほかにお勧め本はありますか?


若宮健氏: もう1冊、NHK出版から出ている『ヤノマミ』っていう本があるんですよ。僕が読んだのはもう去年ですけど、これがお勧めの本なんです。南米アマゾンにヤノマミという部族がいるんですよ。電気も何もないところで、今でも狩猟したり、川の魚をとったりして生活している。そこに人間の原点があるんですよね。読んでいて、これはすごいと思いましたね。

――今でもそんな生活をしているんですか?


若宮健氏: そうなんです。NHKのスタッフがそこでその部族と一緒に半年以上暮らしているんですよ。よく半年以上もそこで生活したなと、本当に衝撃を受けましたよ。帰ってきてから病気になって、立ち治るまで何ヶ月もかかったそうです。世の中には、僕なんか足元にも及ばないすごい人がいますよ。あれはぜひ読んでみてください。でも、もしかすると、2014年がブラジルのワールドカップでしょ。そのときにそこを保護区にされてしまう恐れがあるんです。幸せに暮らしているのが破壊されるかもしれません。

著書一覧『 若宮健

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