岡本吏郎

Profile

1961年、新潟県生まれ。明治大学商学部卒業。戦略的財務から経営戦略、マーケティング、債務対策まで幅広く指導する経営コンサルタントとして活躍中。世の中で当たり前とされていることを独自の視点から切り裂いてビジネスにつなげていく手法、戦略眼などには長年のファンが多い。CDとニュースレターを媒体にした会員制勉強会「戦略思考ビジネス会議」、有料メルマガ「週刊 岡本吏郎」などで自身の持つノウハウなどを公開している。著書の『会社にお金が残らない本当の理由』が『10年後あなたの本棚に残るビシネス書100』(ダイヤモンド社)にて経営マネジメントに強くなる8冊の中に選ばれる。

Book Information

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行間を書きたい


――独立して20年近くご活躍されていると思いますが、独立前は企業にお勤めだったのですね。


岡本吏郎氏: サラリーマンです。新入社員のころから、僕はむちゃくちゃだったみたいですよ。自分では普通のつもりだったんですけどね。社内で僕が辞めないと思っていたのは僕だけだったみたいです。妻も会社の同期なんですが、「俺、会社辞めるわ」って伝えたら、アイロンをかけながら「あ、そう」って。「え?あ、そう、でいいの?」と思って、3年ほどたってから聞いたんですよ。「あの時、アイロンをかけながら『あ、そう』って言ったけど、どうして?」って。そうしたら「そんなの結婚する時から覚悟してたわ」って言われて(笑)。

――新入社員時代は、右向けっていわれて右を向かなかったら、ぶつかることも多かったのではないですか?


岡本吏郎氏: いや、自分では右を向いていたつもりなんですよ。僕がいまでも仲良くしてる上司の方で、仲人もしてもらった方ですが、1年一緒に仕事をして、彼が転勤する時に「岡本、お前とだけは2度と仕事をしたくない」って言われましたしね。僕は結構平気で上司をだまして新しい仕事していましたから。だって、動かない上司を説得しても仕方ないでしょう。

――30年近くビジネスの世界に身を置かれて、仕事の仕方で変わった部分はありますか?


岡本吏郎氏: あまりない様な気がしますね。「三つ子の魂百まで」ですよ。自分で仕事がうまくいって、ある程度お金が流れる形はもう分かっていて、でも、考えてみたらそれって子どものころからやっていた。小学校や幼稚園のころ、友達と遊んでいたやり方をビジネスでもやっていて、それが最もストレスなく、かつ最も効率的、効果的な方法だったんですね。

――今後、何か本の執筆予定はありますか?


岡本吏郎氏: 書きたい書きたくないでいえば書きたいですが、本を書くのはすごく時間が取られる。僕はゴーストライターを立てる性格でもないんですよね。僕は本を書くことが仕事ではないので、ゴーストライターを立てるのが正解なんですが、本が好きだから駄目なんですよ。大した文章も書けないのに。

――ご自身で書かれる時に何かこだわりはありますか?


岡本吏郎氏: 常に「行間を書きたい」と思っています。ただ、ビジネス書なのであまり行間に凝るといけない。僕はどちらかというと、重要なニュアンスを「ここまでいっておいて、ここをいわないか岡本」っていうところが評判が悪いんです(笑)。でも、ここまでいって、あとは自分で考えるっていうような行間を書きたいというのはありますね。

――その表現方法が、読者に影響を与えたり、読者にとっての何かのきっかけになるのですね。


岡本吏郎氏: 読者が影響されるかどうかは、僕にはどうでもいいことなんです。僕は詐欺師ではないから、人に影響を与えようとも思わないし、先導しようとも思わない。だから自分が出したくて出すだけですよね。それを買ってくださる方がいらっしゃるのはとてもありがたいことです。ベストセラーになる必要もロングセラーになる必要も全くない。第一、狙ってなるものでもないと思います。

―― 一貫して、何も狙ってない。


岡本吏郎氏: 狙ったら駄目です。原理原則をきちんとやっていれば、自然と来ますから。

〈本〉の呪縛


――ブックスキャンでは、個人の蔵書の電子化をしていますが、ご自著が電子化されて電子媒体で読まれることに関してどう思われますか?


岡本吏郎氏: そういう時代ですし、電子化するのは便利だから、いいと思いますよ。でも、僕は世の中がいっているほど電子書籍が広がるとは思っていないんです。確かに、Kindleが出たことで状況がいくらか変わるとは思います。でも、西洋人と日本人では、そもそも神様からして違うので、同じ感覚だと考えるのはナンセンス。天照大神とゼウスとは、男と女でも違うくらいに全く違うじゃないですか。それだけ価値観が違うんですよ。実際にCDなどの紙ジャケットでも日本人は正確に作るでしょう。アメリカ人はプラケースでいい。本に対する接し方も全く違う。日本人は本に「本」ってネーミングをしているんですよ。これはすごいことだと思います。本来「本」の持つ意味は、本質、宇宙という意味。辞書で「本」を引いてみれば分かります。日本人は、紙に印刷して束ねたものに、「本質、宇宙」を意味する「本」ってネーミングしたんですよ。そんな民族がね、簡単に電子媒体に変わるっていうのは、ちょっと考えられないですよね。電子書籍は確かに便利ですけどね。

――では、どちらかがなくなるのではなく、両立していくでしょうか?


岡本吏郎氏: あとは出版社の都合ですよね。在庫を持たなくてよくなりますから。でも、読者がそれを求めているわけではないと思いますよ。だから、出版社の都合の通りにいかないわけでしょう。読者が全然踊ってくれないわけですよ。思いのほか「本」っていうネーミングの呪縛は大きいと思います。書籍の電子化は、ある程度は進むと思います、時代ですからね。でも、本質的なところで紙媒体がなくなるなんてナンセンスです。むしろ紙の方が価値が高くなっていくでしょうね。

ビジネスの基礎をもう一度


――今後取り組みたいテーマ、書きたいテーマはありますか?


岡本吏郎氏: 「何かを伝えたい」ということはないんです。ただ、僕の処女作『会社にお金が残らない本当の理由』が賞味期限切れしてますので、もうあれじゃ駄目だよっていう本は書かなければいけないと思っています。あと、僕は初心者用のことは全く言わないので、基礎知識の差が出てしまって、新しくビジネスを始められたり、ある程度色々なものを学びたいというレベルで開催する勉強会やセミナーにお見えになる方が、戸惑うことが多いんですね。ですから、そこを埋める様な本は書いてみたいなって思っています。そうすると読んだ人が便利だからということより、そこにまた、本質的なものが隠れていそうな気がするんです。自分がそこをあまり見ていないので、たまには見てみると、そこに面白いものがいるんじゃないかなっていうのがあるんです。

――いままでにない切り口、視点の本になりそうですね。




岡本吏郎氏: 宮崎駿の『崖の上のポニョ』という映画があるでしょう。僕、あれは現代の神話だと思っているんです。ああいう中にものすごいヒントがいっぱいあるんですよね。ああいうクリエイターってすごいなと思います。ユング(スイスの精神科医・心理学者)のいう原型の構造をとらえることがね、自然にできるのかなって思うんですよね。僕は、あのアニメの中に、いまの日本の抱える問題を解決するヒントがあると思っていて、あれが原型だなって思うんですよね。ユングはね、「原型に見つけられた」という表現をしていますが、先に集合無意識の中の原型があって、それにわれわれが見つけられて原型的動きをするっていう考え方なんです。そこからいくと、日本人はあの『崖の上のポニョ』っていう原型に見つけられたなって思うんです。そんなことをつれづれで書けたらいいなと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

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この著者のタグ: 『経営』 『ビジネス』 『独立』 『オタク』 『商売』 『原理原則』 『原型』

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