本が人を変えるようにかたづけも人を変える
――ご著書もすでに15冊を超えていらっしゃって、中にはeブックも出されていますが、ご自身は電子書籍をご利用になりますか?
小松易氏: 紙の本はよく読むんですが、まだ電子書籍は、ほとんど利用していないですね。電子書籍になると、絶版がなくなるというメリットがありますよね。それと、かたづけの究極の形は、ドラえもんのポケットのように、欲しいものがいつでも手に入る状態だと思います。だから、いまあの本が読みたいと思った時に、それが電子書籍になっていると、買えばその場で見られるスピード感は大きな魅力ですね。本っていうのは2通りあって、もう読まなくてもそれを持っているだけで、その形や手触りがうれしい、気分がいいっていう本と、本の中身の情報に力づけられる本があると思うんですよね。そういう意味では、本が100パーセント電子書籍になることはないと思っていて、やっぱり紙の本は残ると思います。それでも電子書籍の良さは、この中の情報がスピーディーに早く得られることと、道具としての便利さだと思うんです。あくまでも本は道具で材料だと思うんですよね。
―― 材料というのは、どういった意味ですか?
小松易氏: 知識の宝庫としての本は材料と言って間違いない。でも宝はタンスの肥やしではなく生かさなきゃならない。だからある本に書いてある情報が、自分の次の講演に生かされて、それがまた全然知らない、例えば富山県の仲間たちにしゃべった話をたまたま高校生がそれを聞いて、かたづけってすごいんだということが伝わって、自分もかたづけ士になるという影響を与える。私のアイルランドの経験をいまだに話せることは面白いし、経験することのすごさや実行することで変わるということが、パズルのピースのように生かせることじゃないと意味がない。だから、持っているだけで心癒やされる本も素晴らしいと思いますけれども、やっぱり基本は中身だと思います。情報の流通が速くなって、誰もが手に入れられて、しかも古い本が残り続ける電子書籍は素晴らしいと思いますね。
――小松さんが影響を受けた本というのはありますか?
小松易氏: 私は、大学受験の時、1浪したんですが、受験の前日に、英語の勉強だと思って『英語の発想』っていう講談社新書の名著を読み始めてしまって、もう面白くて止まりませんでした。テストに出ないんですが、初めて英語がわかったという感動がありました。それぐらい面白かった本なんですよね。起業で支えられたのは、トム・ピーターズの『トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦〈1〉ブランド人になれ!』という本です。時間がない時は、妻に読んでもらって付せんを立ててもらうこともよくあります。そこから私も読み出して、そこを起点に全部読んだりそこだけ読んだりと、共同読みしています。
―― 同じ本を奥さまと一緒にお読みになるんですか?
小松易氏: きっかけは、このトム・ピーターズの本なんです。起業したころに買って、明日これ絶対読もうと思って机の上に置いていたら、朝早く起きた妻がそれを持って会社に行こうとしたんです。珍しく怒ってしまって。そうしたら、彼女がすごくショボンとしたので、「じゃあいいよ」って持たせたら、帰ってきた時妻が付せんを付けてくれて、「こことここがあなたの仕事に役立つポイントだから」って渡された瞬間に、本は一人で読まなくてもいいと思ったんですよね。
――かたづけと本との関係はどうですか?
小松易氏: 「断捨離」のやましたひでこさんと一緒に仕事をさせていただいたり、かたづけコンサルタントのこんまり(近藤麻里恵)さんと親しくいただいて、かたづけのネットワークが広がって、かたづけという手法が大事なこととして認知されていくのは、やっぱり本がきっかけです。書店に行くとかたづけの本があることで、かたづけが認知されるので、本の役割は大きいですね。やましたさんも、こんまりさんもそれぞれ女性を中心に幅広く展開されています。私はといえば、最近は学校と会社を中心に展開しています。そうするとかたづけは地域貢献であり、日本を元気にするものになるのではないかと考えています。
――次のかたづけは誰を対象にしますか?
小松易氏: 実はいま、学校の先生向けの本を制作中なんです。先生は生徒に、「かたづけなさい」「掃除をしなさい」と言いながら、自分たちの職員室は、おそらくかたづけいていないですよね。この矛盾はもちろん学校全体の問題でもあるので、いま先生に対して始めた研修を、会社の中でのプロジェクトとして継続的にできればと思います。先生がまずできるようになって、生徒に私が教えているような授業をやってもらっても面白いですね。まず先生自身の身の回りのことから始めて、次に、生徒へのかたづけの授業についても、私が行っている授業の内容も少し盛り込んで書きます。この本を出すことには、とても大きな意味があると思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 小松易 』