佐々木直彦

Profile

1958 年生まれ。一橋大学社会学部卒業。リクルート、産業能率大学研究員を経て起業。20数年にわたりコンサルタントとして活動。プロデュースの方法論を体系化。多くのビジネスプロデューサーを育成。事業創造、営業戦略、組織変革、リーダー教育、人材採用の分野で多数の実績がある。また、食のプロデュースやリゾートワークの推進など、都会と田舎の間に、新しい人モノ金の動きを生みだす活動を展開。デジタルハリウッド大学大学院では「プロデュース能力開発演習」を担当。著書に、『考えるノート』『プロデュース能力』『コンサルティング能力』『キャリアの教科書』など。

Book Information

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情報を聞き出す力があれば、圧倒的な価値を生み出すことができる



佐々木直彦さんは、数々の企業で組織改革や営業戦略の立案、人材採用など幅広い問題解決を手掛けるコンサルタントです。ビジネスにおける「プロデュース」の必要性に着目した独自の社員育成にも注目が集まっています。実は、佐々木さんはもともとジャーナリスト志望で、インタビューで相手の話を聞き出す手法などはコンサルティングにも生かされています。佐々木さんのキャリアをたどり、思考方法、執筆にかける想いなどに迫りました。

低価格競争から抜け出すには「プロデュース」が必要


――早速ですが、お仕事の近況をお伺いできますでしょうか?


佐々木直彦氏: 最近は、社員の方がプロデューサーとなって、新規事業の創出や会社の変革をしたいという会社が非常に多いです。2008年の末に出した『プロデュース能力』という本をきっかけにして、会社のトップの方から呼ばれるようになって、「なんとかウチの会社にプロデューサーを300人作りたいんだが、方法があるか?」というようなことを言われるようになったんですよ。

――そのような依頼が増えているのはどのような背景からだと思われますか?


佐々木直彦氏: これまでのやり方だとシェアが伸びないし、価格競争に陥りやすいということがあります。大企業はもともと、参入障壁をうまく作って、自分たちが有利に効率よく物を作ったり、サービスを提供することで利益を安定的に生み出したりしてきたんですけれど、これが崩れていまして、ビジネスモデルとして収益が上がらなくなってきている。結局、「より安くやります」とか、「夜まで働くのでウチにください」とか、そういう形になっちゃっているんですね。これだと結局利益がなくなっていくし、社員の人たちも疲れます。これをなんとかしなきゃいけないっていうことで、大変な危機感をトップの人たちが持っているわけです。そこをなんとか自分たちで工夫して、新しいものを仕掛ける必要があるのですが、会社がそういう体制になっていない。言われたことをしっかりやるという能力が高い人は多いけれど、ちょっと失敗してもいいからやってみることが、なかなかできない人が多いんですね。

――相談に来られる会社はどのような業種が多いのでしょうか?


佐々木直彦氏: 業種は問わず同じテーマを抱えているんですけれども、特にIT系が多いですね。IT系の企業はやはり競争が激しくなっているんです。

――プロデューサーは、セミナーや社員教育のような形で育成するのですか?


佐々木直彦氏: 育てるという仕事も1つにあるんですけれども、こちらが提案して、一緒に何かを立ち上げて変えていくというようなこともやっています。僕はあんまり目立たないようにはやるんですけれども、多少目立つこともあります。コンサルタントはもともとそういう仕事なので、それはしょうがないんですが。また、デジタルハリウッド大学院というのがありまして、もともとクリエイター系の専門学校から始まったんですけれど、今はクリエイティブとITとビジネスを融合するビジネススクールです。そこで「プロデュース能力開発演習」というのを3年間やっています。

――講義の対象者はいわゆるビジネスマンの方ですか?


佐々木直彦氏: もともとビジネスマン中心なんですが、最近の傾向では3分の1以上が留学生です。留学生は、地元で大学を出てから来る方と、ある程度働いてから来る人もいます。日本の大学を出てすぐ来る人も前より増えていますね。

――教育とコンサルティングには似ているところがあるのではないでしょうか?


佐々木直彦氏: 基本的にコンサルタントが会社に新しい価値をもたらすとか、何かを変える時は、社内の人を通してやるんですよね。完全なアウトソーシングでやるということは少なくて、ほとんど企業の人と一緒にやります。ですから、まずその人に力をつけてもらうというのが基本です。人をプロデュースしているようなものですね。コンサルタントとしてうれしいのは、中心となった担当の人が会社で過去最高の評価をしてもらったとか、同期で最初に昇格したということが、わりと起きやすいんです。教育という意味では学校と企業は似ています。

現代の若者は、「恥をかく機会」を失っている


――教育の現場でご覧になって、最近の若いビジネスマンについて感じることはありますか?


佐々木直彦氏: 僕は「KOF」という言い方をしていたんですけれど、これはね、慶応大学藤沢キャンパスの略ではなくて(笑)、「キレる・落ち込む・ふさぎ込む」の略なんですね。2002年ぐらいから急にそういう人が増えたんです。新卒で会社に入って、ちょっとしたコミュニケーションのトラブルがきっかけで会社に来られなくなっちゃうんです。あるいは来ても全く話さなくなってしまう。入社3年までに辞める人っていうのが問題になっていますが、最近ちょっと減って30%ぐらいになってきたのかな。でも一時期36%を超えました。3人に1人以上、大卒の場合で3年以内に辞めてしまうんです。それはやはり、コミュニケーション的に対応できないまま、22歳を迎えている人が多いからだと思います。

――そのような社員には佐々木さんはどのような教育を施されますか?


佐々木直彦氏: あるメーカーからそういう面でなんとかしたいと言われてやったことがありますが、3年間で辞める人がゼロになったんです。18%ぐらいあったものが、一時ゼロになった。僕はまず、「恥をかいても大丈夫」という思考を頭に持ってもらったんです。具体的には、入社半年前に通信教育をしたり、前もって『キャリアの教科書』を読んでもらったりした後に、社員で集まって合宿をやるんですね。合宿では例えば「理想の営業マンってどのような人か」などのテーマを与えて皆で考えるんですが、その時に「僕は昔、こんな恥ずかしい体験をしました」とか、「これじゃイヤだから、立派になりたい、いい男になりたいと思って頑張ってここまで来たんです」みたいな話をすると、そのグループは話が盛り上がって、いい答えが出るんですよ。自分のマイナスの話をすると、みんな盛り上がって、もっと話してくれる。われわれの世代はそれをやってもダメだったけれど、今の人たちはそれをやると、まるで新興宗教みたいな盛り上がりになっちゃうんですよ。恥をかく体験で感動しちゃっているんですよね。

――世代間でそのようなギャップが出てしまうのはなぜなのでしょうか?


佐々木直彦氏: 今の若い世代は、フレンドリーにちょっと仲良くなるのは非常にうまいんです。ところがお互いに突っ込み合わないというか。「お前、さっき言ったことと違うじゃないか」みたいに、突っ込んでいかない。恥をかかないようにやっているんです。今の若い人たちって、怒られた体験があんまりない。母と子どもが密着していることもありますし、携帯電話のコミュニケーションが非常に盛んになった世代と一致していることも関係していると思います。僕は50歳過ぎですけど、昔だったら渋谷のハチ公前で7時に待ち合わせて、いつも30分遅れてくるやつなんてダメだったんですよね。でも今は、「ゴメン、今どこ」ってメールを送って返事があったら、「ああそうわかった」。「ゴメン、今ちょっとおなかが痛くなっちゃって」とメールが来れば「大丈夫?無理しないで」って返事を出すわけです。メールでけんかすると炎上しちゃうから。

でも会社に入るとそうはいかない。営業になればお客さんにいきなりガツンと言われる。僕が担当していたメーカーは建築と縁が深かったので、現場は荒っぽいんですよね。「お前、なにしに来たんや!」みたいな感じなんです。若い人は、みんなやる気はすごくあるんです。でもガツンと言われると思考が止まってしまう。その中で唯一、普通にバランスを取っていたのが、飲食のバイトの経験がある人たちでした。やっぱり飲食のバイトはお客さんにすぐ怒られるし、店長にも怒られるので。なにが喜ばれるとかの反応もすぐにわかるし、飲食は大事な日本の教育産業だと思っています。

著書一覧『 佐々木直彦

この著者のタグ: 『ジャーナリスト』 『コンサルタント』 『コミュニケーション』 『コンサルティング』 『教育』 『世代』 『キャリア』 『営業』 『独立』 『情報』 『プロデューサー』 『プロデュース』 『恥』 『飲食』 『思い込み』 『マスコミ』

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