テクノロジーは生活をデザインする。
楽しくなければ何かが間違っている
山元賢治さんは、外資系のIT企業に30年間身を置き、Apple Japan社長も務めました。現在は有意の若者を、世界で戦えるビジネスマンに育て上げる「山元塾」を主宰。企業顧問や講演で世界中を飛び回っています。山元さんに、教育に賭ける想いや、英語論、仕事論等をお聞きしました。また電子書籍については、Appleで当事者として目の当たりにした、デジタル音楽コンテンツの発展という先例を引き合いに、テクノロジーは何のためにあるのかという根源的な視点から論を展開していただきました。
次代日本のリーダー育成のため、今できること
――変革期にある日本の、次代のリーダー育成のための活動の一つである「山元塾」ついて伺います。
山元賢治氏: はじめは「就職したけど悩んでいる」といった悩みを持つ東大生・東大卒業生10人にカウンセリングをすることからスタートしました。4回目以降は、外部講師を招きディスカッション形式となりました。毎月開催で、足かけ4年目に突入しており、ゲストによる講演会と懇親会の組み合わせになっています。僕の講演をどこかで聞いた人や、さらにそれを伝え聞いた方々が中心となって集まってくれています。
――全国で講演されていますよね。
山元賢治氏: この一年間に8000名ほどにお話しをしました。他にも、顧問企業もいっそう増えたりと忙しくなる一方ですが、「それだけだとまだ足りない、直接指導してほしい」というお声も寄せられました。
そこで、CL山元塾(=Compassionate Leadership)と称して、毎隔週土曜日に3時間、全6回に渡って私が直接講師を務め、想いやりのあるリーダーシップを教えるようになりました。2月現在、1期生、女性限定コースはすでに終了し、1月からの2期生・3期生の塾生と一緒に勉強しています。4月からの4期生・5期生の募集も始まったところです。6期生に関しては、土曜日に参加できない方の為に月曜日の夜に開講予定です。さらに同月、特に大学生を対象に若者のリーダーシップを伝授するYL山元塾(=Young Leadership)コースも始まるなど、こちらの取り組みもどんどん進んでいます。塾生にはビジネス・リーダーシップを身につけてもらい、インターンシップなどを通じて様々な企業に進んでもらいたいと思っています。
――新しい熱のこもった取り組みですね。そこではどんな活動がなされるのでしょうか。
山元賢治氏: CL山元塾では、個人、ベンチャー企業の社員、学生、大企業社員を対象に研修をしています。またYL山元塾では就職活動、起業前にリーダーシップ・経営・ビジネスコミュニケーション・ビジネスマナーを身につける選抜研修という形で行われます。どちらも
広い世界に通用する、戦えるスキルとして3つの柱を伝授しています。
――「3つの柱」とは。
山元賢治氏: 「Compassionate Leadership: 心、想いやり、価値観」、「Business Communication: 話し方、聞き方、状況判断、語彙選びなど」、「Personal Branding: 身だしなみ、髪型、服装など」です。
この3つの柱を軸にリーダーシップとは何かを、塾長である私が直接問い、ヒントを与え、それを受けて塾生自らが考え行動する内容になっています。皆、熱気に満ち溢れています。スピード、地頭、素直さ、柔軟性、経験、これから伸びていく人には、どれもみな大事な要素だと思いますが、そういったものを兼ね備えている若者がどんどん集まって、切磋琢磨してくれているのは、塾長としてとても嬉しいです。
――行動と、結果。そのプロセスの間にスピード感を感じます。
山元賢治氏: 「自分が今何をやれるのか」と考えた時、もたもたしている時間はないのです。それを評して、フランクリン・コヴィー社の副社長の佐藤さんは私を「ビジネスアスリート」という風に紹介して下さいました。(笑)
本物の英語、話せる英語で未来の人材を作り出す
――30年以上の外資系企業の経験もふまえ、英語教育についてもお伺いしたいと思います。
山元賢治氏: 今苦しんでいる日本の若者、世界で戦う若い人に、THINK into the Future (未来に思いを馳せて)、Create Your Future (あなたの未来を、あなたの手で) と伝えています。もう1つ取組んでいるのはDesign Your English。日本人が弱い英語対策ということで、大人に対する英語教育も始めました。
そこから派生し12月から、TODYE (= Test of Design Your English)という名称で、英語テストを開始しました。1000点満点のテストで、TOEIC990点越えの人でやっと700点ぐらい取れる、なかなか難易度の高いものです。この英語テストでは、スピーキング、リスニング、ビジネス・シチュエーションにあった英作文能力が問われます。
英語については、昨年8月に『世界でたたかう英語 前アップル・ジャパン社長の ポンコツ英語反省記』を出しました。
――インパクトの強いタイトルですね。
山元賢治氏: 「ポンコツ」というのは私が自らつけました。30年以上の外資の経験があっても、理想の到達点からすると、まだまだポンコツです。ビジネス・シーンを50、100と集めて、「もっとうまく伝えられたはずだ!」という苦い体験を書きました。自らのキャリアをさらけ出すような恥ずかしい本です(笑)。
――この本の狙い、主軸はどういったところでしょうか。
山元賢治氏: 日本人というのは何でも言い訳したがるので、英語においても、「これからはアジアだから、発音はいい加減でよい、勉強しないでよい。」という本が売れる傾向にあります。しかし、本物の英語でないと世界のトップでは通じない。私は、英語がまあまあでいいと思ったことは一度もありません。電話やメール、また実際に外国人と会食をするときに「ジョークが一発出ないかなあ」と思うことしきりで、これで30年間苦しみました。
ですから、私が海外で実際に遭遇した場面を紹介しながら、手を抜く方法ではなく、「最高の英語を目指す」という事に主軸を置いて書いています。
――英語そのものだけでなく、エピソードから文化背景をも理解していくのですね。近刊はどんな内容でしょうか。
山元賢治氏: 若者へのメッセージを込めた本については近日ダイヤモンド社より出版予定です。これには、私が開発したHigh-Touch Leadershipについても記述しています。会社や個人のリーダーシップレベルを108の視点から分析するMethodologyです。6つのElementsから構成されています。Business Model, Organization, Communication, To-Be Model, Business Style, Capabilityの6つの視点から分析していき、改善・改革目標を設定していけます。
――山元塾の活動や、著作活動の根底にある、山元さんのお考えはどんなものでしょうか。
山元賢治氏: 「時間と重力には絶対に抗えない」という事です。逆に言うと、それ以外はどうにでもなる、と言えます。であるならば挑戦しようということです。「一回の人生をどうしたいのか」という質問を自分に投げかけてみて下さい。決して、他人のせいにしてはいけません。質問の回答は自分自身で出す事が出来ます。そのためには常に、「自分がどうありたいか、考え抜く」これが大事であり、私がもっとも大切にしてきた行動指針ですね。
著書一覧『 山元賢治 』