手元に本は残さない、90パーセントは古本屋に売る
――それだけたくさんの本を購入されると、ご自宅には書斎がありますか?
楠木建氏: 書斎はありません。本はベッドの上で読みます。書き物は食堂のテーブルを流用しています。収納する場所が限られているので、90パーセント本はすぐに売ります。だから殆ど手元には残さないですね。ちょくちょく見たい本はもちろん残しておきますけれど、9割ぐらいはそのまま処分してしまいますね。それでも壁面全部本棚ですね。居間や寝室の壁を全部本棚にして、そこに入れています。うちの妻がまた本をたくさん読むので、そちらの本がどんどんたまっていって、うちにある本はもう8割がた奥さんの本です。僕のはちょっとだけ置いてある(笑)。
電子か本かはインターフェースの問題、慣れたら何かのタイミングで切り替わる
――電子書籍の話もさせていただこうと思います。読書好きの楠木先生が考える電子書籍のメリットはどういったところでしょうか?
楠木建氏: 僕は経験がないのですが、電子書籍っていうインターフェースに慣れたら、僕の本はどんどん処分しちゃうっていうやり方からして、電子書籍の方が向いているんでしょうね。紙に対する思い入れは全くないです。ただ電子書籍を使ったことがないんです。何で使わないのかというと紙に十分満足しているんで。
――どうしたら電子書籍を使うようになると思いますか?
楠木建氏: 習慣の問題だと思いますね。合理的にどちらが便利だと比較して決めるものじゃなくて、習慣としてそうなっていくと思うんです。もしかしたらいつかのタイミングで僕も切り替わるかもしれません。ただ、僕は新刊書より、中古の比較的古い本をテーマごとで読んだりします。そういうものは電子書籍になっていないんですよ。基本的には絶版になっていたりするので、Amazonで中古を買うんです。Amazonは、そういう時に非常に便利ですね。だからあんまり電子書籍を買うことを考えたことがないんですね。
言われてみれば当たり前なのに見過ごされがちなビジネスの論理を伝えていきたい
―― 最後に今後、楠木さんが伝えたいことや、やってみたい取り組みをお伺いできればと思います。
楠木建氏: 自分で書く本のテーマですと、当たり前なのに、言われてみるまでなかなか分からない、そういった現実の商売に役立つような論理を考えたいなと思っています。あとは、「戦略読書日記」という連載をウェブでしていまして、今年の前半ぐらいには、それが本になって、プレジデント社から出ますね。それは、書評の形式を取っているんですが、それは形式だけで、中身はある本に触発されて僕が言いたいことを言うっていう、そういう本です。ただの書評ではなくて、それをきっかけに僕が大切だと思っていることを主張するという割とウザい本なんですけどね(笑)。タイミングとしてはこの本よりも早い発売になると思いますが、経営のセンスと論理についての本を新潮新書から出します。お読みいただければ幸いです。
(聞き手:沖中幸太郎)
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