渡辺パコ

Profile

1960年東京生まれ。都立西高卒(31期)。学習院大学哲学科卒。コピーライターとして広告、企画立案などを担当、88年に独立。98年からグロービス・マネジメント・スクール講師。コミュニケーション、リーダーシップ、論理思考などを担当。企業研修講師として多くの企業に講座を提供している。2008年からビジネスパースンのための教養と戦略を学ぶ講座<おとなの社会科>を開始。「リベラル・アーツ」の分野を広めている。環境問題、歴史、政治、科学など、多方面にわたる言論活動・著作を展開中。

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危機は、きれいな顔をしてやってくる


――今後の展望、抱負を伺えますか?


渡辺パコ氏: 革命をやろうと思ってます。僕は、日本は今、とても危ない状況にあると思っています。危ない状況が進んだとしても、国という観点ではいいかもしれない。でも、そこにいるわれわれにとっては、多分全然よろしくない。「国破れて山河あり」の反対、「人破れて国あり」っていう事態が進行していると思ってます。ほとんどの人はそれに気付いていないので、何とかしたいなっていう。「おとなの社会科」を始めたのも、そういう感覚があったからなんです。3年やってきて、学んでいる人以上に僕の方が勉強してきて、これは何とかしないとまずいなと。選挙をはじめ、色んなものが相当メチャクチャになっている。これは比喩ではなく、資本による一般の人たちの奴隷化が始まっています。

――資本による奴隷化ですか。


渡辺パコ氏: ビジネス、産業の1番のコントロール主は資本家で、企業は資本家のものだという考え。資本の意志が企業に反映され、企業の意志が社会に反映されていく。これは昔からあったんですが、そこに国が挟まっていたわけですよ。政府があって、国の中のことはそこの政府が決める。法律、いわゆる規制を国ごとにやっていたので、



例えば労働賃金は最低賃金を守ってくださいっていうルールがあります。よってわれわれは働く限り一定の収入が得られます。この最低賃金法っていうのを撤廃しろっていう圧力が出たら働き手はどうなるか、時給100円、50円で働かせてもいいっていうことになる。これが実際にアメリカで起きている。アメリカでは刑務所で奴隷労働が行われています。刑務所の民営化が行われているんです。懲役労働という名で時給1ドル、時給50セントで働かせています。やっている仕事はコールセンターの電話受けだったり。普通に外で仕事を同じことをやれば時給1000円くらいもらってもいい仕事を1ドル以下でやっているわけです。これを奴隷と言わずして何と言うか。囚人のうち、使えそうな人はそういうところで使う。そうじゃない人は組立工として使う。そうすると、刑務所の中で組み立てれば中国で組み立てるより安いわけですよ。クオリティーはどちらが高いか分からないですが、絶対逃げない労働者です。暴動も起こせない。そういう奴隷労働が実は行われていて、最低賃金の撤廃であるとか色んなかたちで方法論が思考されている。

――どんな方法論ですか?


渡辺パコ氏: 今問題になっているTPPです。TPPとは何かというと、ある国の規制が高いと考え、一方の国の規制が低いと考えたら、低い国に合わせなさいという裁判を企業が起こせるルールです。例えば、アメリカでは刑務所の民営化をしてます、日本はしていません、「民営化していない」というのが規制であると言って、アメリカの企業が日本政府を訴えられる。訴えられたら大抵負けます。すると民営化しなきゃならないことになる。アメリカがさらに「最低賃金を撤廃させる」という法律ができれば、日本にも同じ法律を通すことができる。どこか1カ所突破すれば、国の生活を守ってきた法律は全部撤廃させることができることになる。

今、世界的に資本による政治の買収が行われています。議会から大統領まで全部買収してしまう。すると合法的に法律を変えることができる。そういう事態が今色んなところで進行しているんです。危ないですね。文化や伝統を踏まえてその国のかたちがあるわけです。例えば日本では、健康保険は収入がなくても欲しい、あげたいという国のかたちをしていますが、簡単に壊されますよ。

――何か対抗する手だてはあるんでしょうか?


渡辺パコ氏: われわれが知恵を持つしかないですね。そういうことを分かって、何に対して抵抗しなければいけないのかを正確にやらないと。非常に巧妙に、われわれが持っている価値観に乗っかるかたちで侵入してくる。例えば選択の自由を提供します。NOと言う人はほとんどいないでしょう。そこに乗っかってくる。

――いい顔してやってくるわけですね。


渡辺パコ氏: きれいな顔をしてやってきます。怖い顔をしては絶対に来ない。でも、そうやって門を開けるとだんだん仮面がはがれてくる。やってる本人たちも、そういうことをしてるっていう意識がないんですよね。彼らなりの美しいロジックがあるから、いいことだと信じてしまう。そうこうしているうちに、あれ??と思っているうちに奴隷化が成されていく。これを何とかしなきゃいけないなっていう。僕がやってもどうにもならないことは分かってるんですけど・・・。

――では、パコさんの本はそういう観点で今書かれていらっしゃるんですか?


渡辺パコ氏: 今年は、それを書かないといけないと思ってるので、これから出版の企画をしようと思ってるところです。「おとなの社会科」は、始めたタイミングから本にしようとは思ってたんですが、一体これを自分は何のためにやってるんだろうっていうのがなかなか見えてこなかったんですが、それがクリアになってきたので、ここで書かなきゃいけないかなって思っています。ただ、もう少し色んな見え方をする様にしないと、書いても売れないだろうなと思うので、そこが考えどころです。あがいているだけですけど、やらざるを得ないという気持ちなので、やります。

取材場所:デジタルハリウッド大学

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 渡辺パコ

この著者のタグ: 『考え方』 『働き方』 『コピーライター』 『古本屋』 『きっかけ』 『結婚』 『資本』 『TPP』

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