「暮らし」と真剣に向き合い、挑戦し続ける
近藤典子さんは、「アメニティアドバイザー」として、2000軒を超える住宅を訪問し、家の中を住む人のニーズに合わせた「暮らし」のアイデアを提案。企業のアドバイザー、テレビや新聞、講演、「暮らしアカデミー」の校長など幅広く活躍しています。近藤さんに、常に第一人者として新しい分野に挑戦し続けてきたキャリアについて、また住宅のスペースの問題とも密接に関連する電子書籍についてのお考えを伺いました。
住む側と建てる側をつなぐ「水先案内人」
――早速ですが、近況を含め、お仕事についてお伺いできますか?
近藤典子氏: 月日の経つのは本当に早いものですね。気づけば片付けの仕事を始めてからいろいろありましたが、あっという間に25年が経ちました。言い換えれば四半世紀。たくさんの家の「片付かない」「もっと快適に暮らしたい」という悩みを解決してきました。今でこそ「片付け・収納」という言葉が市民権を得て、どなたにでもひとつの職業として認識されていますが、私が始めた頃は「片付け、収納の仕事って?それが仕事なの?」とそんな視線をいつも感じていましたね。でも少しずつ共感してくださる方が増え、20年ぐらい前からは、その生活者の暮らし目線でものを見る姿勢を買われて企業との商品開発、例えば、帝人ではお掃除道具を一緒に作り、サンウェーブとINAXではトータル12年間にわたってキッチンや洗面所周りの商品開発をしてきました。本当に生活者目線で言いたいことをいっぱい言い、開発の人達と力を合わせた12年間でした。
その頑張ったご褒美なんでしょうか、今現在も私が関わった商品は全て現役で売れ続けていると聞き嬉しく思っています。片付けから商品開発へと進み、そのうち「片付けやすい家、住みやすい家があれば」と思い始めた頃、ちょうど住宅メーカーや建設会社からコラボレーションの依頼があり、間取り提案や家のシステムづくりに関わるようになりました。住宅関連の仕事は、今現在もどっぷり浸かっています。“楽しいですよ~”。
――住宅だけではなく様々な商業施設の空間プロデュースもされているそうですね。
近藤典子氏: そうなんです。「間取りの工夫ができるなら」と店舗設計のお手伝いもさせていただいていますが、特に燃えたのは、JR品川駅のキオスクの「リボーンプロジェクト」に参加した時ですね。お客様目線はもちろん、あの狭い所で働く人のために、動線やストックを含め、商品の配置など、キオスクの狭さを私の得意分野でリボーン(再生)させる一年がかりの仕事でしたが、本当に充実していました。品川駅に行かれた際はぜひ立寄って見てください!今後は可能であればホテルや病院等の癒し空間にチャレンジできたらなあ、なんて思っています。
――最近は教育の分野にも力を入れられているとか。
近藤典子氏: 今、小学校の5、6年生の家庭科の教科書で正しく効率のいい片付けと掃除の方法を指導させてもらっています。そして2013年度からは高校の家庭科の教科書で私のアメニティアドバイザーという職業が紹介されることになりました。このお話をいただいた時は大変光栄に思いましたが、反面、この肩書きで仕事をしているのは今現在私ひとり…と、内心焦りました。というのも、この肩書きは26年前にあることがきっかけで出版社の方が取り急ぎつけてくれた名前なんです。ありがたいという気持ちでそのまま使い続けてきましたが、私の性格が「癒し系」というより「威圧系」だったからでしょうか。肩書きよりも私のキャラクターが前に出て誰も覚えていないのが現状でした。
でも、もともと「ピンチはチャンス」と考える近藤典子です。この機会に感謝し、アメニティアドバイザーの協会を立ち上げて資格制度にし、職業として確立できるように頑張ろう!と思ってしまった次第です(笑)。ありがたいことに、教科書会社で私の学校のテキストを出版してくださることになり、本当に心強い限りです。これから高校の家庭科の教科書をきっかけにアメニティアドバイザーになりたいと思ってくれる学生さんが出てきてくれたら嬉しいなと思っています。というのも、私もだいぶ歳を重ねてきたので、自分が先頭になって現場に立ち続けるには限界がありますし、それよりも若い人達がたくさん活躍できる土台を築いておく!これが私のこれからの役目かな、と最近強く感じています。